台本概要
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タイトル | カイエの魔道具と半端剣士 |
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作者名 | あまくケイ (@amak0331) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
とある街の討伐ギルドに所属しているアサシン「ゼスト」は 自分の成果に納得がいっていなかった そんなある日、奇妙な開発をしている魔導士「カイエ」と出会う 英雄を諦めた剣士の話 男1:女1 ゼスト役は性別不問 展開が崩れない程度のアドリブならOK 733 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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ゼスト | 男 | 162 | 街の討伐ギルドに所属しているアサシン 最強と名高い剣士「レン」のサポート的立ち位置などをしている 街の酒場にいるアカハとは幼馴染 |
カイエ | 女 | 127 | 奇妙な開発をしているメガネ魔導士 魔道学院の留年生 兼ね役でアカハをお願いします |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:魔導学院内
カイエ:…何ぃ!?
カイエ:なぜこの良さがわからない!?
カイエ:え? …そもそも単位をとれ?
カイエ:興味がないね! それに、魔導学院の理念はなんだっただろうか?
カイエ:「好奇心こそ、人間の源泉なり」
カイエ:これに則(のっと)るなら、問題はないだろう!
カイエ:学生に対して、自由を制限するというのか?!
カイエ:別に、禁止事項に触れているわけではないだろう!
カイエ:おのれ……私は、私は納得が…!
カイエ:納得が出来んのだぁぁぁーーー!!!
0:
0:
0:魔物の巣食う古代の城にて
ゼスト:……ここまではOKだ。次はこの先か。
ゼスト:……奴らは、一、二、三体。なるほどな。
ゼスト:となれば、このまま降りて、一体。気づいた二体目のスケルトンの首にナイフを投げ……
ゼスト:三体目が降りかかってきたところで、こいつを盾にし、首元をかっきる……!
ゼスト:その首、いただく!
0:ゼストは先ほどの作戦通りに行動を起こして、スケルトンを倒した
ゼスト:あっけなかったな。もう少し時間がかると思っていたが
ゼスト:さて、あっちはどうだろうか……。まぁ。見るまでもないか
0:城の周りのスケルトンを一人ずつ、的確に処理していった俺はふと、城の大きな中庭を眺めた。
ゼスト:…やっぱりな
ゼスト:…「ヴァリテッドストライク」
ゼスト:…一般的な剣技なのに、まるで奥義でも見ているかのような気分だ
0:
ゼスト:(彼の名前はレン)
ゼスト:(どんな敵でも、一撃で倒せる最強の剣士。それだけだ)
ゼスト:(その速さと力に、勝てるものはいない)
ゼスト:…中心地には強力な魔物が10体といたはずなのに…もう倒しきっている
ゼスト:……何分たった? 5分も経っていないんじゃないか?
0:
ゼスト:(味方の傭兵たちは、レンをたたえるように叫んでいた)
ゼスト:(俺はそれを、城壁の隅の高い所から、ただ眺めているだけだった)
0:
アカハ:おかえり
ゼスト:ただいま
アカハ:ゼストも、おつかれ
アカハ:…もう、レン、そんなこと言わないの! ただでさえ心配しているんだから
ゼスト:顔、赤くなってるぞ
アカハ:ゼスト……あんた、ちょっと裏にいこうか?
ゼスト:なんでも
アカハ:さぁさぁ、皆お疲れでしょ? ジョッキもって!
0:
ゼスト:酒場に帰ってきた俺たちは、一緒に戦った傭兵たちと、クエスト後の飯を共にした
0:
ゼスト:…やっぱり、あいつの周りには、人が集まるな
アカハ:…ゼスト? どしたの、そんな顔して
ゼスト:……悪い、少し散歩してくる
アカハ:? そう
0:
0:
ゼスト:……アカハも、変わらずか
ゼスト:…いやいや、何を思っているんだか。今日に始まったことじゃないだろう
ゼスト:……?
カイエ:むむむ……私の研究成果を理解できないとは……愚かな魔導学院の連中め
カイエ:今に見ていろ……あの顔をふにゃふにゃのスライムのように、ふにゃふにゃの、ふにゃふにゃに…!
ゼスト:なんだあいつ? ……奇妙なものを持って歩いているな
カイエ:…うむ?
カイエ:もしや、そこの者…アサシン稼業をしているな?
ゼスト:やってたら?
カイエ:こんな街中にいるのは珍しいな
ゼスト:全員が暗殺ギルドに所属していたら、世の中の大富豪は大半、空の上だ
カイエ:ほう、もしそのようなおとぎ話が、仮に教科書にのっているのなら…私の開発もついでに、歴史に残ってほしいものだなぁ
ゼスト:? 開発?
カイエ:フフフ……気になるか? 気になるよな? 分かるぞ、そう焦らずとも教えてやる
ゼスト:別に知りたくもないんだが
カイエ:っ! …そうだ!
カイエ:私についてこい
ゼスト:どこに?
カイエ:研究室さ……ふっふっふ
ゼスト:そうそうついていくと思うか? せめてあんたも誰か名乗ったほうがいいと思うぜ?
カイエ:私は、ホールベット魔導学院の学生さ
ゼスト:ホールベット魔導学院って……隣町か。こんなところでサボってていいのかよ?
カイエ:留年の貫禄をなめるでない
ゼスト:サボり魔じゃねえか
カイエ:サボってなどいないさ! 研究に明け暮れていたのだ
ゼスト:また「研究」か。いったい何を研究しているっていうんだよ
カイエ:これを見よ!
ゼスト:? ……これは……針? にしては大きいな……
カイエ:魔導具だ、これは
ゼスト:魔導具?
カイエ:名付けて、「エクスニードル」! じゃじゃーん! どんどんぱふぱふ~!
ゼスト:…はぁ
カイエ:説明しよう! この針の中には、炎魔法が凝縮されている
ゼスト:炎魔法? どういうことだ?
カイエ:私は、なんてことない下級魔法しか扱えないのだが、それを収縮する装置を作ったりすることができる
ゼスト:装置?
カイエ:そうさ。魔法の密度を圧縮させることで、威力を上げる。
カイエ:ひとたびそれを投げれば、凝縮された炎魔法が解放され相手に大きなダメージを与えられるのさ
ゼスト:要は相手に当たれば爆発するってことか?
カイエ:そういうことさ。つまり、長ったらしい爆発魔法など一から覚えなくても、これ炎自体を圧縮するように組めばなんとでもなる優れものさ
カイエ:数か月かけた甲斐はある
ゼスト:それは熱心なことで……でもそんなの作ったところで、どうするつもりだったんだ
カイエ:何がだ?
ゼスト:使い道がねえだろ
カイエ:もとより、開発に使い道から考えてしまえば、意味がない
ゼスト:そりゃ留年するわけか
カイエ:ただ、状況が変わった
ゼスト:なんだよ
カイエ:お前、私の魔導具を使ってくれないか?
ゼスト:は?
カイエ:もし、お前が私の魔導具を使ってクエストをこなしてくれるなら、研究成果をあげられる
カイエ:成果を上げれば魔導学院に認められ、留年なんて空のかなた、私の研究成果が社会進出する可能性があるというものよ!
ゼスト:なるほど、俺を利用するってわけか
ゼスト:…ただ、これを使えば…
カイエ:もちろん、それなりの報酬は払おう
ゼスト:どこから出せるんだ?
カイエ:これでどうだ?
ゼスト:?
カイエ:私のとっておき、一つなめれば超回復のヒールキャンディだ
カイエ:まだ開発途中だが
ゼスト:お前…俺を実験体にするつもりか
カイエ:お金がないのだよ!!! 死活問題だろう!
ゼスト:知らねえよそんなこと!
カイエ:頼む! お願いする! お願い申す! もうしあげたてまつる!!
ゼスト:あーあ……分かった分かった
カイエ:お! いいのか!
ゼスト:……成果を上げたらいいわけだろ? それなら、俺も欲しいと思ってたところだ
カイエ:ぬっ、お前まさか始めたてか?
ゼスト:いや、そこそこに、長いかな…………。
ゼスト:危険な地域でアサシンやってたんだ
カイエ:それは随分と、チャレンジャーだな
ゼスト:いや、そういうことじゃない
ゼスト:危険な場所のほうが、正常な人間は少ないだろ?
ゼスト:そのほうがやりやすい
ゼスト:でも今俺が欲しいのは、暗殺ギルドの報酬じゃなくて…別の成果だ
カイエ:ほう?
ゼスト:よし、そうと決まれば、研究室とやらへ連れていけ。……少し興味がわいてきた
0:
0:
ゼスト:……ここか
カイエ:ようこそ、私の研究室へ
ゼスト:…汚すぎる!
カイエ:? そうか?
ゼスト:まず何がどこにあるかわからん
カイエ:ああ。あそこにあるのは、研究書類で、これは魔導書、そしてこれは……あっ、もう腐っておるな
ゼスト:腐ってるのすげー気になるんだが!
カイエ:自家栽培していた植物なのだが、ほう、何か知らない木の実が生えているな……食べれるのか
ゼスト:もういい、お前の食事事情聴くのなんかこわいから、本題入らせて
カイエ:む? いいだろう……さてさてどこかなー、あ、あったあった。
カイエ:まずこれさ
ゼスト:これは、短刀か?
カイエ:普通の短刀ではない、これも凝縮してある、雷魔法をな
カイエ:名付けて「ボルテックナイフ」! どんどんぱふぱふ~!
ゼスト:…
カイエ:説明し……
ゼスト:(かぶせて)雷……そういうことか。……刺して倒すというよりは、刺した相手に電気を走らせるのが本命の威力と
カイエ:…こほん。ひとたび相手を刺せば、凝縮された雷魔法のダメージが解放され、ドドゴゴォー!と一瞬さ。その威力は上級魔法のそれと同等
カイエ:人間は当たり前だが、大きなクリーチャー相手にも有効だ
ゼスト:なんだと?
カイエ:この魔導具は瞬間的に出る、最大火力が高い。正確に当てれば
カイエ:どんな巨大な相手でも倒すことは不可能ではないし、それどころか一瞬で倒せることも……ああ、あとこれこれ
ゼスト:これは、さっきの針か
カイエ:この針の先端に、強ーい衝撃を伴った瞬間……ドカン! と相手の体は粉々だ
カイエ:どうだ? 大魔法に負けないこの高火力発明は!
ゼスト:短刀にしても、針にしても…コンパクトに詰め込んでいるとは…
ゼスト:…行ける
カイエ:さぁ、私の魔導具を使うのか? 断るのか? どっちだ?
ゼスト:…そんなの、答えは決まってる
0:
0:それからしばらくして。
0:ゼストは「とある」クエストを受けていた。
0:大きめの洞窟にて、ゼストは上から様子を眺めている
ゼスト:よし、これで準備OKと
ゼスト:さっそくためすか、この「エクスニードル」ってやつを…
カイエ:聞こえるかいゼスト君!!
ゼスト:聞こえてる
カイエ:うむ。雷魔法を用いて作ったこの通信機器も良好で何より
0:ゼストは目然にいるスケルトンへ向かって投げる
0:大きな爆発音がなった
ゼスト:……すごい。これは使えるな
カイエ:ふっふっふ……これぞ発明の美しさなり!
カイエ:私の研究成果を奏でる「音」が聞こえるぞ!
0:ゼストはそのまま下に降りて着地する
0:その場にいたスケルトンと、オークが、ゼストに反応する
ゼスト:先にスケルトンを無力化する…!
0:スケルトンに対して格闘術を用いて戦い、短刀をさす
ゼスト:普通に使う分には…他の短刀と変わらないな
ゼスト:起動は…
カイエ:持ち手の下の部分だ、そこをぽちっと押してみろ
ゼスト:…刃に雷が走った
ゼスト:…これで!
ゼスト:「ボルテックナイフ」!
0:ゼストはオークの攻撃をよけた後、短刀を差し込む
カイエ:ううむ! いい音だ!
カイエ:いいぞゼスト。実験体として有意義に仕事をしてくれるじゃないか~
ゼスト:実験体って…響きがなぁ…
ゼスト:…それにしても、ひと刺しでこの威力。現実か、これは
ゼスト:……この力があれば、俺は。レンを、越えられるかもしれない
カイエ:む? レン?
ゼスト:聞いたことあるか?
ゼスト:この街一番の、最強の剣士だ
ゼスト:いや、それ以上かもしれない
0:しばらくゼストは歩く。
ゼスト:剣を覚えたてで、わずか1月で世界で指折りのギルドに行って
ゼスト:1週間でのぼりつめた
カイエ:…そんな話が
カイエ:まるで、剣の達人が転生でもしてきたかのような話だな
カイエ:前世によほど剣技をやりこんだとか、はたまた神が転生したか
ゼスト:戦ってる時は、ノってるようで涼しい顔しているから、きっとそうだろうぜ
カイエ:…ただ、なんでアサシンのお前が、そんなに気にかけているんだ?
ゼスト:俺もそのギルドにいたことがあるからだよ
ゼスト:…剣士として
カイエ:…
ゼスト:自分が剣士でいるのが、馬鹿ばかしくなったぜ
ゼスト:だからやめて、アサシンになった
カイエ:それからまた、戻ってきたのか
ゼスト:…でも。結局また街に戻っても、変わらずだったけどな…
ゼスト:…半端者の話聞いたって毒にもならねえな
カイエ:そんなことはない
ゼスト:?
カイエ:上には上がいる
カイエ:その気持ちは、分からないことはない
カイエ:私だって、最初から開発を志(こころざ)していたわけではないさ
ゼスト:そうなのか?
カイエ:人は誰しも、適性がある
カイエ:最初の一歩は踏み出せるが、それ以上になれば、ある場面で現実を思い知らされる
カイエ:だから、前から興味があった開発をしてみようと思った
カイエ:そもそもアサシンの使う武器というのも気になっていたからなぁ。暗殺はできないが、魔法を活かして何かができると考えたのだ
カイエ:やはり好奇心とは、時に人智を超えるなぁ、うむ
ゼスト:留年生だけどな
カイエ:いいから! ほら、私に構わず、さっさと進むんだ!
ゼスト:命令すんなよ…
ゼスト:…さて、秘宝はこの先。クエスト情報によれば、ひっそりと昔の人が立てた祭壇があって、その台座に宝はある…だったな。…見つけた、これか
カイエ:見つかったのか?
ゼスト:…このクエストは、俺のようないっぱしのアサシンが受けるようなものじゃない。明らかに戦闘能力の高い人間がやることだ
ゼスト:でも、ここまで「俺一人」で行けてしまってるってことは……
ゼスト:カイエがつくった魔導具の実用性が高い証明だ
カイエ:えらい褒めてくれるではないか
カイエ:ふっ。ご光栄にあずかるね
ゼスト:…そして、俺自身も
0:ゼストは宝箱を開ける。色とりどりの宝が目に飛び込んできた。
ゼスト:これを持って帰れば、あのクエストを達成した人間だという証拠が行き渡る。……これで……
カイエ:む? 何か音がしなかったか? ズシンという…重い足音が
ゼスト:…なんだ?
ゼストの後ろで、巨大なものが動く気配がした
ゼスト:……ゴーレムか
ゼスト:ただ悪いな……この生息地域にいるゴーレムの傾向は、把握している。
カイエ:よし、ゼスト! ここが試し時だ
ゼスト:ああ…倒させてもらうぞ
0:ゼストは、カイエからもらった魔導具を携え、戦闘に入る
ゼスト:このタイプは確か、火に強く、雷に弱い。俺の戦力として使えるのは、この針と短刀。
ゼスト:まず、鈍重な動きに、速さで対応する!
0:ゴーレムの腕がゼストに向かう。
0:とっさによけると、腕が地面にえぐりこみ、大きな衝撃が発生する
ゼスト:狙うは、足。炎魔法を圧縮した針は、確かにゴーレムには弱い、だが、俺の目的は、ダメージそのものじゃない
ゼスト:「エクスニードル」!
0:ゼストが針を一直線にゴーレムに向かって投げる
0:足に入り、圧縮された炎が放たれ、大きな爆風を起こす。
ゼスト:爆破による衝撃なら、例え炎がきかなくても使いようがある
ゼスト:さらに「エクスニードル」を、もう二発だ!
0:ゼストは立て続けに針を投げる
カイエ:…爆風の音がよく聞こえる…もうこんなに使いこなしているのか
カイエ:飲みこみが早いのか。…それか、道具の使い方が上手いのかも…
0:さらに針が二本、ゴーレムの足に当たり、爆風が起こる
0:その衝撃で、ゴーレムが体勢を崩す
ゼスト:今だ
ゼスト:その首に、雷を『刺し込む』!
0:ゼストは近づき、一瞬で短刀をゴーレムの首部に差し込む
0:大きな電気が辺り一帯を駆け巡り、城が震えるほどに一瞬、稲妻に覆われた
0:巨体がずしんと地面に倒れこんだ。
カイエ:おお! ノックアウトしたような音が聞こえたぞ!! やったのか!
ゼスト:ああ、おかげさまでな…!
ゼスト:……予定通りの練習した動き、大きなイレギュラーもなし。……最高じゃないか
ゼスト:これを使っていけば、俺は、本当に…英雄に…!
ゼスト:?
0:ゴーレムがゆっくりと起き上がり、岩肌の隙間から赤い目を覗かせ、大きな叫び声をあげる
ゼスト:……何!?
カイエ:!? どうしたゼスト!?
カイエ:なんだ…なんか、嫌な音が聞こえるぞ!?
大きな巨体が起き上がり、素早く拳を振る
ゼスト:くっ……! 早い!
ゼスト:がっぁぁっぁあ!!
0:ゼストにあたり、そのまま壁に体を打つ。全身に大きな衝撃がはしった
ゼスト:……ゴーレムの中に、別の魔物が…っ。そのタイプは…いないと聞いたが…
ゼスト:…ゆえんの、何が居るかわからない…高難度クエスト、ということか、これは
ゼスト:……くそ…………ここまでか
0:そこに、大きな斬撃の音が聞こえ、ゴーレムがひるむ
ゼスト:!? お前は、レン!?
ゼスト:…っ!
0:レンはすかさず一瞬で斬り。ゴーレムの体がバラバラになった
0:ゼストはレンから回復薬をもらう
ゼスト:…なぜここが?
ゼスト:…高難易度クエストに行ったのを、アカハから聞いた?
ゼスト:…はっ。そうか
ゼスト:なんでもない。先に帰っててくれ
ゼスト:無駄な時間を使わせてしまったな…
0:レンは「気にしてないぜ」といって、街へ戻っていった
0:レンと入れ替わりで、カイエがやってきた
カイエ:おい!ゼスト!
ゼスト:…いたのか
カイエ:心配だったからな…主に私の魔導具が…というのは冗談で
カイエ:お前、大丈夫か!?
ゼスト:…回復薬を飲んだ。死にはしない
0:カイエは自分が来た方向をみやった
カイエ:彼が、レンか?
ゼスト:…ああ
カイエ:どうした、そんな顔して
ゼスト:………なぁ、カイエ
ゼスト:役割ってなんなんだろうな
カイエ:?
ゼスト:神を超えるほど、突き抜けるくらい強くて
ゼスト:誰にもそいつに追いつくことはなく
ゼスト:災いや魔物を軽やかに倒し、皆から称賛をもらう
カイエ:最強ということか?
ゼスト:…その最強が一人いるなら、他の人間はいらないんじゃないかって、最近思い始めた
カイエ:…お前
ゼスト:助けに来た時、あいつ、笑顔でなんて言ったと思う?
ゼスト:「あとは俺に任せろ」ってよ
ゼスト:いつも変わることがねえ明るい顔で
ゼスト:目の前の敵を、軽い足取りで倒しやがる
カイエ:…でも、救ってくれたのなら良かったではないか
ゼスト:救った……そうだよ、俺は救われちまった!
ゼスト:必死こいて努力した結果、無様に命を拾われるんだぜ?
ゼスト:ゴーレムも、一秒なく一瞬で倒せちまう!……無敵のレン様にな
カイエ:…それは
ゼスト:あいつは、俺の努力を、誰でも明快な喜劇にかえちまう。
ゼスト:魔物を倒して、みんなが笑顔になるのはいいことだ、それは何も悪くない
ゼスト:でも俺は…笑顔に「される」側は嫌なんだよ
ゼスト:奴が人を笑顔にしていると、苦痛を感じて仕方がねえ
カイエ:…結果を残しているじゃないか
カイエ:さっきのスケルトンの集団だって、もちろん……私の発明のおかげもあるが、同時に君の、身に着けた技術のおかげだろう?
カイエ:少なくともここまでの道のりの敵を全部倒したのはゼストだ
ゼスト:「ここまでの道のりは」だろ?
ゼスト:それ以上はない。チンピラか、スケルトンか、オークか、それくらいだ。俺にできるのは、あいつのお膳立て
ゼスト:…いや、お膳立てにもならねえか。結局、全部、あいつが目立つための茶番劇
ゼスト:頭打ちなんだよ。俺は、それ以上なんていけないし
ゼスト:もう全部、あいつが持って行ってしまう
ゼスト:俺に、存在価値なんてねえんだよ
カイエ:…そんなことは…
カイエ:……?
カイエ:…なんだこの音は?
カイエ:…洞窟の外か?
0:
0:
0:ゼストとカイエは洞窟から出る
ゼスト:…あれは?
ゼスト:……ワイバーンの大群?
カイエ:…おい、100体は居るんじゃないか、これは。ぜんぶ、街の方向に飛んでいるぞ!
カイエ:このままじゃまずい、行こう!
ゼスト:行かなくてもいいだろ
カイエ:ゼスト……っ! お前、この後におよんで!
カイエ:情けなくへたれている場合か!
0:
0:ゼストはカイエの胸倉を掴む
ゼスト:説教たれんなよ、カイエ
カイエ:っ!?
ゼスト:一瞬で片付けられる笑顔満々のヒーローが、もうすでにいる
ゼスト:脇役がそこに入っても邪魔なだけだろ
カイエ:でも、せめて、一体でも……!
ゼスト:あいつが片付けてるっていってんだろ
ゼスト:それか終わってんならヒーロー様をまつりあげろってか?
カイエ:そうはいってない!
カイエ:だからって見捨てる気か!
カイエ:助けられる命があるかもしれないんだぞ!
ゼスト:もう助けられてるんだよ!!!
0:
0:ゼストは大声を上げた後、ゆっくり呼吸を落ち着かせて話す
0:一瞬の沈黙
0:
ゼスト:俺が助けようとした瞬間に、助けが要らなくなってるんだ
ゼスト:…いつだって酒場に行けば、アカハや周りからいつも尊敬されてて
ゼスト:高難易度のクエストにいけば秒で片付ける、今回だってそうだ
ゼスト:俺が短刀ひとふりしている間に、あいつはワイバーンを20体倒せる
ゼスト:いつものようにおちゃらけた様子でな
ゼスト:…街の皆が望んでるのは努力の証明じゃない
ゼスト:無敵の喜劇だ
カイエ:……っ
ゼスト:…しらけたな
ゼスト:…分かった。戻るよ
ゼスト:…指くわえて見学するか…とっくに終わってるか
0:
0:
カイエ:これは……倒されたワイバーンか? 数十体いるぞ?
カイエ:まさか…本当に
ゼスト:そういうことだよ、だから言ったろ
カイエ:でも……だめだ。ゼスト
ゼスト:…なんだよ?
カイエ:私は、お前と協力関係だ
カイエ:このワイバーン相手でも、私の研究結果証明のために、やらなきゃいけない
ゼスト:………お前
カイエ:私の研究に付き合うなら、文句はないはずだ。ゼストのやりたがってる「英雄の証明」とは一切関係ない
カイエ:だから戦おう、ゼスト
ゼスト:……
カイエ:…!? 悲鳴!?
ゼスト:この声は……アカハ? っ!!
0:
0:
アカハ:ゼ、ゼスト!
0:アカハは黒いフードを被った男に襲われかけていた
ゼスト:…あれは…魔導士か?
カイエ:黒魔導士……黒の魔法を使う、無法集団だ
0:黒魔導士が隙を見て黒魔法をはなった
カイエ:…っ! ゼスト、危ない!
ゼスト:! カイエ!!
0:カイエが下級魔法で対抗しようとするが、押し消される
カイエ:これは…黒魔法……。下級魔法の私なんかとは大違いだな
カイエ:身をもって……知らされる……
ゼスト:…あの杖はなんだ?
カイエ:確か…資料でみたことがある…奴はおそらく、あの杖は…そうか
カイエ:あれを使ってワイバーンの大群をおびき寄せているのかもしれない…先端が光っているのが判るか?
ゼスト:ああ…
カイエ:おそらく……ワイバーンの牙がついている。どういう理屈かは分からないが、あれが原因だ
ゼスト:クリーチャーの素材で、そんなことができるのか…
カイエ:とにかく、奴がいる以上、ワイバーンは退かない
ゼスト:…レンは……
カイエ:街中を駆け回って、ワイバーンを倒している
カイエ:…その100体のワイバーンが「目立つ」から、細かい部分は…盲点だったのかもしれない…
カイエ:…ゼスト!
ゼスト:…っ
カイエ:今なんだよ!
カイエ:研究成果も、お前が英雄になれるのも!
カイエ:この時なんだ
カイエ:ここは逃げるところじゃない、そんな当たり前の事、分かってるだろ!?
カイエ:今、お前がやらなくてどうする!
ゼスト:…カイエ
カイエ:行くんだ
カイエ:彼女を、助けるんだよ!
ゼスト:…うるせえんだよ
ゼスト:言われなくても、わかってるぜ!
0:ゼストは目を、黒魔導士に向ける
ゼスト:アカハをはなせ
ゼスト:…「レンよりは弱そうだな」だって?
ゼスト:なんだお前、あいつに一度やられてる身かよ
カイエ:やられてる…ということは…復讐をしにきたと?
ゼスト:…レンが街にいない時を狙ったと…
ゼスト:…やることがこすいね…
ゼスト:…いや、それは俺もか、でも
ゼスト:今だけは、お前と真正面からやりあってやるよ
ゼスト:「ボルテックナイフ」…!
0:ゼストは短刀を出した。
0:黒魔導士は目然に大きな「黒玉」が出現し、それが勢いを伴ってゼストへと襲い掛かる
カイエ:避けたっ!!いいぞ!
ゼスト:遅い! もらった!
カイエ:? 弾の起動が変わった?!
ゼスト:ぐっ……が……
カイエ:ゼスト!!
ゼスト:…ぐっ……
ゼスト:…短刀を
ゼスト:…こい、黒魔導士
0:魔導士は再び魔方陣をえがく
0:その中から、黒い玉が勢いよく放たれる
カイエ:…? なんだあの、ゼストの構えは?
ゼスト:…ヴァリデットストライク!
0:瞬間、魔導士の腹から血が湧き出て、その場に倒れる
ゼスト:…剣の基本技。……意外と短刀でもいけるものだな
ゼスト:…久しぶりに使ったぜ、この技
カイエ:…一瞬、短刀が剣に見えた感覚だった
カイエ:あれが、ゼストが…身に着けてきた剣技……
ゼスト:アサシンで身に着けてきた足のこなしが、リーチの代わりになった
ゼスト:さらに、ボルテックナイフの火力のおかげで、普通のヴァリテッドストライクより底上げされている
ゼスト:残念だが、お前のたくらみも…ここまでだ!
0:ゼストは魔導士にとどめをさす
0:魔導士が倒れて、杖が魔導士の手から離れた
0:杖がわれ、粉々になる
ゼスト:…アカハ!
0:ゼストは、おびえてるアカハの所に向かう
0:
アカハ:…ゼスト
ゼスト:悪いな、お前の尊いレンじゃなくてよ
アカハ:……ありがとう
ゼスト:…あいよ
アカハ:隠れていたら…この建物に入ってきて…
アカハ:怖かった…
ゼスト:スリルがあってよかったか?
アカハ:もう!
ゼスト:…カイエも大丈夫か?
カイエ:私は問題ない。…ほら、下級だが、治癒魔法でちょびちょびと回復してきた
ゼスト:そうか…
カイエ:それにしても、やったな!ゼスト! 大勝利だ!
ゼスト:や、やかましいな…
アカハ:…あ、レン!
0:
0:アカハはレンの所へ行き、泣きそうな顔でレンに心配をかける
ゼスト:…やれやれ
ゼスト:(レンにきかれて)ん? …「何があった」って? そこに転がってる死体が、結局悪さしてたってオチだ
カイエ:そう、なかなかヒーローのよう活躍ぶりだったぞ。な?
ゼスト:どうだかな
カイエ:照れるな照れるな~!
ゼスト:うるさいって
0:
0:
アカハ:(レンに心配され)うん、私は大丈夫。それに
ゼスト:…?
アカハ:ゼストが助けてくれたから
ゼスト:………まぁ、別に。アカハの声がしたから来ただけだよ
アカハ:何その言い方……なんか腹立つ
ゼスト:はいはい、腹立つは定期定期……じゃ、レン、あとはよろしく
0:
0:
0:
0:事件はひと段落し、カイエは魔導学院に戻っていた
カイエ:…ということだ
カイエ:つまり、ゼストのおかげで、街は救われた
カイエ:その時に、私の魔導具も大活躍した
カイエ:…命がなければ、自由を探求できないし、好奇心も発揮できない
カイエ:だから、私の開発も、その役に立ってほしいと思っている
カイエ:今回の件で、それを深く感じた
カイエ:…だから!!
カイエ:…何?
カイエ:…まだ認められないし、それと単位は全く関係ない?
カイエ:お前が自由すぎるからだって…ぇ!?
カイエ:むむむむ……くぅぅぅ!!
カイエ:…絶対にあきらめるもんか…
カイエ:…それなら、私に考えがある…!
0:数日後
ゼスト:さてと……
カイエ:…しおらしいじゃないか。身支度なんかして
ゼスト:カイエ
カイエ:出ていくのか?
ゼスト:……とりあえず、この街はどんな災難が来ても、レンが大体片付けてくれる
ゼスト:間違いなく、俺はここには不必要だ
ゼスト:…別の所へ行く
カイエ:ほう?
カイエ:私の魔道具を返さずにトンズラか?
ゼスト:返すつもりだったさ
カイエ:……なるほど
ゼスト:?
カイエ:それなら、私もついていく
ゼスト:はぁ!?
カイエ:お前とは協力関係だからな
ゼスト:学校は!?
カイエ:退学だ
ゼスト:えぇ!?
カイエ:ただし!条件付きの
カイエ:私の作った魔導具が、各地で活躍すれば、本当に社会に貢献していると認められれば、退学も留年も同時に取り消してもらうようにいいつけた
カイエ:つまり、一発逆転だ!
ゼスト:…マジかよ
カイエ:今日からお前は、魔道具使いゼストということだ!
カイエ:いいかゼスト。お前が成果をあげることで、今後の人生の、私のタァァァーニングポイントが決まるのだ
カイエ:嫌といってもやらせるからな
ゼスト:ワイバーンの元締めを倒した結果じゃだめなのか
カイエ:…私の行く魔導学院は、自由を信条としているのにカタブツが多くてな…
カイエ:それに、その考えはあまい。実験とはじっくりデータを集めることから始まる。まだまだ取り入れてみたいことも多いからな
ゼスト:旅についてくるって、戦闘できるのかよ? ただの研究員として黙って見学しとくってか?
カイエ:ふっふーん、そうもあろうかと自分用の新魔導具を作っておるのだ
カイエ:旅のお供はするさ!
ゼスト:はぁ…
カイエ:確か~このあたりに~
0:カイエは突然、空間に穴をあけて、そこから魔導具を引っ張り出す
カイエ:よいしょっと
ゼスト:うわびっくりしたぁ! どっから出してきた!?
カイエ:下級の空間魔法ならお手のもの
ゼスト:…なんか、ヘンテコな魔導具だな…
カイエ:見た目で騙されるのはよろしくないぞぉ。これとか、これとか……ふっふっふっふ。一応自分も魔導士なのでなぁ
ゼスト:へ、へぇ。そりゃ、役に立ってほしいものだ
カイエ:その言葉、すぐにくつがえそう
0:
ゼスト:俺は魔導具使いのアサシンとなるために、開発者魔導士のカイエと共に
ゼスト:旅に出ることになる。
カイエ:あのアカハというおなごにはこえをかけなくてもいいのか?
ゼスト:いや、いい
ゼスト:また「帰ってきた」時に、適当にあいつの酒場によるさ
カイエ:…その帰ってきたは、いつになることやら
ゼスト:じゃ、とっとと行くぞ
カイエ:最高峰の魔導具使いに…………ちらっ
ゼスト:…
カイエ:魔導具使いに……ちらっ
ゼスト:…ん? なんだよ?
カイエ:…そこは、「俺はなる!」って言うところだろうがあぁぁぁぁっっ!!
ゼスト:いや、知らんがな
0:魔導学院内
カイエ:…何ぃ!?
カイエ:なぜこの良さがわからない!?
カイエ:え? …そもそも単位をとれ?
カイエ:興味がないね! それに、魔導学院の理念はなんだっただろうか?
カイエ:「好奇心こそ、人間の源泉なり」
カイエ:これに則(のっと)るなら、問題はないだろう!
カイエ:学生に対して、自由を制限するというのか?!
カイエ:別に、禁止事項に触れているわけではないだろう!
カイエ:おのれ……私は、私は納得が…!
カイエ:納得が出来んのだぁぁぁーーー!!!
0:
0:
0:魔物の巣食う古代の城にて
ゼスト:……ここまではOKだ。次はこの先か。
ゼスト:……奴らは、一、二、三体。なるほどな。
ゼスト:となれば、このまま降りて、一体。気づいた二体目のスケルトンの首にナイフを投げ……
ゼスト:三体目が降りかかってきたところで、こいつを盾にし、首元をかっきる……!
ゼスト:その首、いただく!
0:ゼストは先ほどの作戦通りに行動を起こして、スケルトンを倒した
ゼスト:あっけなかったな。もう少し時間がかると思っていたが
ゼスト:さて、あっちはどうだろうか……。まぁ。見るまでもないか
0:城の周りのスケルトンを一人ずつ、的確に処理していった俺はふと、城の大きな中庭を眺めた。
ゼスト:…やっぱりな
ゼスト:…「ヴァリテッドストライク」
ゼスト:…一般的な剣技なのに、まるで奥義でも見ているかのような気分だ
0:
ゼスト:(彼の名前はレン)
ゼスト:(どんな敵でも、一撃で倒せる最強の剣士。それだけだ)
ゼスト:(その速さと力に、勝てるものはいない)
ゼスト:…中心地には強力な魔物が10体といたはずなのに…もう倒しきっている
ゼスト:……何分たった? 5分も経っていないんじゃないか?
0:
ゼスト:(味方の傭兵たちは、レンをたたえるように叫んでいた)
ゼスト:(俺はそれを、城壁の隅の高い所から、ただ眺めているだけだった)
0:
アカハ:おかえり
ゼスト:ただいま
アカハ:ゼストも、おつかれ
アカハ:…もう、レン、そんなこと言わないの! ただでさえ心配しているんだから
ゼスト:顔、赤くなってるぞ
アカハ:ゼスト……あんた、ちょっと裏にいこうか?
ゼスト:なんでも
アカハ:さぁさぁ、皆お疲れでしょ? ジョッキもって!
0:
ゼスト:酒場に帰ってきた俺たちは、一緒に戦った傭兵たちと、クエスト後の飯を共にした
0:
ゼスト:…やっぱり、あいつの周りには、人が集まるな
アカハ:…ゼスト? どしたの、そんな顔して
ゼスト:……悪い、少し散歩してくる
アカハ:? そう
0:
0:
ゼスト:……アカハも、変わらずか
ゼスト:…いやいや、何を思っているんだか。今日に始まったことじゃないだろう
ゼスト:……?
カイエ:むむむ……私の研究成果を理解できないとは……愚かな魔導学院の連中め
カイエ:今に見ていろ……あの顔をふにゃふにゃのスライムのように、ふにゃふにゃの、ふにゃふにゃに…!
ゼスト:なんだあいつ? ……奇妙なものを持って歩いているな
カイエ:…うむ?
カイエ:もしや、そこの者…アサシン稼業をしているな?
ゼスト:やってたら?
カイエ:こんな街中にいるのは珍しいな
ゼスト:全員が暗殺ギルドに所属していたら、世の中の大富豪は大半、空の上だ
カイエ:ほう、もしそのようなおとぎ話が、仮に教科書にのっているのなら…私の開発もついでに、歴史に残ってほしいものだなぁ
ゼスト:? 開発?
カイエ:フフフ……気になるか? 気になるよな? 分かるぞ、そう焦らずとも教えてやる
ゼスト:別に知りたくもないんだが
カイエ:っ! …そうだ!
カイエ:私についてこい
ゼスト:どこに?
カイエ:研究室さ……ふっふっふ
ゼスト:そうそうついていくと思うか? せめてあんたも誰か名乗ったほうがいいと思うぜ?
カイエ:私は、ホールベット魔導学院の学生さ
ゼスト:ホールベット魔導学院って……隣町か。こんなところでサボってていいのかよ?
カイエ:留年の貫禄をなめるでない
ゼスト:サボり魔じゃねえか
カイエ:サボってなどいないさ! 研究に明け暮れていたのだ
ゼスト:また「研究」か。いったい何を研究しているっていうんだよ
カイエ:これを見よ!
ゼスト:? ……これは……針? にしては大きいな……
カイエ:魔導具だ、これは
ゼスト:魔導具?
カイエ:名付けて、「エクスニードル」! じゃじゃーん! どんどんぱふぱふ~!
ゼスト:…はぁ
カイエ:説明しよう! この針の中には、炎魔法が凝縮されている
ゼスト:炎魔法? どういうことだ?
カイエ:私は、なんてことない下級魔法しか扱えないのだが、それを収縮する装置を作ったりすることができる
ゼスト:装置?
カイエ:そうさ。魔法の密度を圧縮させることで、威力を上げる。
カイエ:ひとたびそれを投げれば、凝縮された炎魔法が解放され相手に大きなダメージを与えられるのさ
ゼスト:要は相手に当たれば爆発するってことか?
カイエ:そういうことさ。つまり、長ったらしい爆発魔法など一から覚えなくても、これ炎自体を圧縮するように組めばなんとでもなる優れものさ
カイエ:数か月かけた甲斐はある
ゼスト:それは熱心なことで……でもそんなの作ったところで、どうするつもりだったんだ
カイエ:何がだ?
ゼスト:使い道がねえだろ
カイエ:もとより、開発に使い道から考えてしまえば、意味がない
ゼスト:そりゃ留年するわけか
カイエ:ただ、状況が変わった
ゼスト:なんだよ
カイエ:お前、私の魔導具を使ってくれないか?
ゼスト:は?
カイエ:もし、お前が私の魔導具を使ってクエストをこなしてくれるなら、研究成果をあげられる
カイエ:成果を上げれば魔導学院に認められ、留年なんて空のかなた、私の研究成果が社会進出する可能性があるというものよ!
ゼスト:なるほど、俺を利用するってわけか
ゼスト:…ただ、これを使えば…
カイエ:もちろん、それなりの報酬は払おう
ゼスト:どこから出せるんだ?
カイエ:これでどうだ?
ゼスト:?
カイエ:私のとっておき、一つなめれば超回復のヒールキャンディだ
カイエ:まだ開発途中だが
ゼスト:お前…俺を実験体にするつもりか
カイエ:お金がないのだよ!!! 死活問題だろう!
ゼスト:知らねえよそんなこと!
カイエ:頼む! お願いする! お願い申す! もうしあげたてまつる!!
ゼスト:あーあ……分かった分かった
カイエ:お! いいのか!
ゼスト:……成果を上げたらいいわけだろ? それなら、俺も欲しいと思ってたところだ
カイエ:ぬっ、お前まさか始めたてか?
ゼスト:いや、そこそこに、長いかな…………。
ゼスト:危険な地域でアサシンやってたんだ
カイエ:それは随分と、チャレンジャーだな
ゼスト:いや、そういうことじゃない
ゼスト:危険な場所のほうが、正常な人間は少ないだろ?
ゼスト:そのほうがやりやすい
ゼスト:でも今俺が欲しいのは、暗殺ギルドの報酬じゃなくて…別の成果だ
カイエ:ほう?
ゼスト:よし、そうと決まれば、研究室とやらへ連れていけ。……少し興味がわいてきた
0:
0:
ゼスト:……ここか
カイエ:ようこそ、私の研究室へ
ゼスト:…汚すぎる!
カイエ:? そうか?
ゼスト:まず何がどこにあるかわからん
カイエ:ああ。あそこにあるのは、研究書類で、これは魔導書、そしてこれは……あっ、もう腐っておるな
ゼスト:腐ってるのすげー気になるんだが!
カイエ:自家栽培していた植物なのだが、ほう、何か知らない木の実が生えているな……食べれるのか
ゼスト:もういい、お前の食事事情聴くのなんかこわいから、本題入らせて
カイエ:む? いいだろう……さてさてどこかなー、あ、あったあった。
カイエ:まずこれさ
ゼスト:これは、短刀か?
カイエ:普通の短刀ではない、これも凝縮してある、雷魔法をな
カイエ:名付けて「ボルテックナイフ」! どんどんぱふぱふ~!
ゼスト:…
カイエ:説明し……
ゼスト:(かぶせて)雷……そういうことか。……刺して倒すというよりは、刺した相手に電気を走らせるのが本命の威力と
カイエ:…こほん。ひとたび相手を刺せば、凝縮された雷魔法のダメージが解放され、ドドゴゴォー!と一瞬さ。その威力は上級魔法のそれと同等
カイエ:人間は当たり前だが、大きなクリーチャー相手にも有効だ
ゼスト:なんだと?
カイエ:この魔導具は瞬間的に出る、最大火力が高い。正確に当てれば
カイエ:どんな巨大な相手でも倒すことは不可能ではないし、それどころか一瞬で倒せることも……ああ、あとこれこれ
ゼスト:これは、さっきの針か
カイエ:この針の先端に、強ーい衝撃を伴った瞬間……ドカン! と相手の体は粉々だ
カイエ:どうだ? 大魔法に負けないこの高火力発明は!
ゼスト:短刀にしても、針にしても…コンパクトに詰め込んでいるとは…
ゼスト:…行ける
カイエ:さぁ、私の魔導具を使うのか? 断るのか? どっちだ?
ゼスト:…そんなの、答えは決まってる
0:
0:それからしばらくして。
0:ゼストは「とある」クエストを受けていた。
0:大きめの洞窟にて、ゼストは上から様子を眺めている
ゼスト:よし、これで準備OKと
ゼスト:さっそくためすか、この「エクスニードル」ってやつを…
カイエ:聞こえるかいゼスト君!!
ゼスト:聞こえてる
カイエ:うむ。雷魔法を用いて作ったこの通信機器も良好で何より
0:ゼストは目然にいるスケルトンへ向かって投げる
0:大きな爆発音がなった
ゼスト:……すごい。これは使えるな
カイエ:ふっふっふ……これぞ発明の美しさなり!
カイエ:私の研究成果を奏でる「音」が聞こえるぞ!
0:ゼストはそのまま下に降りて着地する
0:その場にいたスケルトンと、オークが、ゼストに反応する
ゼスト:先にスケルトンを無力化する…!
0:スケルトンに対して格闘術を用いて戦い、短刀をさす
ゼスト:普通に使う分には…他の短刀と変わらないな
ゼスト:起動は…
カイエ:持ち手の下の部分だ、そこをぽちっと押してみろ
ゼスト:…刃に雷が走った
ゼスト:…これで!
ゼスト:「ボルテックナイフ」!
0:ゼストはオークの攻撃をよけた後、短刀を差し込む
カイエ:ううむ! いい音だ!
カイエ:いいぞゼスト。実験体として有意義に仕事をしてくれるじゃないか~
ゼスト:実験体って…響きがなぁ…
ゼスト:…それにしても、ひと刺しでこの威力。現実か、これは
ゼスト:……この力があれば、俺は。レンを、越えられるかもしれない
カイエ:む? レン?
ゼスト:聞いたことあるか?
ゼスト:この街一番の、最強の剣士だ
ゼスト:いや、それ以上かもしれない
0:しばらくゼストは歩く。
ゼスト:剣を覚えたてで、わずか1月で世界で指折りのギルドに行って
ゼスト:1週間でのぼりつめた
カイエ:…そんな話が
カイエ:まるで、剣の達人が転生でもしてきたかのような話だな
カイエ:前世によほど剣技をやりこんだとか、はたまた神が転生したか
ゼスト:戦ってる時は、ノってるようで涼しい顔しているから、きっとそうだろうぜ
カイエ:…ただ、なんでアサシンのお前が、そんなに気にかけているんだ?
ゼスト:俺もそのギルドにいたことがあるからだよ
ゼスト:…剣士として
カイエ:…
ゼスト:自分が剣士でいるのが、馬鹿ばかしくなったぜ
ゼスト:だからやめて、アサシンになった
カイエ:それからまた、戻ってきたのか
ゼスト:…でも。結局また街に戻っても、変わらずだったけどな…
ゼスト:…半端者の話聞いたって毒にもならねえな
カイエ:そんなことはない
ゼスト:?
カイエ:上には上がいる
カイエ:その気持ちは、分からないことはない
カイエ:私だって、最初から開発を志(こころざ)していたわけではないさ
ゼスト:そうなのか?
カイエ:人は誰しも、適性がある
カイエ:最初の一歩は踏み出せるが、それ以上になれば、ある場面で現実を思い知らされる
カイエ:だから、前から興味があった開発をしてみようと思った
カイエ:そもそもアサシンの使う武器というのも気になっていたからなぁ。暗殺はできないが、魔法を活かして何かができると考えたのだ
カイエ:やはり好奇心とは、時に人智を超えるなぁ、うむ
ゼスト:留年生だけどな
カイエ:いいから! ほら、私に構わず、さっさと進むんだ!
ゼスト:命令すんなよ…
ゼスト:…さて、秘宝はこの先。クエスト情報によれば、ひっそりと昔の人が立てた祭壇があって、その台座に宝はある…だったな。…見つけた、これか
カイエ:見つかったのか?
ゼスト:…このクエストは、俺のようないっぱしのアサシンが受けるようなものじゃない。明らかに戦闘能力の高い人間がやることだ
ゼスト:でも、ここまで「俺一人」で行けてしまってるってことは……
ゼスト:カイエがつくった魔導具の実用性が高い証明だ
カイエ:えらい褒めてくれるではないか
カイエ:ふっ。ご光栄にあずかるね
ゼスト:…そして、俺自身も
0:ゼストは宝箱を開ける。色とりどりの宝が目に飛び込んできた。
ゼスト:これを持って帰れば、あのクエストを達成した人間だという証拠が行き渡る。……これで……
カイエ:む? 何か音がしなかったか? ズシンという…重い足音が
ゼスト:…なんだ?
ゼストの後ろで、巨大なものが動く気配がした
ゼスト:……ゴーレムか
ゼスト:ただ悪いな……この生息地域にいるゴーレムの傾向は、把握している。
カイエ:よし、ゼスト! ここが試し時だ
ゼスト:ああ…倒させてもらうぞ
0:ゼストは、カイエからもらった魔導具を携え、戦闘に入る
ゼスト:このタイプは確か、火に強く、雷に弱い。俺の戦力として使えるのは、この針と短刀。
ゼスト:まず、鈍重な動きに、速さで対応する!
0:ゴーレムの腕がゼストに向かう。
0:とっさによけると、腕が地面にえぐりこみ、大きな衝撃が発生する
ゼスト:狙うは、足。炎魔法を圧縮した針は、確かにゴーレムには弱い、だが、俺の目的は、ダメージそのものじゃない
ゼスト:「エクスニードル」!
0:ゼストが針を一直線にゴーレムに向かって投げる
0:足に入り、圧縮された炎が放たれ、大きな爆風を起こす。
ゼスト:爆破による衝撃なら、例え炎がきかなくても使いようがある
ゼスト:さらに「エクスニードル」を、もう二発だ!
0:ゼストは立て続けに針を投げる
カイエ:…爆風の音がよく聞こえる…もうこんなに使いこなしているのか
カイエ:飲みこみが早いのか。…それか、道具の使い方が上手いのかも…
0:さらに針が二本、ゴーレムの足に当たり、爆風が起こる
0:その衝撃で、ゴーレムが体勢を崩す
ゼスト:今だ
ゼスト:その首に、雷を『刺し込む』!
0:ゼストは近づき、一瞬で短刀をゴーレムの首部に差し込む
0:大きな電気が辺り一帯を駆け巡り、城が震えるほどに一瞬、稲妻に覆われた
0:巨体がずしんと地面に倒れこんだ。
カイエ:おお! ノックアウトしたような音が聞こえたぞ!! やったのか!
ゼスト:ああ、おかげさまでな…!
ゼスト:……予定通りの練習した動き、大きなイレギュラーもなし。……最高じゃないか
ゼスト:これを使っていけば、俺は、本当に…英雄に…!
ゼスト:?
0:ゴーレムがゆっくりと起き上がり、岩肌の隙間から赤い目を覗かせ、大きな叫び声をあげる
ゼスト:……何!?
カイエ:!? どうしたゼスト!?
カイエ:なんだ…なんか、嫌な音が聞こえるぞ!?
大きな巨体が起き上がり、素早く拳を振る
ゼスト:くっ……! 早い!
ゼスト:がっぁぁっぁあ!!
0:ゼストにあたり、そのまま壁に体を打つ。全身に大きな衝撃がはしった
ゼスト:……ゴーレムの中に、別の魔物が…っ。そのタイプは…いないと聞いたが…
ゼスト:…ゆえんの、何が居るかわからない…高難度クエスト、ということか、これは
ゼスト:……くそ…………ここまでか
0:そこに、大きな斬撃の音が聞こえ、ゴーレムがひるむ
ゼスト:!? お前は、レン!?
ゼスト:…っ!
0:レンはすかさず一瞬で斬り。ゴーレムの体がバラバラになった
0:ゼストはレンから回復薬をもらう
ゼスト:…なぜここが?
ゼスト:…高難易度クエストに行ったのを、アカハから聞いた?
ゼスト:…はっ。そうか
ゼスト:なんでもない。先に帰っててくれ
ゼスト:無駄な時間を使わせてしまったな…
0:レンは「気にしてないぜ」といって、街へ戻っていった
0:レンと入れ替わりで、カイエがやってきた
カイエ:おい!ゼスト!
ゼスト:…いたのか
カイエ:心配だったからな…主に私の魔導具が…というのは冗談で
カイエ:お前、大丈夫か!?
ゼスト:…回復薬を飲んだ。死にはしない
0:カイエは自分が来た方向をみやった
カイエ:彼が、レンか?
ゼスト:…ああ
カイエ:どうした、そんな顔して
ゼスト:………なぁ、カイエ
ゼスト:役割ってなんなんだろうな
カイエ:?
ゼスト:神を超えるほど、突き抜けるくらい強くて
ゼスト:誰にもそいつに追いつくことはなく
ゼスト:災いや魔物を軽やかに倒し、皆から称賛をもらう
カイエ:最強ということか?
ゼスト:…その最強が一人いるなら、他の人間はいらないんじゃないかって、最近思い始めた
カイエ:…お前
ゼスト:助けに来た時、あいつ、笑顔でなんて言ったと思う?
ゼスト:「あとは俺に任せろ」ってよ
ゼスト:いつも変わることがねえ明るい顔で
ゼスト:目の前の敵を、軽い足取りで倒しやがる
カイエ:…でも、救ってくれたのなら良かったではないか
ゼスト:救った……そうだよ、俺は救われちまった!
ゼスト:必死こいて努力した結果、無様に命を拾われるんだぜ?
ゼスト:ゴーレムも、一秒なく一瞬で倒せちまう!……無敵のレン様にな
カイエ:…それは
ゼスト:あいつは、俺の努力を、誰でも明快な喜劇にかえちまう。
ゼスト:魔物を倒して、みんなが笑顔になるのはいいことだ、それは何も悪くない
ゼスト:でも俺は…笑顔に「される」側は嫌なんだよ
ゼスト:奴が人を笑顔にしていると、苦痛を感じて仕方がねえ
カイエ:…結果を残しているじゃないか
カイエ:さっきのスケルトンの集団だって、もちろん……私の発明のおかげもあるが、同時に君の、身に着けた技術のおかげだろう?
カイエ:少なくともここまでの道のりの敵を全部倒したのはゼストだ
ゼスト:「ここまでの道のりは」だろ?
ゼスト:それ以上はない。チンピラか、スケルトンか、オークか、それくらいだ。俺にできるのは、あいつのお膳立て
ゼスト:…いや、お膳立てにもならねえか。結局、全部、あいつが目立つための茶番劇
ゼスト:頭打ちなんだよ。俺は、それ以上なんていけないし
ゼスト:もう全部、あいつが持って行ってしまう
ゼスト:俺に、存在価値なんてねえんだよ
カイエ:…そんなことは…
カイエ:……?
カイエ:…なんだこの音は?
カイエ:…洞窟の外か?
0:
0:
0:ゼストとカイエは洞窟から出る
ゼスト:…あれは?
ゼスト:……ワイバーンの大群?
カイエ:…おい、100体は居るんじゃないか、これは。ぜんぶ、街の方向に飛んでいるぞ!
カイエ:このままじゃまずい、行こう!
ゼスト:行かなくてもいいだろ
カイエ:ゼスト……っ! お前、この後におよんで!
カイエ:情けなくへたれている場合か!
0:
0:ゼストはカイエの胸倉を掴む
ゼスト:説教たれんなよ、カイエ
カイエ:っ!?
ゼスト:一瞬で片付けられる笑顔満々のヒーローが、もうすでにいる
ゼスト:脇役がそこに入っても邪魔なだけだろ
カイエ:でも、せめて、一体でも……!
ゼスト:あいつが片付けてるっていってんだろ
ゼスト:それか終わってんならヒーロー様をまつりあげろってか?
カイエ:そうはいってない!
カイエ:だからって見捨てる気か!
カイエ:助けられる命があるかもしれないんだぞ!
ゼスト:もう助けられてるんだよ!!!
0:
0:ゼストは大声を上げた後、ゆっくり呼吸を落ち着かせて話す
0:一瞬の沈黙
0:
ゼスト:俺が助けようとした瞬間に、助けが要らなくなってるんだ
ゼスト:…いつだって酒場に行けば、アカハや周りからいつも尊敬されてて
ゼスト:高難易度のクエストにいけば秒で片付ける、今回だってそうだ
ゼスト:俺が短刀ひとふりしている間に、あいつはワイバーンを20体倒せる
ゼスト:いつものようにおちゃらけた様子でな
ゼスト:…街の皆が望んでるのは努力の証明じゃない
ゼスト:無敵の喜劇だ
カイエ:……っ
ゼスト:…しらけたな
ゼスト:…分かった。戻るよ
ゼスト:…指くわえて見学するか…とっくに終わってるか
0:
0:
カイエ:これは……倒されたワイバーンか? 数十体いるぞ?
カイエ:まさか…本当に
ゼスト:そういうことだよ、だから言ったろ
カイエ:でも……だめだ。ゼスト
ゼスト:…なんだよ?
カイエ:私は、お前と協力関係だ
カイエ:このワイバーン相手でも、私の研究結果証明のために、やらなきゃいけない
ゼスト:………お前
カイエ:私の研究に付き合うなら、文句はないはずだ。ゼストのやりたがってる「英雄の証明」とは一切関係ない
カイエ:だから戦おう、ゼスト
ゼスト:……
カイエ:…!? 悲鳴!?
ゼスト:この声は……アカハ? っ!!
0:
0:
アカハ:ゼ、ゼスト!
0:アカハは黒いフードを被った男に襲われかけていた
ゼスト:…あれは…魔導士か?
カイエ:黒魔導士……黒の魔法を使う、無法集団だ
0:黒魔導士が隙を見て黒魔法をはなった
カイエ:…っ! ゼスト、危ない!
ゼスト:! カイエ!!
0:カイエが下級魔法で対抗しようとするが、押し消される
カイエ:これは…黒魔法……。下級魔法の私なんかとは大違いだな
カイエ:身をもって……知らされる……
ゼスト:…あの杖はなんだ?
カイエ:確か…資料でみたことがある…奴はおそらく、あの杖は…そうか
カイエ:あれを使ってワイバーンの大群をおびき寄せているのかもしれない…先端が光っているのが判るか?
ゼスト:ああ…
カイエ:おそらく……ワイバーンの牙がついている。どういう理屈かは分からないが、あれが原因だ
ゼスト:クリーチャーの素材で、そんなことができるのか…
カイエ:とにかく、奴がいる以上、ワイバーンは退かない
ゼスト:…レンは……
カイエ:街中を駆け回って、ワイバーンを倒している
カイエ:…その100体のワイバーンが「目立つ」から、細かい部分は…盲点だったのかもしれない…
カイエ:…ゼスト!
ゼスト:…っ
カイエ:今なんだよ!
カイエ:研究成果も、お前が英雄になれるのも!
カイエ:この時なんだ
カイエ:ここは逃げるところじゃない、そんな当たり前の事、分かってるだろ!?
カイエ:今、お前がやらなくてどうする!
ゼスト:…カイエ
カイエ:行くんだ
カイエ:彼女を、助けるんだよ!
ゼスト:…うるせえんだよ
ゼスト:言われなくても、わかってるぜ!
0:ゼストは目を、黒魔導士に向ける
ゼスト:アカハをはなせ
ゼスト:…「レンよりは弱そうだな」だって?
ゼスト:なんだお前、あいつに一度やられてる身かよ
カイエ:やられてる…ということは…復讐をしにきたと?
ゼスト:…レンが街にいない時を狙ったと…
ゼスト:…やることがこすいね…
ゼスト:…いや、それは俺もか、でも
ゼスト:今だけは、お前と真正面からやりあってやるよ
ゼスト:「ボルテックナイフ」…!
0:ゼストは短刀を出した。
0:黒魔導士は目然に大きな「黒玉」が出現し、それが勢いを伴ってゼストへと襲い掛かる
カイエ:避けたっ!!いいぞ!
ゼスト:遅い! もらった!
カイエ:? 弾の起動が変わった?!
ゼスト:ぐっ……が……
カイエ:ゼスト!!
ゼスト:…ぐっ……
ゼスト:…短刀を
ゼスト:…こい、黒魔導士
0:魔導士は再び魔方陣をえがく
0:その中から、黒い玉が勢いよく放たれる
カイエ:…? なんだあの、ゼストの構えは?
ゼスト:…ヴァリデットストライク!
0:瞬間、魔導士の腹から血が湧き出て、その場に倒れる
ゼスト:…剣の基本技。……意外と短刀でもいけるものだな
ゼスト:…久しぶりに使ったぜ、この技
カイエ:…一瞬、短刀が剣に見えた感覚だった
カイエ:あれが、ゼストが…身に着けてきた剣技……
ゼスト:アサシンで身に着けてきた足のこなしが、リーチの代わりになった
ゼスト:さらに、ボルテックナイフの火力のおかげで、普通のヴァリテッドストライクより底上げされている
ゼスト:残念だが、お前のたくらみも…ここまでだ!
0:ゼストは魔導士にとどめをさす
0:魔導士が倒れて、杖が魔導士の手から離れた
0:杖がわれ、粉々になる
ゼスト:…アカハ!
0:ゼストは、おびえてるアカハの所に向かう
0:
アカハ:…ゼスト
ゼスト:悪いな、お前の尊いレンじゃなくてよ
アカハ:……ありがとう
ゼスト:…あいよ
アカハ:隠れていたら…この建物に入ってきて…
アカハ:怖かった…
ゼスト:スリルがあってよかったか?
アカハ:もう!
ゼスト:…カイエも大丈夫か?
カイエ:私は問題ない。…ほら、下級だが、治癒魔法でちょびちょびと回復してきた
ゼスト:そうか…
カイエ:それにしても、やったな!ゼスト! 大勝利だ!
ゼスト:や、やかましいな…
アカハ:…あ、レン!
0:
0:アカハはレンの所へ行き、泣きそうな顔でレンに心配をかける
ゼスト:…やれやれ
ゼスト:(レンにきかれて)ん? …「何があった」って? そこに転がってる死体が、結局悪さしてたってオチだ
カイエ:そう、なかなかヒーローのよう活躍ぶりだったぞ。な?
ゼスト:どうだかな
カイエ:照れるな照れるな~!
ゼスト:うるさいって
0:
0:
アカハ:(レンに心配され)うん、私は大丈夫。それに
ゼスト:…?
アカハ:ゼストが助けてくれたから
ゼスト:………まぁ、別に。アカハの声がしたから来ただけだよ
アカハ:何その言い方……なんか腹立つ
ゼスト:はいはい、腹立つは定期定期……じゃ、レン、あとはよろしく
0:
0:
0:
0:事件はひと段落し、カイエは魔導学院に戻っていた
カイエ:…ということだ
カイエ:つまり、ゼストのおかげで、街は救われた
カイエ:その時に、私の魔導具も大活躍した
カイエ:…命がなければ、自由を探求できないし、好奇心も発揮できない
カイエ:だから、私の開発も、その役に立ってほしいと思っている
カイエ:今回の件で、それを深く感じた
カイエ:…だから!!
カイエ:…何?
カイエ:…まだ認められないし、それと単位は全く関係ない?
カイエ:お前が自由すぎるからだって…ぇ!?
カイエ:むむむむ……くぅぅぅ!!
カイエ:…絶対にあきらめるもんか…
カイエ:…それなら、私に考えがある…!
0:数日後
ゼスト:さてと……
カイエ:…しおらしいじゃないか。身支度なんかして
ゼスト:カイエ
カイエ:出ていくのか?
ゼスト:……とりあえず、この街はどんな災難が来ても、レンが大体片付けてくれる
ゼスト:間違いなく、俺はここには不必要だ
ゼスト:…別の所へ行く
カイエ:ほう?
カイエ:私の魔道具を返さずにトンズラか?
ゼスト:返すつもりだったさ
カイエ:……なるほど
ゼスト:?
カイエ:それなら、私もついていく
ゼスト:はぁ!?
カイエ:お前とは協力関係だからな
ゼスト:学校は!?
カイエ:退学だ
ゼスト:えぇ!?
カイエ:ただし!条件付きの
カイエ:私の作った魔導具が、各地で活躍すれば、本当に社会に貢献していると認められれば、退学も留年も同時に取り消してもらうようにいいつけた
カイエ:つまり、一発逆転だ!
ゼスト:…マジかよ
カイエ:今日からお前は、魔道具使いゼストということだ!
カイエ:いいかゼスト。お前が成果をあげることで、今後の人生の、私のタァァァーニングポイントが決まるのだ
カイエ:嫌といってもやらせるからな
ゼスト:ワイバーンの元締めを倒した結果じゃだめなのか
カイエ:…私の行く魔導学院は、自由を信条としているのにカタブツが多くてな…
カイエ:それに、その考えはあまい。実験とはじっくりデータを集めることから始まる。まだまだ取り入れてみたいことも多いからな
ゼスト:旅についてくるって、戦闘できるのかよ? ただの研究員として黙って見学しとくってか?
カイエ:ふっふーん、そうもあろうかと自分用の新魔導具を作っておるのだ
カイエ:旅のお供はするさ!
ゼスト:はぁ…
カイエ:確か~このあたりに~
0:カイエは突然、空間に穴をあけて、そこから魔導具を引っ張り出す
カイエ:よいしょっと
ゼスト:うわびっくりしたぁ! どっから出してきた!?
カイエ:下級の空間魔法ならお手のもの
ゼスト:…なんか、ヘンテコな魔導具だな…
カイエ:見た目で騙されるのはよろしくないぞぉ。これとか、これとか……ふっふっふっふ。一応自分も魔導士なのでなぁ
ゼスト:へ、へぇ。そりゃ、役に立ってほしいものだ
カイエ:その言葉、すぐにくつがえそう
0:
ゼスト:俺は魔導具使いのアサシンとなるために、開発者魔導士のカイエと共に
ゼスト:旅に出ることになる。
カイエ:あのアカハというおなごにはこえをかけなくてもいいのか?
ゼスト:いや、いい
ゼスト:また「帰ってきた」時に、適当にあいつの酒場によるさ
カイエ:…その帰ってきたは、いつになることやら
ゼスト:じゃ、とっとと行くぞ
カイエ:最高峰の魔導具使いに…………ちらっ
ゼスト:…
カイエ:魔導具使いに……ちらっ
ゼスト:…ん? なんだよ?
カイエ:…そこは、「俺はなる!」って言うところだろうがあぁぁぁぁっっ!!
ゼスト:いや、知らんがな