台本概要

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タイトル ドラゴンハート
作者名 あかおう  (@akaouwaikasuki)
ジャンル ファンタジー
演者人数 3人用台本(不問3)
時間 20 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 |°ω°ᔨ絵本を読む風:三匹の竜のお話。

【声劇・配信での使用/連絡不要】
★配信での投げ銭が発生する場合でも連絡不要です。
★あなたの気が向いたら・・・(励みになるのでいずれかしてくれたら嬉しいな♪しなくてもOK)
→シナリオタイトル横の「つぶやく」を押してご自身のTwitterでツイートする。
→赤王(@akaouwaikasuki)メンションでご自身のTwitterでツイートする。
→赤王のツイッターの該当するシナリオのツイートにいいねする。
→赤王のツイッターの該当するシナリオのツイートをRT。
→その他思いやりある行動で大切にしてくださったら嬉しいです。

【禁止事項】
★ライターの呼び捨て表記。
★盗作・自分が書きましたと言う行為。
★無断で一部分を切り取っての使用や投稿。
★上記以外で赤王が非常識と判断した行動・表記。
以上をされた方は即ブロックさせて頂き、以降赤王のシナリオ使用を禁止とさせて頂きます。
★設定上の男役は女性が演じて楽しんで頂いてもかまいません。
★設定上の女役はオネェ等にしなければ男性が演じても構いません。
★アドリブは物語のジャンルを超える程曲げなければいくらでも可。

【YouTube・舞台・朗読等入場料を取る場合】
連絡必須:許可が下りるまで使用しないでください。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
赤のドラゴン 不問 76 心が幼く、高ぶると炎が止まらなくなる、何の守り神か不明。
緑のドラゴン 不問 51 明るく、皆のまとめ役、森の守り神
青のドラゴン 不問 56 冷静、我関せずという性格、空の守り神
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:【登場人物】 0:■赤のドラゴン(心が幼く、高ぶると炎が止まらなくなる、何の守り神か不明。) 0:■緑のドラゴン(明るく、皆のまとめ役、森の守り神) 0:■青のドラゴン(冷静、我関せずという性格、空の守り神) 0:(語りべ)と記載してある所は語るようにお読みください。 0: 0: 青のドラゴン:(語りべ)昔々あるところに、仲良しのドラゴンが三匹いました。 青のドラゴン:一匹は赤いドラゴン。三匹の中で一番体が大きいのに、一番心が幼く臆病者です。 青のドラゴン:もう一匹は緑のドラゴン。明るくて皆のまとめ役。森の妖精や精霊をとても大切にしています。 青のドラゴン:最後は青のドラゴンです。とても冷静ですが、一人で行動するのが好きな、空の守り神です。 青のドラゴン:おやおや、今日も赤のドラゴンが子供のように泣いています。 赤のドラゴン:ぐすん、ぐすん・・・ 緑のドラゴン:どうしたんだい、赤のドラゴン。どこか痛いのかい? 赤のドラゴン:違うの。また青のドラゴンが、僕の事、「体だけ大きいな」って言ったの! 緑のドラゴン:そうかそうか、君は体が大きい事を気にしているもんなぁ。 赤のドラゴン:だって、だって、僕は君たち二匹と大きさが違う。同じがイイのに、生まれて育ったら、こんなに大きくなっちゃったんだ。 緑のドラゴン:別に気にしなくていいじゃないか。僕たちは君が大きい事を気にしていないよ? 赤のドラゴン:嫌だ、嫌だ、皆と同じが良かった。だってそしたら、青のドラゴンに「体だけ大きいな」なんて言われなかった! 緑のドラゴン:青のドラゴンは確かにいつも冷たいけど、きっとそんな意味で言ったんじゃないよ?気にすることないよ! 赤のドラゴン:(段々興奮してくる)きっと嫌われたんだ!僕は、僕は青のドラゴンが大好きなのに、僕が大きいから嫌いなんだ!! 緑のドラゴン:ちょっとちょっと、そんなに興奮しないで!君は興奮すると・・・ 赤のドラゴン:うわぁぁぁん!!うわぁぁぁん!! 緑のドラゴン:ほぉら・・・火を吹いた・・・ 赤のドラゴン:ごめんなさい、ごめんなさい。自分では止められないの。悲しい事があると、火が出ちゃうの。 赤のドラゴン:大人になってからずっとこうなんだ。一人でずっと、火が出ないように何度練習しても、森の魔女にお薬を貰っても、ちっとも収まらない。 赤のドラゴン:みんなが大好きなのに、危ない火なんか、吹きたくないのに・・・う・・う・・・ 赤のドラゴン:うわぁぁぁん!!うわぁぁぁん!! 青のドラゴン:(空から)おお。また今日も派手に吹いてんなぁ。ったく鬱陶しい。 緑のドラゴン:(空に向かって)青のドラゴン!今回は君の言葉足らずが原因だよ!!ちゃんと説明するんだ! 青のドラゴン:チッ・・・面倒くせぇなぁ・・・今そっちに降りるよ! 緑のドラゴン:さ、青のドラゴン、ちゃんと赤のドラゴンに説明するんだ。 青のドラゴン:別に俺は、見たままを言っただけだぜ?「体だけ大きい」って思ったからそう言っただけだ。 赤のドラゴン:ううっ・・・ 緑のドラゴン:ああ!ダメだよ赤のドラゴン。泣いちゃダメだ。ちゃんと落ち着いて聞いて?ね? 赤のドラゴン:うん・・・。 青のドラゴン:なんだ、お前自分が体が大きい事、もしかして悪い意味で取ったのか? 赤のドラゴン:体だけ大きいって事は、みんなと違うから、ダメって事でしょ? 青のドラゴン:別にダメとは言ってねぇが・・・ 赤のドラゴン:確かに・・・言ってないけど・・・ 青のドラゴン:お前は俺らの種類で言うと、”心”は卵から生まれた子供みたいだけど、”体”は大人みたいにデケェなって思っただけだ。 緑のドラゴン:僕や青のドラゴンは、赤のドラゴンで言う所の、子供と大人の間位の大きさだからね。きっと種類が違うからだろうけど。 青のドラゴン:デケェ事の何が悪いんだよ。デケェって、皆よりデケェってだけだろうが。 赤のドラゴン:嫌いじゃない?僕の事嫌いじゃない?一緒に遊ぶのイヤじゃない? 青のドラゴン:ああもう。嫌だったら毎日毎日一緒に遊んでねぇよ! 赤のドラゴン:うん・・・ 青のドラゴン:お前はすーぐ考えすぎるきらいがある。 赤のドラゴン:きらい・・・嫌いなの? 緑のドラゴン:違う違う!考えすぎっていう事だよ。 赤のドラゴン:そっか・・・ 緑のドラゴン:ふう・・・ 青のドラゴン:あーー・・・面倒くせぇ。俺ぁもう一度空に行ってくる。よいしょっと!(飛び立つ) 赤のドラゴン:ああ!青のドラゴン!!ごめんね!ごめんね!ありがとう!今日もちゃんと言ってくれて! 青のドラゴン:うるせえよ!! 赤のドラゴン:僕、僕ね!青のドラゴンの事、大好きだよ! 青のドラゴン:知ってるーー!!(遠ざかっていく声) 緑のドラゴン:あははははは 赤のドラゴン:なんで笑うのさぁ・・・ 緑のドラゴン:いや、毎日毎日、よく飽きもせず君たちは・・・あははは 赤のドラゴン:笑いすぎだよぉ・・・ 緑のドラゴン:赤のドラゴン、よくわかっただろ? 赤のドラゴン:うん。緑のドラゴンもごめんね、いつもいつも・・・ 緑のドラゴン:気にしてないよ。さ、僕も森を見回りにいかなきゃ。 赤のドラゴン:そっか。 緑のドラゴン:君は今日は何をするの? 赤のドラゴン:何もしないよぉ・・・だって僕は、何を守るのかまだわからないんだもの。 緑のドラゴン:そっか。じゃ、また明日! 赤のドラゴン:あ、行っちゃうの・・・? 緑のドラゴン:じゃあねー! 赤のドラゴン:(しょんぼり)はぁ・・・また独りぼっちになっちゃったぁ・・・ 赤のドラゴン:僕は一体、何を守る為に生まれたんだろう。僕らの世界では、ドラゴンは守り神なのに、 赤のドラゴン:僕は何も守るものがない。僕も緑のドラゴンや青のドラゴンみたいに何かを守りたいなぁ・・・ 0: 0: 0:(間) 0: 0: 赤のドラゴン:(語りべ)次の日の事です。 赤のドラゴン:その日は朝から沢山の雨が降っていました。 赤のドラゴン:緑のドラゴンが守っている森にも、その雨は降り注ぎ、大変なことになっていました。 0: 0: 青のドラゴン:(空から)・・・おい!緑のドラゴン!! 緑のドラゴン:ああ、青のドラゴン!空から見てくれたんだね、どうだった? 青のドラゴン:東の方角にある滝の水の量がヤバい事になってる。 緑のドラゴン:そうか・・・どうしよう。僕はもう、精霊たちを避難させるだけで手いっぱいだ。 青のドラゴン:このままだと、西の方角の妖精たちが流されちまう。 緑のドラゴン:ああ、どうしよう・・・僕たちじゃ限界だ・・・ 青のドラゴン:しゃーない、赤のドラゴンのデカい体を使うか! 緑のドラゴン:そうだね!彼なら大きいから、一度に沢山避難させられる。どこにいるかわかるかい? 青のドラゴン:あー、多分この時間ならアイツは・・・心当たりがある。呼んでくる! 緑のドラゴン:頼んだよ!・・・凄いな。赤のドラゴンがいつどこで何をしてるか、青のドラゴンはお見通しか・・・ 緑のドラゴン:青のドラゴンが、面倒見がいいっていうのもあるか・・・面白い二匹だなぁ・・ 緑のドラゴン:・・・はぁ・・・。よく、信じられるよな。種類が違うのに。私にはあの二人は到底理解できないな・・・ 緑のドラゴン:おっと、そんな事考えてる場合じゃない。森の皆を安全な場所に避難させなきゃ・・・! 0: 0: 0:(間) 0: 0: 赤のドラゴン:ぐぉ~ぐぉ~~ 青のドラゴン:(遠くから)おーい・・赤のドラゴン! 赤のドラゴン:ぐぉ~ぐぉ~~~ 青のドラゴン:(近くに来た)おい!このデカブツ!!! 赤のドラゴン:(起きる)僕だって好きでデカいわけじゃないぃー!! 青のドラゴン:起きたか。 赤のドラゴン:ふぇ・・?青のドラゴン・・・どしたのこんな時間に。 青のドラゴン:緑のドラゴンが守護してる森が、この雨でどこも崩れそうになってる。精霊や妖精達を安全な場所に運びたい。協力してくれるな? 赤のドラゴン:うん!僕なら一度にたくさんのみんなを運べるものね!もちろんだよ! 青のドラゴン:よし、俺が先導する。ついてこい。まずは西の方角だ。 赤のドラゴン:うん! 0: 0: 0:(間) 0: 0: 緑のドラゴン:あ!来た!赤のドラゴン!!ありがとう来てくれて! 赤のドラゴン:うん、当たり前だよこれくらい。とりあえず僕は、西の方角に向かうね。 緑のドラゴン:本当にありがとう!恩に着るよ! 青のドラゴン:俺は東の滝の様子を見てくる! 緑のドラゴン:さっきより雨が強くなってる!気を付けて! 青のドラゴン:おう! 0: 0: 0:(間) 0: 0: 赤のドラゴン:さぁ、精霊さん、妖精さん、僕の背中に乗って!安全な場所にこのまま行くよ! 緑のドラゴン:赤のドラゴン、西の丘に向かってくれ。あそこなら滝の水があふれたとしても危険はない。 赤のドラゴン:わかったよ・・・と、とと・・・なんだ?地面が揺れてる・・・ 緑のドラゴン:地鳴り・・・なんだ?聞いたことが無い音だ。 赤のドラゴン:いやだ、怖い・・・!!なんだこれ!! 緑のドラゴン:赤のドラゴン、落ち着くんだ。 赤のドラゴン:ドンドン音が大きくなってる・・・山が・・・動いてる・・・山・・・青のドラゴンが居る方角だ! 緑のドラゴン:赤のドラゴン!!頼む、とにかく今は精霊と妖精を移動させる事に集中してくれ。 赤のドラゴン:あ・・・いやだ・・・こ・・・怖い・・こ・・わ・・・い・・・よ・・・ 緑のドラゴン:ああもう、こんな時に!!(強めに)赤のドラゴン!! 赤のドラゴン:ひゃうっ!! 緑のドラゴン:(冷たく)これは友人としてじゃない。森の守護神として頼んでる。頼むから私に協力してくれ。 緑のドラゴン:私だけではダメなんだ。この森を守り切れない!! 赤のドラゴン:み・・・緑のドラゴン・・・僕・・・僕は怖いんだ・・・ 緑のドラゴン:(イラっとする)ああ!!!どうして!!どうして僕が守りたい精霊や妖精を助けてくれないんだ!!! 赤のドラゴン:!!!緑の・・・ドラゴン・・・・?どうしたの?いつもはあんなに優しいのに・・・ 赤のドラゴン:だって・・・だって・・・この地鳴りは・・・青のドラゴンが居る東の方角からだよ? 緑のドラゴン:!!あっ・・・すまない、混乱して・・・ 赤のドラゴン:青のドラゴンに・・・何かあったんだ・・・僕、それだけはわかるんだ・・・助けに・・・行かなきゃ・・・ 緑のドラゴン:いやでも!頼む、頼むよ赤のドラゴン、先に・・・先に精霊や妖精たちを運んでくれ!! 赤のドラゴン:やめてよ!!!僕は森の守護神じゃない!! 緑のドラゴン:!!!・・・・すまない・・・そうだ。そうだよな、君は何も守らなくて良いドラゴンなんだ。 緑のドラゴン:そう、そうだよな。あはは、あはは・・・すまない。もう、もういい。 緑のドラゴン:背中に乗ったみんなを降ろしてくれ。 赤のドラゴン:あっ・・・・ごめん・・・その・・・ 緑のドラゴン:僕が運ぶ。 赤のドラゴン:ごめん、ごめんよ緑のドラゴン!違う、違うんだ・・・青のドラゴンに何かあったんだと思って僕・・・動揺して・・・ 緑のドラゴン:君を頼った私がバカだった!! 赤のドラゴン:あ!行かないで!! 緑のドラゴン:・・・さぁ、みんな、ゆっくり降りて。 赤のドラゴン:あ・・・あ、行かないで!みんな!緑のドラゴン!!違うんだ!誤解なんだ!!僕が・・・僕が弱いから・・・ 緑のドラゴン:僕の精霊たちにさわるな!!! 赤のドラゴン:っ・・・!! 緑のドラゴン:・・・・君の弱さには、もう付き合いきれない・・・!! 緑のドラゴン:僕はあいにく、青のドラゴンほど心が広くないんだ・・・・!!! 赤のドラゴン:・・・あ・・・あ・・・・・ 緑のドラゴン:さよなら。(去る) 0: 0: 0:(間) 0: 0: 赤のドラゴン:あ、あ・・・・ああ・・・ああ・・・あああ、あああ、あああああ、あああああ!!!! 赤のドラゴン:うわぁぁぁん!!うわぁぁぁん!! 赤のドラゴン:こんなに体ばかり大きいのに、僕はちっとも強くない。大事なお友達の仲間すら守れない。 赤のドラゴン:ああ。もう、消えてしまいたい。こんな弱い自分は切り取ってしまいたい。 赤のドラゴン:・・・・切り取って・・・?そうか・・・「そう」すればいいのか・・・・ 0: 0: 0: 緑のドラゴン:(語りべ)赤のドラゴンは、大きな体を空へと伸ばして、口を大きく開けました。 緑のドラゴン:すると、赤のドラゴンの中から、真っ赤なもう一匹のドラゴンが生まれてきたのです。 緑のドラゴン:そう。赤のドラゴンは、自分の中にある「弱さ」を口から吐き出して、生み出したのです。何匹も何匹も・・・。 0: 0: 赤のドラゴン:はぁ・・・はぁ・・・・あはは・・・あはは・・・そうか、そうだったのか・・・・僕にはこんな力があったんだね・・・ 赤のドラゴン:やぁ、もう一人の僕たち。君たちは、僕の「弱さ」だ。ああ、すごいや。「弱さ」を吐き出したら、僕の方は力がみなぎってたまらない・・・!! 赤のドラゴン:ふふふ・・・・もう、何も怖くない。あはは・・・あははははは!!!! 0: 0: 青のドラゴン:赤のドラゴン!!!お前・・・何やってるんだ!!! 赤のドラゴン:・・・やぁ、青のドラゴン。何って、緑のドラゴンに「君の弱さには付き合いきれない」って言われたから、僕の中から「弱さ」を吐き出したんだ。 青のドラゴン:「弱さ」を・・・「吐き出す・・・?」 赤のドラゴン:ああ、そうさ。強ければ強いほど、僕は緑のドラゴンにも、青のドラゴンにも好かれて、ずっと友達でいられるって事なんだろう? 青のドラゴン:・・・なにを・・・言ってるんだ・・・お前・・・・ 赤のドラゴン:もうウンザリしていたんだ!僕自身もね!毎日毎日泣いて泣いて泣いて、誰かを傷つけて迷惑をかけて!! 赤のドラゴン:こんな自分いらない、どうして緑のドラゴンも青のドラゴンも、こんな僕と友達でいてくれるのか不思議だったんだ!! 赤のドラゴン:・・・・弱いからでしょ・・・?僕が弱いから、ダメだから、だから緑のドラゴンは離れていったんでしょう・・・・? 赤のドラゴン:だから僕の中の「弱い」を吐き出したんだ!!もうこれで嫌われたりしない!緑のドラゴンも僕の所に戻ってきてくれるはずだ!! 青のドラゴン:(ひっぱたく)ばかやろう!!! 赤のドラゴン:青の・・・ドラゴン・・・?どうして叩くの?僕は・・・「弱さ」を外に出したよ?もう弱くなんてないんだよ?だから・・・好きでいてくれる・・・ 赤のドラゴン:「友達」でいてくれるでしょう・・・?なんで・・・なんでぶつのさ・・・ 青のドラゴン:・・・・お前は・・・何もわかってねぇな・・・ 赤のドラゴン:ひどい・・・ひどいよ・・・ああ、ダメだ。また「弱さ」が生まれてしまう・・・ 青のドラゴン:・・・好きにしろ。そうやってずっと、自分から「弱さ」を吐き出して、何匹も何匹も生めばいい。 赤のドラゴン:ひどい・・・ひどいよ!!! 0: 0: 緑のドラゴン:(語りべ)その時です。赤のドラゴンから生まれた「弱さ」が、あたりかまわず暴れだし、森を破壊しはじめたのです。 0: 0: 青のドラゴン:・・・見ろ。お前の「弱さ」が暴れてる。 赤のドラゴン:・・・そうだね。 青のドラゴン:・・・・一体何匹生んだんだ? 赤のドラゴン:・・・わからないよ・・・もう自分でも・・・・ 青のドラゴン:このままだと、この森は死滅する。 赤のドラゴン:・・・そんな・・・違う・・・ 青のドラゴン:何が違うんだ?お前は後先考えず、自分の事しか考えずに「弱さ」を吐き出しんだ。その結果がこれだ。当然だろう。 青のドラゴン:緑のドラゴンが大切にしている森が・・・ほら、どんどん焼けていく。お前の「弱さ」のせいでな。 赤のドラゴン:・・・・そんなつもりじゃなかったのにな・・・ 青のドラゴン:緑のドラゴンは、確かに弱かったろうよ。自分の事だけで手いっぱいになるやつだろうよ。 青のドラゴン:それでもな、それでも・・・・いや。今はいい。 0: 0: 赤のドラゴン:・・・・わかった。 青のドラゴン:・・・何をする気だ? 赤のドラゴン:・・・・・・僕さ、ドラゴンに生まれてきたのに、何も守って居なくて、一体何のために産まれてきたんだろうって不思議だったんだ。 青のドラゴン:何を言ってる? 赤のドラゴン:・・・僕は、「僕」からみんなを「守る」為に産まれたんだね。 青のドラゴン:・・・は?どうするつもりだ・・・? 赤のドラゴン:・・・これまで僕が生んできた「弱さ」のドラゴンたちを、食べるよ。 青のドラゴン:・・・食べる? 赤のドラゴン:僕の体に取り込んで、僕の炎(ほのお)で焼き尽くす。 青のドラゴン:・・・なっ・・・自分の体の中に、自分の炎を出す・・・のか・・・? 赤のドラゴン:そうだよ。それしか、ないでしょう? 青のドラゴン:お前、それをやったら自分がどうなるか、わかっているのか? 赤のドラゴン:うん。バラバラに砕け散って、死ぬね。ふふ。 青のドラゴン:・・・何笑ってるんだ・・・。俺は知らんぞ、死ぬなら俺の知らない所で死ぬんだな!! 赤のドラゴン:・・・うん。そうだね。じゃあ君ともここでお別れだ。 青のドラゴン:・・・!!お前・・・!! 赤のドラゴン:・・・バイバイ。青のドラゴン。大好きだったよ。 青のドラゴン:あ!おい!! 赤のドラゴン:さよなら・・・ 0: 0: 0:(間) 0: 0: 緑のドラゴン:(語りべ)赤のドラゴンは、今まで自分が吐き出して生んだ自分の「弱さ」を次々に食べていきました。 緑のドラゴン:自分の「弱さ」を、また自らの体の中に戻すのは、およそ想像もつかない程の激痛を伴います。 緑のドラゴン:それでも赤のドラゴンは、飲み込み続けました。 0: 0: 0:(間) 0: 0: 青のドラゴン:おい!おい!!赤のドラゴン!!もう全部飲み込んだだろう!!もうここでやめろ!!自分の体の中に火を吹くのはやめろ!! 赤のドラゴン:青のドラゴン。やっぱり君は優しいね。・・・大好きだ。 青のドラゴン:いいから!!俺の言う事を聞けって言ってんだろうが!! 赤のドラゴン:何言ってるんだよぉ。僕は、僕の「弱さ」からみんなを守るために産まれたんだ。やっとわかったんだ。 赤のドラゴン:僕の中に居た悪魔みたいに怖い怪獣から、みんなを守るために。 赤のドラゴン:ねぇ、友達に「痛い」って「怖い」って。わかって貰おうとしてもさ、わかってもらえないのはさ、仕方のない事だったんだね。 赤のドラゴン:僕はバカだから気が付かなかった。いつまでもいつまでも子供だった。 赤のドラゴン:友達をいたわって、友達を思いやっていかなきゃいけなかったのに。 青のドラゴン:・・・お前・・・ 赤のドラゴン:こんな僕を見捨てずに、ずっと正直に本音で話してくれてありがとう。青のドラゴン、君に出会えて本当に良かった。 赤のドラゴン:僕だけじゃ・・・僕の「弱さ」と向き合う事なんて・・・到底できなかった・・・・ 青のドラゴン:・・・・お前・・・ 赤のドラゴン:ねぇ。ふたつだけ、お願いがあるんだ。緑のドラゴンに伝えて。 赤のドラゴン:「ごめんね」と「友達で居てくれてありがとう」って。 青のドラゴン:(泣く)俺は・・・俺は!!!絶対に伝えねぇぞ!!! 赤のドラゴン:ふふ、どうしたの珍しい。君がそんな子供みたいに泣くなんて。 赤のドラゴン:・・・伝えなくていいよ。君が聞いてくれただけで、僕はじゅうぶん救われたよ。 青のドラゴン:やめろ!!やめろ!!!火を吹くな!!! 赤のドラゴン:ねぇ、大好きだよ・・・ 青のドラゴン:やめろおおお!!!! 0: 0: 0:(間) 0: 0: 緑のドラゴン:(語りべ)赤のドラゴンは、体の中に向かって火を吹きました。 緑のドラゴン:自分の中の「弱さ」に向かって、ありったけの火を、自分の体の中に吹きました。 緑のドラゴン:赤のドラゴンの体は、体の中から破裂し、バラバラになりました。 緑のドラゴン:青のドラゴンは泣きながら、赤のドラゴンの欠片を集めました。 0: 0: 青のドラゴン:・・・なんで・・・なんでだ・・・なんでこんな事するんだ・・!!ばかやろう・・・ばかやろう!!!! 青のドラゴン:絶対に・・・絶対に俺は許さねぇぞ!!!! 0: 0: 緑のドラゴン:(語りべ)青のドラゴンが叫び、泣きはらしてしばらくすると、 緑のドラゴン:バラバラになった赤のドラゴンの体の破片から、ひとつだけ光っているものを見つけました。 0: 0: 青のドラゴン:・・・なんだ?これだけ・・・光ってる・・・ 0: 0: 緑のドラゴン:(語りべ)それは、小さな小さな、卵でした。 青のドラゴン:・・・赤のドラゴン?お前なのか? 緑のドラゴン:(語りべ)青のドラゴンは、その卵を大切に大切に、誰にも見つからない場所へ持って行きました。 青のドラゴン:今度はちょっとは優しくしてやる。だから、安心して生まれてこい。 緑のドラゴン:(語りべ)青のドラゴンは、不器用な口調で卵に語りかけました。しかしその瞳はとても優しく、卵を包み込む手は、とても暖かかったのです。 緑のドラゴン:おしまい。 0: 0:

0:【登場人物】 0:■赤のドラゴン(心が幼く、高ぶると炎が止まらなくなる、何の守り神か不明。) 0:■緑のドラゴン(明るく、皆のまとめ役、森の守り神) 0:■青のドラゴン(冷静、我関せずという性格、空の守り神) 0:(語りべ)と記載してある所は語るようにお読みください。 0: 0: 青のドラゴン:(語りべ)昔々あるところに、仲良しのドラゴンが三匹いました。 青のドラゴン:一匹は赤いドラゴン。三匹の中で一番体が大きいのに、一番心が幼く臆病者です。 青のドラゴン:もう一匹は緑のドラゴン。明るくて皆のまとめ役。森の妖精や精霊をとても大切にしています。 青のドラゴン:最後は青のドラゴンです。とても冷静ですが、一人で行動するのが好きな、空の守り神です。 青のドラゴン:おやおや、今日も赤のドラゴンが子供のように泣いています。 赤のドラゴン:ぐすん、ぐすん・・・ 緑のドラゴン:どうしたんだい、赤のドラゴン。どこか痛いのかい? 赤のドラゴン:違うの。また青のドラゴンが、僕の事、「体だけ大きいな」って言ったの! 緑のドラゴン:そうかそうか、君は体が大きい事を気にしているもんなぁ。 赤のドラゴン:だって、だって、僕は君たち二匹と大きさが違う。同じがイイのに、生まれて育ったら、こんなに大きくなっちゃったんだ。 緑のドラゴン:別に気にしなくていいじゃないか。僕たちは君が大きい事を気にしていないよ? 赤のドラゴン:嫌だ、嫌だ、皆と同じが良かった。だってそしたら、青のドラゴンに「体だけ大きいな」なんて言われなかった! 緑のドラゴン:青のドラゴンは確かにいつも冷たいけど、きっとそんな意味で言ったんじゃないよ?気にすることないよ! 赤のドラゴン:(段々興奮してくる)きっと嫌われたんだ!僕は、僕は青のドラゴンが大好きなのに、僕が大きいから嫌いなんだ!! 緑のドラゴン:ちょっとちょっと、そんなに興奮しないで!君は興奮すると・・・ 赤のドラゴン:うわぁぁぁん!!うわぁぁぁん!! 緑のドラゴン:ほぉら・・・火を吹いた・・・ 赤のドラゴン:ごめんなさい、ごめんなさい。自分では止められないの。悲しい事があると、火が出ちゃうの。 赤のドラゴン:大人になってからずっとこうなんだ。一人でずっと、火が出ないように何度練習しても、森の魔女にお薬を貰っても、ちっとも収まらない。 赤のドラゴン:みんなが大好きなのに、危ない火なんか、吹きたくないのに・・・う・・う・・・ 赤のドラゴン:うわぁぁぁん!!うわぁぁぁん!! 青のドラゴン:(空から)おお。また今日も派手に吹いてんなぁ。ったく鬱陶しい。 緑のドラゴン:(空に向かって)青のドラゴン!今回は君の言葉足らずが原因だよ!!ちゃんと説明するんだ! 青のドラゴン:チッ・・・面倒くせぇなぁ・・・今そっちに降りるよ! 緑のドラゴン:さ、青のドラゴン、ちゃんと赤のドラゴンに説明するんだ。 青のドラゴン:別に俺は、見たままを言っただけだぜ?「体だけ大きい」って思ったからそう言っただけだ。 赤のドラゴン:ううっ・・・ 緑のドラゴン:ああ!ダメだよ赤のドラゴン。泣いちゃダメだ。ちゃんと落ち着いて聞いて?ね? 赤のドラゴン:うん・・・。 青のドラゴン:なんだ、お前自分が体が大きい事、もしかして悪い意味で取ったのか? 赤のドラゴン:体だけ大きいって事は、みんなと違うから、ダメって事でしょ? 青のドラゴン:別にダメとは言ってねぇが・・・ 赤のドラゴン:確かに・・・言ってないけど・・・ 青のドラゴン:お前は俺らの種類で言うと、”心”は卵から生まれた子供みたいだけど、”体”は大人みたいにデケェなって思っただけだ。 緑のドラゴン:僕や青のドラゴンは、赤のドラゴンで言う所の、子供と大人の間位の大きさだからね。きっと種類が違うからだろうけど。 青のドラゴン:デケェ事の何が悪いんだよ。デケェって、皆よりデケェってだけだろうが。 赤のドラゴン:嫌いじゃない?僕の事嫌いじゃない?一緒に遊ぶのイヤじゃない? 青のドラゴン:ああもう。嫌だったら毎日毎日一緒に遊んでねぇよ! 赤のドラゴン:うん・・・ 青のドラゴン:お前はすーぐ考えすぎるきらいがある。 赤のドラゴン:きらい・・・嫌いなの? 緑のドラゴン:違う違う!考えすぎっていう事だよ。 赤のドラゴン:そっか・・・ 緑のドラゴン:ふう・・・ 青のドラゴン:あーー・・・面倒くせぇ。俺ぁもう一度空に行ってくる。よいしょっと!(飛び立つ) 赤のドラゴン:ああ!青のドラゴン!!ごめんね!ごめんね!ありがとう!今日もちゃんと言ってくれて! 青のドラゴン:うるせえよ!! 赤のドラゴン:僕、僕ね!青のドラゴンの事、大好きだよ! 青のドラゴン:知ってるーー!!(遠ざかっていく声) 緑のドラゴン:あははははは 赤のドラゴン:なんで笑うのさぁ・・・ 緑のドラゴン:いや、毎日毎日、よく飽きもせず君たちは・・・あははは 赤のドラゴン:笑いすぎだよぉ・・・ 緑のドラゴン:赤のドラゴン、よくわかっただろ? 赤のドラゴン:うん。緑のドラゴンもごめんね、いつもいつも・・・ 緑のドラゴン:気にしてないよ。さ、僕も森を見回りにいかなきゃ。 赤のドラゴン:そっか。 緑のドラゴン:君は今日は何をするの? 赤のドラゴン:何もしないよぉ・・・だって僕は、何を守るのかまだわからないんだもの。 緑のドラゴン:そっか。じゃ、また明日! 赤のドラゴン:あ、行っちゃうの・・・? 緑のドラゴン:じゃあねー! 赤のドラゴン:(しょんぼり)はぁ・・・また独りぼっちになっちゃったぁ・・・ 赤のドラゴン:僕は一体、何を守る為に生まれたんだろう。僕らの世界では、ドラゴンは守り神なのに、 赤のドラゴン:僕は何も守るものがない。僕も緑のドラゴンや青のドラゴンみたいに何かを守りたいなぁ・・・ 0: 0: 0:(間) 0: 0: 赤のドラゴン:(語りべ)次の日の事です。 赤のドラゴン:その日は朝から沢山の雨が降っていました。 赤のドラゴン:緑のドラゴンが守っている森にも、その雨は降り注ぎ、大変なことになっていました。 0: 0: 青のドラゴン:(空から)・・・おい!緑のドラゴン!! 緑のドラゴン:ああ、青のドラゴン!空から見てくれたんだね、どうだった? 青のドラゴン:東の方角にある滝の水の量がヤバい事になってる。 緑のドラゴン:そうか・・・どうしよう。僕はもう、精霊たちを避難させるだけで手いっぱいだ。 青のドラゴン:このままだと、西の方角の妖精たちが流されちまう。 緑のドラゴン:ああ、どうしよう・・・僕たちじゃ限界だ・・・ 青のドラゴン:しゃーない、赤のドラゴンのデカい体を使うか! 緑のドラゴン:そうだね!彼なら大きいから、一度に沢山避難させられる。どこにいるかわかるかい? 青のドラゴン:あー、多分この時間ならアイツは・・・心当たりがある。呼んでくる! 緑のドラゴン:頼んだよ!・・・凄いな。赤のドラゴンがいつどこで何をしてるか、青のドラゴンはお見通しか・・・ 緑のドラゴン:青のドラゴンが、面倒見がいいっていうのもあるか・・・面白い二匹だなぁ・・ 緑のドラゴン:・・・はぁ・・・。よく、信じられるよな。種類が違うのに。私にはあの二人は到底理解できないな・・・ 緑のドラゴン:おっと、そんな事考えてる場合じゃない。森の皆を安全な場所に避難させなきゃ・・・! 0: 0: 0:(間) 0: 0: 赤のドラゴン:ぐぉ~ぐぉ~~ 青のドラゴン:(遠くから)おーい・・赤のドラゴン! 赤のドラゴン:ぐぉ~ぐぉ~~~ 青のドラゴン:(近くに来た)おい!このデカブツ!!! 赤のドラゴン:(起きる)僕だって好きでデカいわけじゃないぃー!! 青のドラゴン:起きたか。 赤のドラゴン:ふぇ・・?青のドラゴン・・・どしたのこんな時間に。 青のドラゴン:緑のドラゴンが守護してる森が、この雨でどこも崩れそうになってる。精霊や妖精達を安全な場所に運びたい。協力してくれるな? 赤のドラゴン:うん!僕なら一度にたくさんのみんなを運べるものね!もちろんだよ! 青のドラゴン:よし、俺が先導する。ついてこい。まずは西の方角だ。 赤のドラゴン:うん! 0: 0: 0:(間) 0: 0: 緑のドラゴン:あ!来た!赤のドラゴン!!ありがとう来てくれて! 赤のドラゴン:うん、当たり前だよこれくらい。とりあえず僕は、西の方角に向かうね。 緑のドラゴン:本当にありがとう!恩に着るよ! 青のドラゴン:俺は東の滝の様子を見てくる! 緑のドラゴン:さっきより雨が強くなってる!気を付けて! 青のドラゴン:おう! 0: 0: 0:(間) 0: 0: 赤のドラゴン:さぁ、精霊さん、妖精さん、僕の背中に乗って!安全な場所にこのまま行くよ! 緑のドラゴン:赤のドラゴン、西の丘に向かってくれ。あそこなら滝の水があふれたとしても危険はない。 赤のドラゴン:わかったよ・・・と、とと・・・なんだ?地面が揺れてる・・・ 緑のドラゴン:地鳴り・・・なんだ?聞いたことが無い音だ。 赤のドラゴン:いやだ、怖い・・・!!なんだこれ!! 緑のドラゴン:赤のドラゴン、落ち着くんだ。 赤のドラゴン:ドンドン音が大きくなってる・・・山が・・・動いてる・・・山・・・青のドラゴンが居る方角だ! 緑のドラゴン:赤のドラゴン!!頼む、とにかく今は精霊と妖精を移動させる事に集中してくれ。 赤のドラゴン:あ・・・いやだ・・・こ・・・怖い・・こ・・わ・・・い・・・よ・・・ 緑のドラゴン:ああもう、こんな時に!!(強めに)赤のドラゴン!! 赤のドラゴン:ひゃうっ!! 緑のドラゴン:(冷たく)これは友人としてじゃない。森の守護神として頼んでる。頼むから私に協力してくれ。 緑のドラゴン:私だけではダメなんだ。この森を守り切れない!! 赤のドラゴン:み・・・緑のドラゴン・・・僕・・・僕は怖いんだ・・・ 緑のドラゴン:(イラっとする)ああ!!!どうして!!どうして僕が守りたい精霊や妖精を助けてくれないんだ!!! 赤のドラゴン:!!!緑の・・・ドラゴン・・・・?どうしたの?いつもはあんなに優しいのに・・・ 赤のドラゴン:だって・・・だって・・・この地鳴りは・・・青のドラゴンが居る東の方角からだよ? 緑のドラゴン:!!あっ・・・すまない、混乱して・・・ 赤のドラゴン:青のドラゴンに・・・何かあったんだ・・・僕、それだけはわかるんだ・・・助けに・・・行かなきゃ・・・ 緑のドラゴン:いやでも!頼む、頼むよ赤のドラゴン、先に・・・先に精霊や妖精たちを運んでくれ!! 赤のドラゴン:やめてよ!!!僕は森の守護神じゃない!! 緑のドラゴン:!!!・・・・すまない・・・そうだ。そうだよな、君は何も守らなくて良いドラゴンなんだ。 緑のドラゴン:そう、そうだよな。あはは、あはは・・・すまない。もう、もういい。 緑のドラゴン:背中に乗ったみんなを降ろしてくれ。 赤のドラゴン:あっ・・・・ごめん・・・その・・・ 緑のドラゴン:僕が運ぶ。 赤のドラゴン:ごめん、ごめんよ緑のドラゴン!違う、違うんだ・・・青のドラゴンに何かあったんだと思って僕・・・動揺して・・・ 緑のドラゴン:君を頼った私がバカだった!! 赤のドラゴン:あ!行かないで!! 緑のドラゴン:・・・さぁ、みんな、ゆっくり降りて。 赤のドラゴン:あ・・・あ、行かないで!みんな!緑のドラゴン!!違うんだ!誤解なんだ!!僕が・・・僕が弱いから・・・ 緑のドラゴン:僕の精霊たちにさわるな!!! 赤のドラゴン:っ・・・!! 緑のドラゴン:・・・・君の弱さには、もう付き合いきれない・・・!! 緑のドラゴン:僕はあいにく、青のドラゴンほど心が広くないんだ・・・・!!! 赤のドラゴン:・・・あ・・・あ・・・・・ 緑のドラゴン:さよなら。(去る) 0: 0: 0:(間) 0: 0: 赤のドラゴン:あ、あ・・・・ああ・・・ああ・・・あああ、あああ、あああああ、あああああ!!!! 赤のドラゴン:うわぁぁぁん!!うわぁぁぁん!! 赤のドラゴン:こんなに体ばかり大きいのに、僕はちっとも強くない。大事なお友達の仲間すら守れない。 赤のドラゴン:ああ。もう、消えてしまいたい。こんな弱い自分は切り取ってしまいたい。 赤のドラゴン:・・・・切り取って・・・?そうか・・・「そう」すればいいのか・・・・ 0: 0: 0: 緑のドラゴン:(語りべ)赤のドラゴンは、大きな体を空へと伸ばして、口を大きく開けました。 緑のドラゴン:すると、赤のドラゴンの中から、真っ赤なもう一匹のドラゴンが生まれてきたのです。 緑のドラゴン:そう。赤のドラゴンは、自分の中にある「弱さ」を口から吐き出して、生み出したのです。何匹も何匹も・・・。 0: 0: 赤のドラゴン:はぁ・・・はぁ・・・・あはは・・・あはは・・・そうか、そうだったのか・・・・僕にはこんな力があったんだね・・・ 赤のドラゴン:やぁ、もう一人の僕たち。君たちは、僕の「弱さ」だ。ああ、すごいや。「弱さ」を吐き出したら、僕の方は力がみなぎってたまらない・・・!! 赤のドラゴン:ふふふ・・・・もう、何も怖くない。あはは・・・あははははは!!!! 0: 0: 青のドラゴン:赤のドラゴン!!!お前・・・何やってるんだ!!! 赤のドラゴン:・・・やぁ、青のドラゴン。何って、緑のドラゴンに「君の弱さには付き合いきれない」って言われたから、僕の中から「弱さ」を吐き出したんだ。 青のドラゴン:「弱さ」を・・・「吐き出す・・・?」 赤のドラゴン:ああ、そうさ。強ければ強いほど、僕は緑のドラゴンにも、青のドラゴンにも好かれて、ずっと友達でいられるって事なんだろう? 青のドラゴン:・・・なにを・・・言ってるんだ・・・お前・・・・ 赤のドラゴン:もうウンザリしていたんだ!僕自身もね!毎日毎日泣いて泣いて泣いて、誰かを傷つけて迷惑をかけて!! 赤のドラゴン:こんな自分いらない、どうして緑のドラゴンも青のドラゴンも、こんな僕と友達でいてくれるのか不思議だったんだ!! 赤のドラゴン:・・・・弱いからでしょ・・・?僕が弱いから、ダメだから、だから緑のドラゴンは離れていったんでしょう・・・・? 赤のドラゴン:だから僕の中の「弱い」を吐き出したんだ!!もうこれで嫌われたりしない!緑のドラゴンも僕の所に戻ってきてくれるはずだ!! 青のドラゴン:(ひっぱたく)ばかやろう!!! 赤のドラゴン:青の・・・ドラゴン・・・?どうして叩くの?僕は・・・「弱さ」を外に出したよ?もう弱くなんてないんだよ?だから・・・好きでいてくれる・・・ 赤のドラゴン:「友達」でいてくれるでしょう・・・?なんで・・・なんでぶつのさ・・・ 青のドラゴン:・・・・お前は・・・何もわかってねぇな・・・ 赤のドラゴン:ひどい・・・ひどいよ・・・ああ、ダメだ。また「弱さ」が生まれてしまう・・・ 青のドラゴン:・・・好きにしろ。そうやってずっと、自分から「弱さ」を吐き出して、何匹も何匹も生めばいい。 赤のドラゴン:ひどい・・・ひどいよ!!! 0: 0: 緑のドラゴン:(語りべ)その時です。赤のドラゴンから生まれた「弱さ」が、あたりかまわず暴れだし、森を破壊しはじめたのです。 0: 0: 青のドラゴン:・・・見ろ。お前の「弱さ」が暴れてる。 赤のドラゴン:・・・そうだね。 青のドラゴン:・・・・一体何匹生んだんだ? 赤のドラゴン:・・・わからないよ・・・もう自分でも・・・・ 青のドラゴン:このままだと、この森は死滅する。 赤のドラゴン:・・・そんな・・・違う・・・ 青のドラゴン:何が違うんだ?お前は後先考えず、自分の事しか考えずに「弱さ」を吐き出しんだ。その結果がこれだ。当然だろう。 青のドラゴン:緑のドラゴンが大切にしている森が・・・ほら、どんどん焼けていく。お前の「弱さ」のせいでな。 赤のドラゴン:・・・・そんなつもりじゃなかったのにな・・・ 青のドラゴン:緑のドラゴンは、確かに弱かったろうよ。自分の事だけで手いっぱいになるやつだろうよ。 青のドラゴン:それでもな、それでも・・・・いや。今はいい。 0: 0: 赤のドラゴン:・・・・わかった。 青のドラゴン:・・・何をする気だ? 赤のドラゴン:・・・・・・僕さ、ドラゴンに生まれてきたのに、何も守って居なくて、一体何のために産まれてきたんだろうって不思議だったんだ。 青のドラゴン:何を言ってる? 赤のドラゴン:・・・僕は、「僕」からみんなを「守る」為に産まれたんだね。 青のドラゴン:・・・は?どうするつもりだ・・・? 赤のドラゴン:・・・これまで僕が生んできた「弱さ」のドラゴンたちを、食べるよ。 青のドラゴン:・・・食べる? 赤のドラゴン:僕の体に取り込んで、僕の炎(ほのお)で焼き尽くす。 青のドラゴン:・・・なっ・・・自分の体の中に、自分の炎を出す・・・のか・・・? 赤のドラゴン:そうだよ。それしか、ないでしょう? 青のドラゴン:お前、それをやったら自分がどうなるか、わかっているのか? 赤のドラゴン:うん。バラバラに砕け散って、死ぬね。ふふ。 青のドラゴン:・・・何笑ってるんだ・・・。俺は知らんぞ、死ぬなら俺の知らない所で死ぬんだな!! 赤のドラゴン:・・・うん。そうだね。じゃあ君ともここでお別れだ。 青のドラゴン:・・・!!お前・・・!! 赤のドラゴン:・・・バイバイ。青のドラゴン。大好きだったよ。 青のドラゴン:あ!おい!! 赤のドラゴン:さよなら・・・ 0: 0: 0:(間) 0: 0: 緑のドラゴン:(語りべ)赤のドラゴンは、今まで自分が吐き出して生んだ自分の「弱さ」を次々に食べていきました。 緑のドラゴン:自分の「弱さ」を、また自らの体の中に戻すのは、およそ想像もつかない程の激痛を伴います。 緑のドラゴン:それでも赤のドラゴンは、飲み込み続けました。 0: 0: 0:(間) 0: 0: 青のドラゴン:おい!おい!!赤のドラゴン!!もう全部飲み込んだだろう!!もうここでやめろ!!自分の体の中に火を吹くのはやめろ!! 赤のドラゴン:青のドラゴン。やっぱり君は優しいね。・・・大好きだ。 青のドラゴン:いいから!!俺の言う事を聞けって言ってんだろうが!! 赤のドラゴン:何言ってるんだよぉ。僕は、僕の「弱さ」からみんなを守るために産まれたんだ。やっとわかったんだ。 赤のドラゴン:僕の中に居た悪魔みたいに怖い怪獣から、みんなを守るために。 赤のドラゴン:ねぇ、友達に「痛い」って「怖い」って。わかって貰おうとしてもさ、わかってもらえないのはさ、仕方のない事だったんだね。 赤のドラゴン:僕はバカだから気が付かなかった。いつまでもいつまでも子供だった。 赤のドラゴン:友達をいたわって、友達を思いやっていかなきゃいけなかったのに。 青のドラゴン:・・・お前・・・ 赤のドラゴン:こんな僕を見捨てずに、ずっと正直に本音で話してくれてありがとう。青のドラゴン、君に出会えて本当に良かった。 赤のドラゴン:僕だけじゃ・・・僕の「弱さ」と向き合う事なんて・・・到底できなかった・・・・ 青のドラゴン:・・・・お前・・・ 赤のドラゴン:ねぇ。ふたつだけ、お願いがあるんだ。緑のドラゴンに伝えて。 赤のドラゴン:「ごめんね」と「友達で居てくれてありがとう」って。 青のドラゴン:(泣く)俺は・・・俺は!!!絶対に伝えねぇぞ!!! 赤のドラゴン:ふふ、どうしたの珍しい。君がそんな子供みたいに泣くなんて。 赤のドラゴン:・・・伝えなくていいよ。君が聞いてくれただけで、僕はじゅうぶん救われたよ。 青のドラゴン:やめろ!!やめろ!!!火を吹くな!!! 赤のドラゴン:ねぇ、大好きだよ・・・ 青のドラゴン:やめろおおお!!!! 0: 0: 0:(間) 0: 0: 緑のドラゴン:(語りべ)赤のドラゴンは、体の中に向かって火を吹きました。 緑のドラゴン:自分の中の「弱さ」に向かって、ありったけの火を、自分の体の中に吹きました。 緑のドラゴン:赤のドラゴンの体は、体の中から破裂し、バラバラになりました。 緑のドラゴン:青のドラゴンは泣きながら、赤のドラゴンの欠片を集めました。 0: 0: 青のドラゴン:・・・なんで・・・なんでだ・・・なんでこんな事するんだ・・!!ばかやろう・・・ばかやろう!!!! 青のドラゴン:絶対に・・・絶対に俺は許さねぇぞ!!!! 0: 0: 緑のドラゴン:(語りべ)青のドラゴンが叫び、泣きはらしてしばらくすると、 緑のドラゴン:バラバラになった赤のドラゴンの体の破片から、ひとつだけ光っているものを見つけました。 0: 0: 青のドラゴン:・・・なんだ?これだけ・・・光ってる・・・ 0: 0: 緑のドラゴン:(語りべ)それは、小さな小さな、卵でした。 青のドラゴン:・・・赤のドラゴン?お前なのか? 緑のドラゴン:(語りべ)青のドラゴンは、その卵を大切に大切に、誰にも見つからない場所へ持って行きました。 青のドラゴン:今度はちょっとは優しくしてやる。だから、安心して生まれてこい。 緑のドラゴン:(語りべ)青のドラゴンは、不器用な口調で卵に語りかけました。しかしその瞳はとても優しく、卵を包み込む手は、とても暖かかったのです。 緑のドラゴン:おしまい。 0: 0: