台本概要
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タイトル | 月霞む夜 |
---|---|
作者名 | maturit (@inui_maturi) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
ご自由に
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ユウリ | 男 | 55 | |
アカリ | 女 | 55 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ユウリ:「少し外に出る」
アカリ:「わかりました先生、どちらまで?」
ユウリ:「単なる散歩だ、付き合ってくれるか?」
アカリ:「かまいませんよ」
ユウリ:「そうか、今日は月が綺麗だろうな」
アカリ:「先生、作家が無闇に月を口上に出すのはお勧めできません」
ユウリ:「それは深読みだ、言葉など所詮は揺らめく炎と同じ、触れば火傷し単に過ぎるならば熱を感じる程度だ」
アカリ:「それは自虐ですか?」
ユウリ:「だから深読みするなと言っただろう…今日ぐらいは言葉を曲げずに楽しみたいんだ」
アカリ:「言葉遊びは好きませんので、私もその方が助かります」
ユウリ:「先に始めようとしたのは君だろう」
アカリ:「あら、いつもの先生でしたらあそこから数分は言葉を紆余曲折(うよきょくせつ)させて、詩人が如く話しておりました」
ユウリ:「そうだな、ああ、その通りだ。ぐうの音も出ない的確な指摘だ」
アカリ:「はぁ(ため息)、どうかなされたのですか? 今日の先生は少し変です」
ユウリ:「わかるか?」
アカリ:「分からなければ先生に興味が無いお方だけでしょう」
ユウリ:「そうか、私はこんなにも揺れているのか」
アカリ:「先生の言葉は人と異なります」
ユウリ:「唐突だな」
アカリ:「それが本の上での文字であれば人はそこに感銘を受けるかもしれません」
ユウリ:「これでも作家の端くれだからな」
アカリ:「いいえ、そういう事を言いたいのではありません」
ユウリ:「?」
アカリ:「単刀直入に言わせて頂くと、分かりにくいです。そして遠回しな言い方は相手を不快にさせる事もあるのです」
ユウリ:「そう…なのか?」
アカリ:「ええ、先生は会話をしているのではなく、今の気持ちという本を書いて朗読しているようです」
ユウリ:「すまなかった、気をつけよう」
アカリ:「別に私は嫌だとは言っておりません」
ユウリ:「…君は…面倒くさいな?」
アカリ:「失礼です先生、女性にそういう事を面と向かって言うべきではありません」
ユウリ:「無粋だったか?」
アカリ:「ええ、ですが許しましょう…なにせ今日は月が綺麗ですから」
ユウリ:「君の方こそ作家らしい」
アカリ:「それは褒め言葉ですね」
ユウリ:「外に出ようか、足元が暗いから気をつけなさい」
アカリ:「手を引いてはくれないのですか?」
ユウリ:「そんな歳でも無いだろうに」
アカリ:「今時は女性をエスコートする男性は紳士として人気ですよ?」
ユウリ:「生憎と紳士というのは好かん、あれは自己満足と見栄でしかない」
アカリ:「先生にはそう見えるのですね」
ユウリ:「君にはどう見えるんだ?」
アカリ:「そうですね、先生。お手を」
ユウリ:「これでいいか?」
アカリ:「はい、ありがとうございます」
ユウリ:「…」
アカリ:「では行きましょうか」
ユウリ:「答えを貰っていないのだが」
アカリ:「あら? 言葉とは炎のような物でしょうに、でしたら風に吹かれて消えたのでしょう」
ユウリ:「敵わないな」
アカリ:「お褒めに預かり光栄です」
ユウリ:「褒めてないのだが…いや作家としては褒めるべきなのかもしれない」
アカリ:「悩んでばかりいると夜が明けてしまいますよ」
ユウリ:「…そうだな」
0:外に出る
アカリ:「今日は満月でしたか」
ユウリ:「そのようだ、だが雲もある」
アカリ:「隠れてしまうかもしれませんね」
ユウリ:「まだ続いているのか?」
アカリ:「さて? 何のことでしょうか?」
ユウリ:「とりあえず歩こう」
アカリ:「お供致します」
ユウリ:「…」
アカリ:「…」
ユウリ:「こうして歩いていると思い出す」
アカリ:「何をですか?」
ユウリ:「君と出会った日の事だ」
アカリ:「覚えていてくださったんですね」
ユウリ:「忘れたくとも忘れられない」
アカリ:「あれを運命というのでしょう」
ユウリ:「その表現は好かない」
アカリ:「先生はロマンを語れない古い人間ですから仕方の無い事かもしれません」
ユウリ:「なんだ? 拗ねたのか?」
アカリ:「拗ねておりません」
ユウリ:「別に出会いを悪く思っている訳では無い、あの出会いは運命ではなく、私が望んだのだ」
アカリ:「そうでしたか」
ユウリ:「君が夜にあそこに居る事もしようとしていた事も知っていた」
アカリ:「では、どうして私を」
ユウリ:「君は作家であるとはどういう事か考えた事はあるか?」
アカリ:「そうですね、人は自分の中にしか言葉を見いだせない生き物です」
ユウリ:「ああ」
アカリ:「誰かに何かを言われようと、全てを理解しているつもりならば烏滸(おこ)がましい」
ユウリ:「そうだな」
アカリ:「ですが本は初めから自分の言葉として伝わるのです、それは残酷でもあるのです」
ユウリ:「逃げ場のない一方通行だからな」
アカリ:「そうなのです。結末は変えられない、物語は変わらない、それを読み手は受け入れて本を読むのです」
ユウリ:「私ならば耐え難い」
アカリ:「私もそうなのです」
ユウリ:「君が筆を折ると聞いた時には喜びもした、だが同時に恐れもした」
アカリ:「…そうですか」
ユウリ:「私は知りたかったのだろう…もしも私が作家でなくなったら、いったい何が残るのかを」
アカリ:「わかりましたか?」
ユウリ:「ああ、考える事自体が間違っていた」
アカリ:「やはり先生の言葉はよく分かりませんね。ちゃんと言葉にして教えてください」
ユウリ:「その、だな…無くなる物などありはしなかった。君を見ていると作家に固執する私は愚かに思える」
アカリ:「でも、辞めないのでしょう?」
ユウリ:「ああ、君が私を先生と呼んでくれるのだからな」
アカリ:「そうですか」
ユウリ:「いつかまた、君の本を読みたい」
アカリ:「わかりました、でもひとつだけ約束してください」
ユウリ:「なんだ?」
アカリ:「私は月ではありません。それが酷く残念なのです」
ユウリ:「そうきたか」
アカリ:「もしも月であったのならば、貴方の声で、言葉で、心から綺麗だと言って貰えたのに、私は月を見る度に嫉妬して夜も眠れず、筆を持つことすら叶わないでしょう」
ユウリ:「本当に敵わないな」
アカリ:「先生」
ユウリ:「わかった。私の負けだ…月より君の方が綺麗だ、私はそれを死ぬまで貫こう」
アカリ:「そうですか、それはとても嬉しいですね」
ユウリ:「今日はいい夜だ」
アカリ:「当たり前です。私が先生のお傍に居るのですから」
ユウリ:「これからも末永く頼む」
アカリ:「はい」
ユウリ:「少し外に出る」
アカリ:「わかりました先生、どちらまで?」
ユウリ:「単なる散歩だ、付き合ってくれるか?」
アカリ:「かまいませんよ」
ユウリ:「そうか、今日は月が綺麗だろうな」
アカリ:「先生、作家が無闇に月を口上に出すのはお勧めできません」
ユウリ:「それは深読みだ、言葉など所詮は揺らめく炎と同じ、触れば火傷し単に過ぎるならば熱を感じる程度だ」
アカリ:「それは自虐ですか?」
ユウリ:「だから深読みするなと言っただろう…今日ぐらいは言葉を曲げずに楽しみたいんだ」
アカリ:「言葉遊びは好きませんので、私もその方が助かります」
ユウリ:「先に始めようとしたのは君だろう」
アカリ:「あら、いつもの先生でしたらあそこから数分は言葉を紆余曲折(うよきょくせつ)させて、詩人が如く話しておりました」
ユウリ:「そうだな、ああ、その通りだ。ぐうの音も出ない的確な指摘だ」
アカリ:「はぁ(ため息)、どうかなされたのですか? 今日の先生は少し変です」
ユウリ:「わかるか?」
アカリ:「分からなければ先生に興味が無いお方だけでしょう」
ユウリ:「そうか、私はこんなにも揺れているのか」
アカリ:「先生の言葉は人と異なります」
ユウリ:「唐突だな」
アカリ:「それが本の上での文字であれば人はそこに感銘を受けるかもしれません」
ユウリ:「これでも作家の端くれだからな」
アカリ:「いいえ、そういう事を言いたいのではありません」
ユウリ:「?」
アカリ:「単刀直入に言わせて頂くと、分かりにくいです。そして遠回しな言い方は相手を不快にさせる事もあるのです」
ユウリ:「そう…なのか?」
アカリ:「ええ、先生は会話をしているのではなく、今の気持ちという本を書いて朗読しているようです」
ユウリ:「すまなかった、気をつけよう」
アカリ:「別に私は嫌だとは言っておりません」
ユウリ:「…君は…面倒くさいな?」
アカリ:「失礼です先生、女性にそういう事を面と向かって言うべきではありません」
ユウリ:「無粋だったか?」
アカリ:「ええ、ですが許しましょう…なにせ今日は月が綺麗ですから」
ユウリ:「君の方こそ作家らしい」
アカリ:「それは褒め言葉ですね」
ユウリ:「外に出ようか、足元が暗いから気をつけなさい」
アカリ:「手を引いてはくれないのですか?」
ユウリ:「そんな歳でも無いだろうに」
アカリ:「今時は女性をエスコートする男性は紳士として人気ですよ?」
ユウリ:「生憎と紳士というのは好かん、あれは自己満足と見栄でしかない」
アカリ:「先生にはそう見えるのですね」
ユウリ:「君にはどう見えるんだ?」
アカリ:「そうですね、先生。お手を」
ユウリ:「これでいいか?」
アカリ:「はい、ありがとうございます」
ユウリ:「…」
アカリ:「では行きましょうか」
ユウリ:「答えを貰っていないのだが」
アカリ:「あら? 言葉とは炎のような物でしょうに、でしたら風に吹かれて消えたのでしょう」
ユウリ:「敵わないな」
アカリ:「お褒めに預かり光栄です」
ユウリ:「褒めてないのだが…いや作家としては褒めるべきなのかもしれない」
アカリ:「悩んでばかりいると夜が明けてしまいますよ」
ユウリ:「…そうだな」
0:外に出る
アカリ:「今日は満月でしたか」
ユウリ:「そのようだ、だが雲もある」
アカリ:「隠れてしまうかもしれませんね」
ユウリ:「まだ続いているのか?」
アカリ:「さて? 何のことでしょうか?」
ユウリ:「とりあえず歩こう」
アカリ:「お供致します」
ユウリ:「…」
アカリ:「…」
ユウリ:「こうして歩いていると思い出す」
アカリ:「何をですか?」
ユウリ:「君と出会った日の事だ」
アカリ:「覚えていてくださったんですね」
ユウリ:「忘れたくとも忘れられない」
アカリ:「あれを運命というのでしょう」
ユウリ:「その表現は好かない」
アカリ:「先生はロマンを語れない古い人間ですから仕方の無い事かもしれません」
ユウリ:「なんだ? 拗ねたのか?」
アカリ:「拗ねておりません」
ユウリ:「別に出会いを悪く思っている訳では無い、あの出会いは運命ではなく、私が望んだのだ」
アカリ:「そうでしたか」
ユウリ:「君が夜にあそこに居る事もしようとしていた事も知っていた」
アカリ:「では、どうして私を」
ユウリ:「君は作家であるとはどういう事か考えた事はあるか?」
アカリ:「そうですね、人は自分の中にしか言葉を見いだせない生き物です」
ユウリ:「ああ」
アカリ:「誰かに何かを言われようと、全てを理解しているつもりならば烏滸(おこ)がましい」
ユウリ:「そうだな」
アカリ:「ですが本は初めから自分の言葉として伝わるのです、それは残酷でもあるのです」
ユウリ:「逃げ場のない一方通行だからな」
アカリ:「そうなのです。結末は変えられない、物語は変わらない、それを読み手は受け入れて本を読むのです」
ユウリ:「私ならば耐え難い」
アカリ:「私もそうなのです」
ユウリ:「君が筆を折ると聞いた時には喜びもした、だが同時に恐れもした」
アカリ:「…そうですか」
ユウリ:「私は知りたかったのだろう…もしも私が作家でなくなったら、いったい何が残るのかを」
アカリ:「わかりましたか?」
ユウリ:「ああ、考える事自体が間違っていた」
アカリ:「やはり先生の言葉はよく分かりませんね。ちゃんと言葉にして教えてください」
ユウリ:「その、だな…無くなる物などありはしなかった。君を見ていると作家に固執する私は愚かに思える」
アカリ:「でも、辞めないのでしょう?」
ユウリ:「ああ、君が私を先生と呼んでくれるのだからな」
アカリ:「そうですか」
ユウリ:「いつかまた、君の本を読みたい」
アカリ:「わかりました、でもひとつだけ約束してください」
ユウリ:「なんだ?」
アカリ:「私は月ではありません。それが酷く残念なのです」
ユウリ:「そうきたか」
アカリ:「もしも月であったのならば、貴方の声で、言葉で、心から綺麗だと言って貰えたのに、私は月を見る度に嫉妬して夜も眠れず、筆を持つことすら叶わないでしょう」
ユウリ:「本当に敵わないな」
アカリ:「先生」
ユウリ:「わかった。私の負けだ…月より君の方が綺麗だ、私はそれを死ぬまで貫こう」
アカリ:「そうですか、それはとても嬉しいですね」
ユウリ:「今日はいい夜だ」
アカリ:「当たり前です。私が先生のお傍に居るのですから」
ユウリ:「これからも末永く頼む」
アカリ:「はい」