台本概要
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タイトル | God Smack Down:Ep3【SNATCHER】 |
---|---|
作者名 | やいねん (@oqrbr5gaaul8wf8) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 5人用台本(男3、女2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
ゴッドスマックダウン:Ep3【スナッチャー】 悪い人たちに追われていた男の子でしたが、なんと目的地に着きました。 しかし、そこにはナイフを持ったお姉さんが待っていました。 時を同じくして、街一番の人気者は泥棒さんに拳銃を向けられていました 過去と現在までもが絡まってゆき、欲望の環が広がってゆく…… 欲望渦巻くこの街で、ひとつの噂をきっかけに人々が奔走するSFクライム活劇 88 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ナット | 男 | 40 | 北米系、十代半ば。『スケーターボーイ』と呼ばれる運び屋。迅速かつ正確に配達を行う。様々な業界で活躍し信頼も厚い。おませな小僧。一人称がオイラ |
サッチモ | 男 | 18 | 北米系。40代半ば。元特殊部隊所属の退役軍人。カウルーンに流れつきSGMを立ち上げ様々な仕事を請け負う。サングラスの似合うマッチョ。色黒でハゲかっこいい。 |
オーウェン | 男 | 16 | 南米系。40代後半。元軍人。戦後、カウルーン州の復興を成し遂げた実業家であり統治者、州知事。娘がいる。褐色の肌に黒髪ちょび髭オールバック。飄々としているが、時折冷酷さを見せる |
モニカ | 女 | 42 | 北欧系。30代半ば。デイジーカッター所属。暗殺や諜報などの隠密業務を生業とする組織の元構成員。戦闘能力も殺傷能力も高い。赤紫色の天パのボブ。谷間みせがち、色目使いがち。 |
ブロンディ | 女 | 29 | アンドロイド。リンキーのお世話を担う。兼ボディーガードの為、『セイファドール』と言う戦闘に関するデータがインプットされてる。だからとってもお強い。リンキーが大好き。不義理を嫌い、行儀にうるさい。高身長、金髪ロング。一人称『ワタクシ』 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
サッチモ:金さえ貰えりゃあ、殺し以外なら何でもやる。それが俺達『SGM co.(エスジーエムカンパニー)』のモットーだ。
0:
サッチモ:何でも屋としてこの街に来てからはだいぶ経つが、色んな依頼があったもんだ。危険地帯に隠されたお宝の捜索から近所の婆さんの引っ越しの手伝いまで、こなせる依頼ならなんでもやってきた。
0:
サッチモ:仲間に優秀なメカニックがいるお陰で仕事もスムーズだし、ちょっとしたお使いを頼めるガキもいる。軍人上がりの俺にゃあ、気楽で丁度いい仕事だ。
0:
サッチモ:……だがな、たまにあるんだよ。『ろくでもない依頼』ってのがよ。
0:
0:カウルーン州カウルーンシティ、セントラルエリア。とあるレストランのトイレで銃口を向けられるオーウェン。
オーウェン:「お前に俺が撃てるのか?なぁ、サッチモ。」
サッチモ:「……これ以外に方法がねぇ。」
オーウェン:「さては……お前知っているな。」
サッチモ:「数ヶ月前の事だ。『ムハリブ・ナビル』のボスから馬鹿みたいな依頼があった。オカルト雑誌の記事を見ては、ウチによく依頼してくるんだよ。報酬額は弾むが、存在もしない都市伝説の代物の捜索なんかに付き合ってる暇はねぇ。だから毎度断ってたんだ。」
オーウェン:「彼の考えそうなことだな。」
サッチモ:「だが、つい数日前。そのオカルト雑誌の記者がウチに来たんだよ。記事には載せてない、オフレコの情報があるってな。」
オーウェン:「……。」
サッチモ:「『ゴッドスマックダウン』を誰が使っていて、どこに隠してあるか。それと、効力を止める方法も。」
オーウェン:「……確かに、俺が死んだら効力は失われる。だけどお前に出来るかなぁ。だって、『殺し』はしないんだろ?」
サッチモ:「別に殺すつもりはない。あんな代物、人類が手にするには早すぎる。だからお前を拉致って初期化させて、効力を失わせる。」
オーウェン:「戦友のよしみか?やっぱり優しいなぁサッチモは。でもさぁ、私が言うことを聞くと思うか?結構忙しいんだぞ?州知事って。」
サッチモ:「殺しはしないが撃たないとは言ってないぞ。足でも撃って無理矢理連れてく。痛いだろうが、そん時は我慢しろよ。」
オーウェン:「参ったなぁ、眼が本気じゃないか。」
サッチモ:「さぁ、大人しく付いてこい。時間がない。」
オーウェン:「……断る。」
サッチモ:「(ため息)……仕方ねぇ。」
ブロンディ:「ハァッ!」
0:発砲するサッチモ。それと同時にトイレの壁か破壊され、オーウェンとサッチモの間に何者かが立ちはだかる。
サッチモ:「うおぉっ!なんだ、壁がブッ壊れて……」
ブロンディ:「ご主人様、お怪我は?」
オーウェン:「流石だなブロンディ。壁を突き抜けて来るなんて、相変わらず発想も馬鹿力も桁外れだ。」
サッチモ:「クソッ、もう気付かれたか!悪運の強い奴だぜ。リヒャルト、聞こえるか!プランBに変更だ!……プランBなんて聞いてないって?うるせぇ馬鹿、ずらかるって事だよ!」
ブロンディ:「っ、待ちなさい!」
オーウェン:「ブロンディ、追わなくていい。」
サッチモ:「オーウェン、俺は諦めねぇぜ。またな。」
0:逃げ去るサッチモ。
ブロンディ:「……本当によろしいのでしょうか。」
オーウェン:「構わん。サッチモが気付くのは時間の問題だった。本当に昔から変わらないな、アイツ。猪突猛進で向こう見ずな所。」
ブロンディ:「彼の事ですから、いずれまた現れます。」
オーウェン:「仕方ないさ。今はこの状況を楽しむ事にしよう。『ゴッドスマックダウン』……最後にアレ手にするのは誰なのか……見届けようじゃないか。」
ブロンディ:「……。」
0:
0:『SGMカンパニー』アジトの前。背後から首にナイフを突き立てられるナット。
ナット:「……だ、誰なの?」
モニカ:「ヒトリメ……」
ナット:「ヒィッ!オバケ!?」
モニカ:「(咳払い)ん゛ん゛ん゛っ!あぁ喉が!……ちょっと、誰がオバケですって!」
ナット:「ああ、人だった!ごめんなさい!」
モニカ:「おっと、動いちゃダメよ?首から血が吹き上がるわよ?」
ナット:「わ、わかったよ!だから殺さないで!」
モニカ:「……ところでアナタ、何者?」
ナット:「オイラはただの運び屋だよ!サッチモに用があって来ただけなんだ!」
モニカ:「なーんだ、お得意さんなのね。じゃあいいわ、放してあげる。」
0:ナイフをしまうモニカ。
ナット:「っ!はぁはぁ、全くもう。次から次と……。」
モニカ:「サッチモなら居ないわよ。それどころかオタクの坊やもアユミちゃんも。」
ナット:「リヒャルトって、坊やって呼ばれてるんだ……。」
モニカ:「一昨日から飲まず食わずで張ってたのに、誰一人帰って来ないのよ。アユミちゃんにだけでも会いたいのになぁ。」
ナット:「飲まず食わずで2日以上も!だから声がガラガラだったんだ……お姉さん、何者なの?」
モニカ:「私は『デイジーカッター』って所から派遣された雇われ要員よ。」
ナット:「え、ホントに?!あの有名な!しかも堅物な老人しか居なさそうなシンクタンクに、こんな綺麗なお姉さんがいるなんて……しかもめっちゃいい匂いするし。」
モニカ:「あ、気付いちゃった?新調したての香水なのよ!アナタすごい気が利くじゃない!褒めてくれて嬉しいわ!でも勘違いさせていたらごめんなさいね。私、ケツの青いガキには興味ないの。」
ナット:「少し褒めただけなのに、なんて心を抉る返しだ……痛い、胸が痛い。」
モニカ:「そんなわけで、一人目に来たのがアナタって訳なの。差し支えなければ、その用事とやらをお聞かせくださらない?」
ナット:「あ……それちょっと、お客様のプライバシーに関わる問題なので……」
モニカ:「『GSD』でしょ。」
ナット:「……。」
モニカ:「しょうがないわね。詳しくは中で話しましょうか。」
ナット:「え、勝手に入っていいの!?」
モニカ:「構いやしないでしょ。客人を待たせてるのはアチラの方だし。」
ナット:「……待って。」
モニカ:「何かしら?」
ナット:「お姉さんなら……信用しても、いいのかな?」
0:
0:食事を終え、セントラルタワーへ帰宅。再び電話をしている
オーウェン:「兄弟、予想外の出来事だ。情報が漏れている。それもマイナーなオカルト雑誌の記者からだ。記事の内容は既に流布された都市伝説の焼き増しで、具にも使いないものだと思っていたが……。ああ、情報提供者との対談形式で綴られていた。どうせ編集段階で趣向を凝らしただけの単なる手法だと思ってたよ。だが、サッチモは知っていた。恐らく全て知っている。いま方々に確認しているが、どうも記者の足取りが掴めない。もし本当に情報提供者がいるのだとしたら、『ゴッドスマックダウン』に刻まれた暗号の解読に携わった有識者のみだ。一人心当たりがある。そいつに……ああ、待っててくれ。リンキーが呼んでいる。」
0:リンキーが話にくる
オーウェン:「はーい、どうしたリンキー?……ブロンディが出掛けた?私に伝言を残して?『破壊してくる』って……フフ、フハハハ。ああリンキー、気にしないで。ありがとうね、教えてくれて。お部屋で九九のお勉強しておいで。」
0:部屋に戻るリンキー。
オーウェン:「ハハハ、今度はブロンディが勝手に動いたよ。何の因果か、はたまた運命か。どうなるだろうね、この騒動の結末は……。」
0:
0:逃げおおせたサッチモ。運転しながら電話する。
サッチモ:「……あの野郎、追手すら寄越して来やがらねぇ。さては楽しんでやがるな?全く、心底ムカつくぜ!おい、リヒャルト!オーウェンに初期化させるプランは保留だ。ブロンディが近くにいたんじゃ話しにならねぇ。あのお掃除ロボット、トイレの壁を突き破ってきやがったんだぜ!?どうやらアンドロイドになっても、思考は変わらねぇらしい。どいつもこいつも、昔からなんも変わりゃしねぇなぁ、ちくしょう!いいかリヒャルト!絶対にアジトには戻るなよ!何があるかわからねぇ。……だとすると、残る方法は一つ。本体の破壊だ。」
0:
0:アジト内のテーブルに座る二人。
ナット:「破壊する……って?」
モニカ:「そうなのよ。上の連中が審議した結果、破壊が妥当だってさ。私は勿体無いと思っちゃうけどねぇ。」
ナット:「因みになんだけど……その記者さんは無事なんだよね?」
モニカ:「ウチの組織をなんだと思ってるの?ちゃんと保護してるわよ。話だって向こうが自発的に話してくれたんだから。拷問なんかしてないし。捕まえる時は『少し』乱暴にしちゃったけどね。」
ナット:「お姉さんが捕まえたの?なんでもするんだ……すごいね。と言うか、そんな状況なら記者さんも話さざるをえない気がするけど……。」
モニカ:「その記者が取材していた間に接触した人間はサッチモと、キサラギ博士のお孫さんだけなんだって。だから私はここに来たってわけ。」
ナット:「そんな大きな話になってたなんて……オイラは本当にただ、運んだだけなんだ。」
モニカ:「要はこういうことね。アナタはサッチモ側から預かった品を『ムハリブ・ナビル』に届けた。その後、そこの手下に追われて逃げている最中にもう一人、別の奴が現れて更に逃げてきた……ってことよね。その路地裏に現れた別の奴の話、詳しく聞かせてくれない?」
ナット:「えっと、そいつはすごく大きくて、右目に眼帯をしてて、鬣(たてがみ)みたいに逆立った白髪で……。」
モニカ:「身体の大きい、右目に眼帯、白髪……まさかね。他には?」
ナット:「オイラやイディの事を、ことあるごとに『人間』って呼んでた。」
モニカ:「なるほどね。そいつが元ヘビー級チャンピオンを一撃で倒したわけね。」
ナット:「ねぇ、サッチモ達は何か悪巧みをしているのかな?オイラは……信じたくないよ。」
モニカ:「さあね。とにかく私の使命は『ゴッドスマックダウン』を持ち帰る事なんだから。じたばたしてても仕方ないし、ここでのんびり待つ……っ!」
ナット:「え、どうし……(口を抑えられ)モゴモゴ!」
モニカ:「誰か来る……!」
0:ナットを抱きかかえ物陰に隠れるモニカ。アジトの扉を開け、ブロンディが入ってくる。
ブロンディ:「失礼致します……。」
モニカ:「……なんなの、あのメイド服の女。」
ナット:「モゴモゴ?(メイド服?)」
ブロンディ:「……どなたでも構いません。お話を聞いていただきたいのです。。」
ナット:「……ぷは、ねぇお姉さん。あの人、オイラ知ってる。」
モニカ:「あら、そうなの?」
ナット:「ここは任せて。」
モニカ:「あ、ちょっと……!」
0:ブロンディの前にひょっこり現れるナット。
ナット:「こんにちは~。誰かと思って咄嗟に隠れちゃったよ。」
ブロンディ:「アナタは……お財布を盗むのがお上手な運び屋さん、ナット様ですね。こんにちは。本日は空き巣をなさっておられるのですか?」
ナット:「違うよ!サッチモに用があって来たんだ!」
ブロンディ:「それは奇遇ですね。ワタクシもサッチモ様にお話がございます。」
ナット:「多分『ゴッドスマックダウン』についてじゃないかな?」
ブロンディ:「ご存知なのですね。その通りです。恐らく彼、もしくはその周辺のどなたが隠し持っていると予想されます。」
ナット:「でも、どうしてメイドさんが……」
ブロンディ:「無駄な争いを治め、終わらせます。『ゴッドスマックダウン』の破壊が早期解決に繋がると判断いたしました。」
モニカ:「壊すのは簡単じゃないわよ。」
0:ひょっこり現れるモニカ。
ブロンディ:「貴女は?」
モニカ:「『デイジーカッター』のモニカよ。どこまでご存知か知らないけど、生身の人間の力ではまず無理ね。超高温で燃やすか、特殊な薬品で溶かすか、大型の油圧プレスで潰すか……それか、核爆弾で吹っ飛ばすしかないわね。だからウチで預かって丁重に処分するのよ。」
ブロンディ:「いいえ、ワタクシなら出来ます。」
モニカ:「話聞いてた?出来ないのよ。」
ブロンディ:「出来ます。」
モニカ:「無理よ。」
ブロンディ:「出来ます。」
モニカ:「出来ない。」
ブロンディ:「出来ます。」
モニカ:「出来ない。」
ブロンディ:「出来ます。」
モニカ:「出来ない!」
ブロンディ:「出来ます。」
モニカ:「出来ないっ!」
ナット:「ああ、ちょっとお二人とも……」
ブロンディ:「お黙りなさい。」
モニカ:「黙ってなさい!」
ナット:「ヒィッ!ごめんなさい!」
0:
0:知事室、高そうなキャスターチェアでクルクル回りながら思い更けるオーウェン。
オーウェン:諦めていた暗号の解読……長年に渡って収集してきたコレクションの中で未だ解明されていないのはただ一つ、『ゴッドスマックダウン』のみ。この騒動の火付け役が彼女であるなら、まだ隠している事があるはずだ。有識者を募ったあの時、彼女は暗号の解読は不可能だと結論づけていた。あれは嘘だ。暗号の先にある『ゴッドスマックダウン』の向こう側を、きっと彼女は見た。それは一体なんなのか、私は知りたい。
0:
0:仮のアジトに到着しそうなサッチモ。
サッチモ:「リヒャルト、そろそろ合流出来るぞ。……なにぃ?ナットとモニカが勝手にお茶してるだって!いつから休憩所になったんだ、ウチのアジトは!そんでブロンディが来て口論になってる!?やりたい放題かよ、ちくしょう!……まだ何かあるのか?アジトの外に、白髪の大男がいるだと?」
0:
0:押し問答を繰り返す二人に呆れはじめるナット。
モニカ:「だから、出来ないって言ってるでしょ!」
ナット:「二人とも、落ち着いてよ……!」
ブロンディ:「いいえ、出来ます。ワタクシの力であれば、どんなモノでも破壊できます。」
モニカ:「じゃあ証明してみなさいよ!そこに飾ってある水晶玉、握り潰してみなさいよ!」
ナット:「待って、人ん家のモノとか勝手に触っちゃ……」
ブロンディ:「わかりました。失礼します。……フンッ!」
0:躊躇なく水晶玉を握り潰すブロンディ
ナット:「ヒェッ!なんの躊躇いもなく握り潰した!」
モニカ:「え、ウソ!本当に握り潰したの?!」
ブロンディ:「証明しました。いかがでしょうか。」
モニカ:「冗談を鵜呑みにするのもすごいし、実際に握り潰す馬鹿力もすごいわね……。」
ブロンディ:「っ!皆様、お静かに……」
ナット:「え、また何か……」
モニカ:「来るわよ、避けなさい!」
ブロンディ:「ナット様、失礼します!」
ナット:「うわぁっ!」
0:ブロンディに抱えられ敵の攻撃を回避するナット。天井を突き破って入室するヴィー。
モニカ:「イタタ……天井に穴を開けて入ってくるなんて、どんなバケモノよ……ちょっと待って。アナタ……」
ブロンディ:「ナット様、お怪我はございませんか?」
ナット:「大丈夫……柔らかぁなおっぱいがクッションになってくれたから、ぬっふっふっふぅ……」
ブロンディ:「……これはこれは、失礼致しまし…たっ!」
0:抱え上げられてナット、床に放り投げられる。
ナット:「あ痛ぁっ!床イッタァ!急に放り投げなくても……あ、うわぁ、ヤツが……また来た!」
モニカ:「逃げるわよ!」
ナット:「ヒィっ、殺される!」
ブロンディ:「どうぞ、お逃げ下さい。」
モニカ:「なに言ってるの!そいつは本物のバケモノよ!人間が敵う相手じゃない!」
ブロンディ:「人間に出来なくても、ワタクシなら……出来ます。」
0:
0:
サッチモ:あーあ、人ん家めちゃくちゃにしやがって!修理代請求するからな!テメェら!
サッチモ:金さえ貰えりゃあ、殺し以外なら何でもやる。それが俺達『SGM co.(エスジーエムカンパニー)』のモットーだ。
0:
サッチモ:何でも屋としてこの街に来てからはだいぶ経つが、色んな依頼があったもんだ。危険地帯に隠されたお宝の捜索から近所の婆さんの引っ越しの手伝いまで、こなせる依頼ならなんでもやってきた。
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サッチモ:仲間に優秀なメカニックがいるお陰で仕事もスムーズだし、ちょっとしたお使いを頼めるガキもいる。軍人上がりの俺にゃあ、気楽で丁度いい仕事だ。
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サッチモ:……だがな、たまにあるんだよ。『ろくでもない依頼』ってのがよ。
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0:カウルーン州カウルーンシティ、セントラルエリア。とあるレストランのトイレで銃口を向けられるオーウェン。
オーウェン:「お前に俺が撃てるのか?なぁ、サッチモ。」
サッチモ:「……これ以外に方法がねぇ。」
オーウェン:「さては……お前知っているな。」
サッチモ:「数ヶ月前の事だ。『ムハリブ・ナビル』のボスから馬鹿みたいな依頼があった。オカルト雑誌の記事を見ては、ウチによく依頼してくるんだよ。報酬額は弾むが、存在もしない都市伝説の代物の捜索なんかに付き合ってる暇はねぇ。だから毎度断ってたんだ。」
オーウェン:「彼の考えそうなことだな。」
サッチモ:「だが、つい数日前。そのオカルト雑誌の記者がウチに来たんだよ。記事には載せてない、オフレコの情報があるってな。」
オーウェン:「……。」
サッチモ:「『ゴッドスマックダウン』を誰が使っていて、どこに隠してあるか。それと、効力を止める方法も。」
オーウェン:「……確かに、俺が死んだら効力は失われる。だけどお前に出来るかなぁ。だって、『殺し』はしないんだろ?」
サッチモ:「別に殺すつもりはない。あんな代物、人類が手にするには早すぎる。だからお前を拉致って初期化させて、効力を失わせる。」
オーウェン:「戦友のよしみか?やっぱり優しいなぁサッチモは。でもさぁ、私が言うことを聞くと思うか?結構忙しいんだぞ?州知事って。」
サッチモ:「殺しはしないが撃たないとは言ってないぞ。足でも撃って無理矢理連れてく。痛いだろうが、そん時は我慢しろよ。」
オーウェン:「参ったなぁ、眼が本気じゃないか。」
サッチモ:「さぁ、大人しく付いてこい。時間がない。」
オーウェン:「……断る。」
サッチモ:「(ため息)……仕方ねぇ。」
ブロンディ:「ハァッ!」
0:発砲するサッチモ。それと同時にトイレの壁か破壊され、オーウェンとサッチモの間に何者かが立ちはだかる。
サッチモ:「うおぉっ!なんだ、壁がブッ壊れて……」
ブロンディ:「ご主人様、お怪我は?」
オーウェン:「流石だなブロンディ。壁を突き抜けて来るなんて、相変わらず発想も馬鹿力も桁外れだ。」
サッチモ:「クソッ、もう気付かれたか!悪運の強い奴だぜ。リヒャルト、聞こえるか!プランBに変更だ!……プランBなんて聞いてないって?うるせぇ馬鹿、ずらかるって事だよ!」
ブロンディ:「っ、待ちなさい!」
オーウェン:「ブロンディ、追わなくていい。」
サッチモ:「オーウェン、俺は諦めねぇぜ。またな。」
0:逃げ去るサッチモ。
ブロンディ:「……本当によろしいのでしょうか。」
オーウェン:「構わん。サッチモが気付くのは時間の問題だった。本当に昔から変わらないな、アイツ。猪突猛進で向こう見ずな所。」
ブロンディ:「彼の事ですから、いずれまた現れます。」
オーウェン:「仕方ないさ。今はこの状況を楽しむ事にしよう。『ゴッドスマックダウン』……最後にアレ手にするのは誰なのか……見届けようじゃないか。」
ブロンディ:「……。」
0:
0:『SGMカンパニー』アジトの前。背後から首にナイフを突き立てられるナット。
ナット:「……だ、誰なの?」
モニカ:「ヒトリメ……」
ナット:「ヒィッ!オバケ!?」
モニカ:「(咳払い)ん゛ん゛ん゛っ!あぁ喉が!……ちょっと、誰がオバケですって!」
ナット:「ああ、人だった!ごめんなさい!」
モニカ:「おっと、動いちゃダメよ?首から血が吹き上がるわよ?」
ナット:「わ、わかったよ!だから殺さないで!」
モニカ:「……ところでアナタ、何者?」
ナット:「オイラはただの運び屋だよ!サッチモに用があって来ただけなんだ!」
モニカ:「なーんだ、お得意さんなのね。じゃあいいわ、放してあげる。」
0:ナイフをしまうモニカ。
ナット:「っ!はぁはぁ、全くもう。次から次と……。」
モニカ:「サッチモなら居ないわよ。それどころかオタクの坊やもアユミちゃんも。」
ナット:「リヒャルトって、坊やって呼ばれてるんだ……。」
モニカ:「一昨日から飲まず食わずで張ってたのに、誰一人帰って来ないのよ。アユミちゃんにだけでも会いたいのになぁ。」
ナット:「飲まず食わずで2日以上も!だから声がガラガラだったんだ……お姉さん、何者なの?」
モニカ:「私は『デイジーカッター』って所から派遣された雇われ要員よ。」
ナット:「え、ホントに?!あの有名な!しかも堅物な老人しか居なさそうなシンクタンクに、こんな綺麗なお姉さんがいるなんて……しかもめっちゃいい匂いするし。」
モニカ:「あ、気付いちゃった?新調したての香水なのよ!アナタすごい気が利くじゃない!褒めてくれて嬉しいわ!でも勘違いさせていたらごめんなさいね。私、ケツの青いガキには興味ないの。」
ナット:「少し褒めただけなのに、なんて心を抉る返しだ……痛い、胸が痛い。」
モニカ:「そんなわけで、一人目に来たのがアナタって訳なの。差し支えなければ、その用事とやらをお聞かせくださらない?」
ナット:「あ……それちょっと、お客様のプライバシーに関わる問題なので……」
モニカ:「『GSD』でしょ。」
ナット:「……。」
モニカ:「しょうがないわね。詳しくは中で話しましょうか。」
ナット:「え、勝手に入っていいの!?」
モニカ:「構いやしないでしょ。客人を待たせてるのはアチラの方だし。」
ナット:「……待って。」
モニカ:「何かしら?」
ナット:「お姉さんなら……信用しても、いいのかな?」
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0:食事を終え、セントラルタワーへ帰宅。再び電話をしている
オーウェン:「兄弟、予想外の出来事だ。情報が漏れている。それもマイナーなオカルト雑誌の記者からだ。記事の内容は既に流布された都市伝説の焼き増しで、具にも使いないものだと思っていたが……。ああ、情報提供者との対談形式で綴られていた。どうせ編集段階で趣向を凝らしただけの単なる手法だと思ってたよ。だが、サッチモは知っていた。恐らく全て知っている。いま方々に確認しているが、どうも記者の足取りが掴めない。もし本当に情報提供者がいるのだとしたら、『ゴッドスマックダウン』に刻まれた暗号の解読に携わった有識者のみだ。一人心当たりがある。そいつに……ああ、待っててくれ。リンキーが呼んでいる。」
0:リンキーが話にくる
オーウェン:「はーい、どうしたリンキー?……ブロンディが出掛けた?私に伝言を残して?『破壊してくる』って……フフ、フハハハ。ああリンキー、気にしないで。ありがとうね、教えてくれて。お部屋で九九のお勉強しておいで。」
0:部屋に戻るリンキー。
オーウェン:「ハハハ、今度はブロンディが勝手に動いたよ。何の因果か、はたまた運命か。どうなるだろうね、この騒動の結末は……。」
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0:逃げおおせたサッチモ。運転しながら電話する。
サッチモ:「……あの野郎、追手すら寄越して来やがらねぇ。さては楽しんでやがるな?全く、心底ムカつくぜ!おい、リヒャルト!オーウェンに初期化させるプランは保留だ。ブロンディが近くにいたんじゃ話しにならねぇ。あのお掃除ロボット、トイレの壁を突き破ってきやがったんだぜ!?どうやらアンドロイドになっても、思考は変わらねぇらしい。どいつもこいつも、昔からなんも変わりゃしねぇなぁ、ちくしょう!いいかリヒャルト!絶対にアジトには戻るなよ!何があるかわからねぇ。……だとすると、残る方法は一つ。本体の破壊だ。」
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0:アジト内のテーブルに座る二人。
ナット:「破壊する……って?」
モニカ:「そうなのよ。上の連中が審議した結果、破壊が妥当だってさ。私は勿体無いと思っちゃうけどねぇ。」
ナット:「因みになんだけど……その記者さんは無事なんだよね?」
モニカ:「ウチの組織をなんだと思ってるの?ちゃんと保護してるわよ。話だって向こうが自発的に話してくれたんだから。拷問なんかしてないし。捕まえる時は『少し』乱暴にしちゃったけどね。」
ナット:「お姉さんが捕まえたの?なんでもするんだ……すごいね。と言うか、そんな状況なら記者さんも話さざるをえない気がするけど……。」
モニカ:「その記者が取材していた間に接触した人間はサッチモと、キサラギ博士のお孫さんだけなんだって。だから私はここに来たってわけ。」
ナット:「そんな大きな話になってたなんて……オイラは本当にただ、運んだだけなんだ。」
モニカ:「要はこういうことね。アナタはサッチモ側から預かった品を『ムハリブ・ナビル』に届けた。その後、そこの手下に追われて逃げている最中にもう一人、別の奴が現れて更に逃げてきた……ってことよね。その路地裏に現れた別の奴の話、詳しく聞かせてくれない?」
ナット:「えっと、そいつはすごく大きくて、右目に眼帯をしてて、鬣(たてがみ)みたいに逆立った白髪で……。」
モニカ:「身体の大きい、右目に眼帯、白髪……まさかね。他には?」
ナット:「オイラやイディの事を、ことあるごとに『人間』って呼んでた。」
モニカ:「なるほどね。そいつが元ヘビー級チャンピオンを一撃で倒したわけね。」
ナット:「ねぇ、サッチモ達は何か悪巧みをしているのかな?オイラは……信じたくないよ。」
モニカ:「さあね。とにかく私の使命は『ゴッドスマックダウン』を持ち帰る事なんだから。じたばたしてても仕方ないし、ここでのんびり待つ……っ!」
ナット:「え、どうし……(口を抑えられ)モゴモゴ!」
モニカ:「誰か来る……!」
0:ナットを抱きかかえ物陰に隠れるモニカ。アジトの扉を開け、ブロンディが入ってくる。
ブロンディ:「失礼致します……。」
モニカ:「……なんなの、あのメイド服の女。」
ナット:「モゴモゴ?(メイド服?)」
ブロンディ:「……どなたでも構いません。お話を聞いていただきたいのです。。」
ナット:「……ぷは、ねぇお姉さん。あの人、オイラ知ってる。」
モニカ:「あら、そうなの?」
ナット:「ここは任せて。」
モニカ:「あ、ちょっと……!」
0:ブロンディの前にひょっこり現れるナット。
ナット:「こんにちは~。誰かと思って咄嗟に隠れちゃったよ。」
ブロンディ:「アナタは……お財布を盗むのがお上手な運び屋さん、ナット様ですね。こんにちは。本日は空き巣をなさっておられるのですか?」
ナット:「違うよ!サッチモに用があって来たんだ!」
ブロンディ:「それは奇遇ですね。ワタクシもサッチモ様にお話がございます。」
ナット:「多分『ゴッドスマックダウン』についてじゃないかな?」
ブロンディ:「ご存知なのですね。その通りです。恐らく彼、もしくはその周辺のどなたが隠し持っていると予想されます。」
ナット:「でも、どうしてメイドさんが……」
ブロンディ:「無駄な争いを治め、終わらせます。『ゴッドスマックダウン』の破壊が早期解決に繋がると判断いたしました。」
モニカ:「壊すのは簡単じゃないわよ。」
0:ひょっこり現れるモニカ。
ブロンディ:「貴女は?」
モニカ:「『デイジーカッター』のモニカよ。どこまでご存知か知らないけど、生身の人間の力ではまず無理ね。超高温で燃やすか、特殊な薬品で溶かすか、大型の油圧プレスで潰すか……それか、核爆弾で吹っ飛ばすしかないわね。だからウチで預かって丁重に処分するのよ。」
ブロンディ:「いいえ、ワタクシなら出来ます。」
モニカ:「話聞いてた?出来ないのよ。」
ブロンディ:「出来ます。」
モニカ:「無理よ。」
ブロンディ:「出来ます。」
モニカ:「出来ない。」
ブロンディ:「出来ます。」
モニカ:「出来ない。」
ブロンディ:「出来ます。」
モニカ:「出来ない!」
ブロンディ:「出来ます。」
モニカ:「出来ないっ!」
ナット:「ああ、ちょっとお二人とも……」
ブロンディ:「お黙りなさい。」
モニカ:「黙ってなさい!」
ナット:「ヒィッ!ごめんなさい!」
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0:知事室、高そうなキャスターチェアでクルクル回りながら思い更けるオーウェン。
オーウェン:諦めていた暗号の解読……長年に渡って収集してきたコレクションの中で未だ解明されていないのはただ一つ、『ゴッドスマックダウン』のみ。この騒動の火付け役が彼女であるなら、まだ隠している事があるはずだ。有識者を募ったあの時、彼女は暗号の解読は不可能だと結論づけていた。あれは嘘だ。暗号の先にある『ゴッドスマックダウン』の向こう側を、きっと彼女は見た。それは一体なんなのか、私は知りたい。
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0:仮のアジトに到着しそうなサッチモ。
サッチモ:「リヒャルト、そろそろ合流出来るぞ。……なにぃ?ナットとモニカが勝手にお茶してるだって!いつから休憩所になったんだ、ウチのアジトは!そんでブロンディが来て口論になってる!?やりたい放題かよ、ちくしょう!……まだ何かあるのか?アジトの外に、白髪の大男がいるだと?」
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0:押し問答を繰り返す二人に呆れはじめるナット。
モニカ:「だから、出来ないって言ってるでしょ!」
ナット:「二人とも、落ち着いてよ……!」
ブロンディ:「いいえ、出来ます。ワタクシの力であれば、どんなモノでも破壊できます。」
モニカ:「じゃあ証明してみなさいよ!そこに飾ってある水晶玉、握り潰してみなさいよ!」
ナット:「待って、人ん家のモノとか勝手に触っちゃ……」
ブロンディ:「わかりました。失礼します。……フンッ!」
0:躊躇なく水晶玉を握り潰すブロンディ
ナット:「ヒェッ!なんの躊躇いもなく握り潰した!」
モニカ:「え、ウソ!本当に握り潰したの?!」
ブロンディ:「証明しました。いかがでしょうか。」
モニカ:「冗談を鵜呑みにするのもすごいし、実際に握り潰す馬鹿力もすごいわね……。」
ブロンディ:「っ!皆様、お静かに……」
ナット:「え、また何か……」
モニカ:「来るわよ、避けなさい!」
ブロンディ:「ナット様、失礼します!」
ナット:「うわぁっ!」
0:ブロンディに抱えられ敵の攻撃を回避するナット。天井を突き破って入室するヴィー。
モニカ:「イタタ……天井に穴を開けて入ってくるなんて、どんなバケモノよ……ちょっと待って。アナタ……」
ブロンディ:「ナット様、お怪我はございませんか?」
ナット:「大丈夫……柔らかぁなおっぱいがクッションになってくれたから、ぬっふっふっふぅ……」
ブロンディ:「……これはこれは、失礼致しまし…たっ!」
0:抱え上げられてナット、床に放り投げられる。
ナット:「あ痛ぁっ!床イッタァ!急に放り投げなくても……あ、うわぁ、ヤツが……また来た!」
モニカ:「逃げるわよ!」
ナット:「ヒィっ、殺される!」
ブロンディ:「どうぞ、お逃げ下さい。」
モニカ:「なに言ってるの!そいつは本物のバケモノよ!人間が敵う相手じゃない!」
ブロンディ:「人間に出来なくても、ワタクシなら……出来ます。」
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サッチモ:あーあ、人ん家めちゃくちゃにしやがって!修理代請求するからな!テメェら!