台本概要

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タイトル Letta
作者名 コバルト犬  (@kobakobarutoken)
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(女1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 この台本はナルサスの葛藤に名前だけ出てきます、ノアのお母さんでハリーの奥さん、ノエルのお話です。
最初読み物として作ったので台本として出す予定はなかったのですが、
ノエルとはどんな人なのか、少しでも分かって頂ければと思い投稿する事にしました。

1人読み台本ですが
ノア、ハリー、ノエル、『』が出てきます
ノエル以外はほぼセリフがありません
ト書きはノエルの心の声です。
全て読んで下さい

お好きな人数でお楽しみください

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ノエル 20 ノアのお母さん 身体が弱く、上手く声を出す事が出来ない
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:どうしても完成させなければならない 0:こればっかりはどうしても 0:手が動く限り紙に書き殴り 0:思い通りに行かないと髪を掻き乱して 0:それでも…私に残せるのはこれしかないからと 0:自らを鼓舞し、先に先にと筆を進める 0:まだ止まらないで…まだ潰れないで 0:私が書き終えるまで、どうか…どうか… 0: ノエル:「……っ」 0: 0:残したい言葉が 0:伝えたかった思いが沢山あったはずなのに 0:こういう時に限って出てこない 0:視界がぼやけ、落ちた雫で手元が濡れる 0:…羽を抑えていた包帯が 0:滲んだインクで紺色に染まってしまった 0: ノエル:「……」 0: 0:そろそろ、2人が帰って来てしまう 0:…もう家を出ないと 0: 0: 0: 0:踏み出す度に、足が固まっていく 0:ついこの間までは近かった商店街が酷く遠い 0: ノエル:「…うご…け」 0: 0:壁に身を引きずると、服が裂ける音がする 0:私を見知った顔が目を逸らして 0:知らぬ顔して歩いていった 0:…私に「大丈夫?」と声を掛けるのは 0:後にも先にもハリーだけのようだ 0: 0: 0: 0:ようやく着いた、よかった…ここまでは来れた 0:商店街に入ってすぐの、リンゴ売りのお店 0:一度しか焼いたことがないけれど 0:とても…とても喜んでくれた 0:リンゴと木の実の焼き菓子をまた焼いたら 0:2人は、どんな顔をするんだろう 0: 0:「…りん…ご…ひと…」 0: 0:言い切る前に重力に負けて、視界が茶一色になる 0:…痛みは、感じない 0:あぁ、そうか、ここまでか 0:店先で力尽きてしまうなんて、お店の人に申し訳ない 0:…でも、もう、どこも動いてくれない 0: 0: 0: 0:思えば、母親らしいことは何も出来なかった 0:こんな、酷い女の元に生まれて… 0:ノアは幸せだったのかな 0:…私、2人に、何も残せなかった 0: 0: 0: 0:周りの音が聞こえなくなる 0:なんて心細いのだろう 0:最後の力を振り絞る、本当は直接伝えたかったけれど 0: ノエル:「ハ…リ……ノ……ア」 ノエル:「あ…い……し…」 0: 0:それ以上、口が動くことはなかった 0:…私の生涯はこうして 0:何もかも中途半端に終わってしまった 0: 0:<間> 0: 0:目が覚めると、暗闇の中にいた 0: ノエル:「…ここは」 ノエル:「…あれ…何か聞こえる」 0: ノア:「……お父さん私ね、ママに言いたいことがある。聞こえていなくても、言いたいことが」 0: ノエル:「これは…誰の声…?」 0: ハリー:「…聞こえているはずだよ」 0: ノエル:「…ハリー!?ハリーの声だわ!…じゃあ、今のはノアの声なの…?」 0: ノア:「うん、そうだよね、私もそう思う」 0: ノエル:「大きくなってる…ママのことちゃんと呼べなくて、マあって言ってたのに」 0: ノア:「……ねぇママ……読んだ私たちが悲しくならないようにしようって頑張ってくれたのは、ありがとう。嬉しいよ」 ノア:「……でもさ、それなら私、病気の事教えてくれた方が、嬉しかった……」 0: ノエル:「…っ…それはっ」 0: ノア:「……っ、……」 ノア:「……なんで!どうしてっ、全部1人で抱えちゃうの!……持たせてよ、私にもパパにも分けてよ」 0: ノエル:「それは…心配をかけたくなくって…貴方達は優しいから、心を病んでしまうかと思って…」 0: ノア:「パパとママとノアで持ったら、さんぶんこ…なんだよっ、……一緒に苦しんで!一緒に泣いて!最後の日まで楽しく暮らせるようにノアもパパも頑張ったよ!」 0: ノエル:「……っ」 0: ノア:「……最後が分かってたなら……お別れくらい言わせてよ……酷いよぉ…」 ノア:「ママの、……ばかぁ……」 0: ノエル:「そっか…そうだったのね…」 ノエル:「……っ…、っごめんね…ノア…、ハリー」 ノエル:「私が…馬鹿だった…」 ノエル:「1人で全部抱えれば何も問題ないって」 ノエル:「…でも違うよね…」 ノエル:「病める時も共にって誓い合ったんだから」 ノエル:「寄りかかっても、良かったんだ」 0: 0: ノエル:「…っノア…ハリー…」 ノエル:「…言いたい事が、あるの、」 ノエル:「言えなかった言葉が…沢山」 ノエル:「……」 0: 0:『そろそろ時間だ』 0: 0:…天の声がする 0:聞いたことが無くても分かる 0:この存在に、私は勝てない 0:私の魂が、酷く脅えている 0:怖い 0: 0:怖い、けど 0: ノエル:「…神様、……聞いて欲しいことが…あります」 ノエル:「まだ、逝くわけにはいかないんです」 ノエル:「まだ…出来てないことがあるんです」 ノエル:「……っ」 ノエル:「お願い…」 ノエル:「私を…連れて行かないで」 0: 0:『死んだものは生まれ変わることが定め』 0:『それを拒むというのか』 0:『お前はここに残って…何をする気だ』 0: ノエル:「少しだけ時間をいただけませんか」 ノエル:「2人にもう一度だけ、会いたい…」 ノエル:「今までして来なかった分、2人を抱きしめたいの」 0: 0:『…それは、神に背いてでも成し遂げたいことか』 0: ノエル:「っ……えぇ、そうです」 0: 0:声を絞り出す 0:たとえ無理だったとしても、 0:神に抵抗した私は、世界一強い心のはずだから 0:いつかあった時に、自慢できるママに 0:今度こそ私は 0:なりたいから 0: 0:『なるほど、それがお前の願い』 0: ノエル:『……はい!』 0: 0:『はぁ…これだから人間を連れて行く役は嫌いなのだよ』 0:『…次に会った時どのような目に合っても知らんぞ』 0: ノエル:「ということは…」 ノエル:「残っても、いいのですか」 0: 0:再び目を瞑った時、神はそこにはいなかった 0: ノエル:「…ありがとうございます…ありがとうございます…」 0: 0: 0: ノエル:「…ハリー。ノア…」 ノエル:「私、また貴方たちに会えるんですって…」 ノエル:「…嬉しい…嬉しいわ」 ノエル:「…次会う時は、苦しいくらいに抱きしめながら」 ノエル:「あの時最後まで言えなかった言葉を…言わせて頂戴ね」 0: 0: 0:…深く深く眠ろう 0:次に目を覚ましたら、2人が目の前にいることを信じて 0:

0:どうしても完成させなければならない 0:こればっかりはどうしても 0:手が動く限り紙に書き殴り 0:思い通りに行かないと髪を掻き乱して 0:それでも…私に残せるのはこれしかないからと 0:自らを鼓舞し、先に先にと筆を進める 0:まだ止まらないで…まだ潰れないで 0:私が書き終えるまで、どうか…どうか… 0: ノエル:「……っ」 0: 0:残したい言葉が 0:伝えたかった思いが沢山あったはずなのに 0:こういう時に限って出てこない 0:視界がぼやけ、落ちた雫で手元が濡れる 0:…羽を抑えていた包帯が 0:滲んだインクで紺色に染まってしまった 0: ノエル:「……」 0: 0:そろそろ、2人が帰って来てしまう 0:…もう家を出ないと 0: 0: 0: 0:踏み出す度に、足が固まっていく 0:ついこの間までは近かった商店街が酷く遠い 0: ノエル:「…うご…け」 0: 0:壁に身を引きずると、服が裂ける音がする 0:私を見知った顔が目を逸らして 0:知らぬ顔して歩いていった 0:…私に「大丈夫?」と声を掛けるのは 0:後にも先にもハリーだけのようだ 0: 0: 0: 0:ようやく着いた、よかった…ここまでは来れた 0:商店街に入ってすぐの、リンゴ売りのお店 0:一度しか焼いたことがないけれど 0:とても…とても喜んでくれた 0:リンゴと木の実の焼き菓子をまた焼いたら 0:2人は、どんな顔をするんだろう 0: 0:「…りん…ご…ひと…」 0: 0:言い切る前に重力に負けて、視界が茶一色になる 0:…痛みは、感じない 0:あぁ、そうか、ここまでか 0:店先で力尽きてしまうなんて、お店の人に申し訳ない 0:…でも、もう、どこも動いてくれない 0: 0: 0: 0:思えば、母親らしいことは何も出来なかった 0:こんな、酷い女の元に生まれて… 0:ノアは幸せだったのかな 0:…私、2人に、何も残せなかった 0: 0: 0: 0:周りの音が聞こえなくなる 0:なんて心細いのだろう 0:最後の力を振り絞る、本当は直接伝えたかったけれど 0: ノエル:「ハ…リ……ノ……ア」 ノエル:「あ…い……し…」 0: 0:それ以上、口が動くことはなかった 0:…私の生涯はこうして 0:何もかも中途半端に終わってしまった 0: 0:<間> 0: 0:目が覚めると、暗闇の中にいた 0: ノエル:「…ここは」 ノエル:「…あれ…何か聞こえる」 0: ノア:「……お父さん私ね、ママに言いたいことがある。聞こえていなくても、言いたいことが」 0: ノエル:「これは…誰の声…?」 0: ハリー:「…聞こえているはずだよ」 0: ノエル:「…ハリー!?ハリーの声だわ!…じゃあ、今のはノアの声なの…?」 0: ノア:「うん、そうだよね、私もそう思う」 0: ノエル:「大きくなってる…ママのことちゃんと呼べなくて、マあって言ってたのに」 0: ノア:「……ねぇママ……読んだ私たちが悲しくならないようにしようって頑張ってくれたのは、ありがとう。嬉しいよ」 ノア:「……でもさ、それなら私、病気の事教えてくれた方が、嬉しかった……」 0: ノエル:「…っ…それはっ」 0: ノア:「……っ、……」 ノア:「……なんで!どうしてっ、全部1人で抱えちゃうの!……持たせてよ、私にもパパにも分けてよ」 0: ノエル:「それは…心配をかけたくなくって…貴方達は優しいから、心を病んでしまうかと思って…」 0: ノア:「パパとママとノアで持ったら、さんぶんこ…なんだよっ、……一緒に苦しんで!一緒に泣いて!最後の日まで楽しく暮らせるようにノアもパパも頑張ったよ!」 0: ノエル:「……っ」 0: ノア:「……最後が分かってたなら……お別れくらい言わせてよ……酷いよぉ…」 ノア:「ママの、……ばかぁ……」 0: ノエル:「そっか…そうだったのね…」 ノエル:「……っ…、っごめんね…ノア…、ハリー」 ノエル:「私が…馬鹿だった…」 ノエル:「1人で全部抱えれば何も問題ないって」 ノエル:「…でも違うよね…」 ノエル:「病める時も共にって誓い合ったんだから」 ノエル:「寄りかかっても、良かったんだ」 0: 0: ノエル:「…っノア…ハリー…」 ノエル:「…言いたい事が、あるの、」 ノエル:「言えなかった言葉が…沢山」 ノエル:「……」 0: 0:『そろそろ時間だ』 0: 0:…天の声がする 0:聞いたことが無くても分かる 0:この存在に、私は勝てない 0:私の魂が、酷く脅えている 0:怖い 0: 0:怖い、けど 0: ノエル:「…神様、……聞いて欲しいことが…あります」 ノエル:「まだ、逝くわけにはいかないんです」 ノエル:「まだ…出来てないことがあるんです」 ノエル:「……っ」 ノエル:「お願い…」 ノエル:「私を…連れて行かないで」 0: 0:『死んだものは生まれ変わることが定め』 0:『それを拒むというのか』 0:『お前はここに残って…何をする気だ』 0: ノエル:「少しだけ時間をいただけませんか」 ノエル:「2人にもう一度だけ、会いたい…」 ノエル:「今までして来なかった分、2人を抱きしめたいの」 0: 0:『…それは、神に背いてでも成し遂げたいことか』 0: ノエル:「っ……えぇ、そうです」 0: 0:声を絞り出す 0:たとえ無理だったとしても、 0:神に抵抗した私は、世界一強い心のはずだから 0:いつかあった時に、自慢できるママに 0:今度こそ私は 0:なりたいから 0: 0:『なるほど、それがお前の願い』 0: ノエル:『……はい!』 0: 0:『はぁ…これだから人間を連れて行く役は嫌いなのだよ』 0:『…次に会った時どのような目に合っても知らんぞ』 0: ノエル:「ということは…」 ノエル:「残っても、いいのですか」 0: 0:再び目を瞑った時、神はそこにはいなかった 0: ノエル:「…ありがとうございます…ありがとうございます…」 0: 0: 0: ノエル:「…ハリー。ノア…」 ノエル:「私、また貴方たちに会えるんですって…」 ノエル:「…嬉しい…嬉しいわ」 ノエル:「…次会う時は、苦しいくらいに抱きしめながら」 ノエル:「あの時最後まで言えなかった言葉を…言わせて頂戴ね」 0: 0: 0:…深く深く眠ろう 0:次に目を覚ましたら、2人が目の前にいることを信じて 0: