台本概要

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タイトル ドラゴンナイト
作者名 火演花-カエンバナ  (@Flower_Actfire)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男3、女2) ※兼役あり
時間 50 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 物語の舞台はとある山間の村。
そこにある日一人の竜騎士が二匹の飛竜を連れてやってきた。
少しずつ竜騎士は村の人々と触れ合うことで自分と向き合っていくのだがそこに呪術師が現れて…

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
竜騎士 118 村にやってきた謎の竜騎士。名前は教えてくれない。24歳。二匹の竜の黒い方はグラーレン、青い方はゼスタ。
アンナ 55 村の教会に住んでいる少女。15歳。
ウルノス 40 村の学者で魔法の使い手。22歳。???と兼ね役
セレン 57 酒場に入り浸っている腕利きの傭兵。25歳。
ガウン 18 村の村長にして元騎士。54歳。呪術師と兼ね役。でも一人で演じても良いと思う。
??? 13 竜騎士の回想にて登場する。ウルノスと兼ね役
呪術師 14 下衆。ガウンと兼ね役。一人で演じても良いと思う。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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竜騎士モノ:金属がぶつかり合う音、人の肉が切り裂かれる感触、兵士の歌う軍歌、大地にまき散らされる血液… 竜騎士モノ:毎日夢に見る。大戦が終わってもう2年。年月が傷ついた人々を癒すことは無い。飛竜に乗りながらそんなことを考える。 竜騎士モノ:俺は戦争で生き残ってしまった。勿論死んだ人々の苦しみも分かるが生き残ってしまった者にも苦しみが付きまとう。 0:竜騎士、休む場所を求めて山間の村の近くの丘に降り立つ 竜騎士:明日は…どうしようか。 0:次の日の朝 アンナ:木の実、木の実、ここら辺の木に生ってたよね。ふふっ、パイにして教会の皆に作ってあげるんだー! アンナ:ん?あそこの丘に居るのって…ドラゴン!?凄い!何でこんな所に居るの?ちょっと近づいちゃおう! 0:竜に近づいてくアンナ アンナ:うわー!黒のドラゴンに青のドラゴン!ん?あ!騎士様だー! 竜騎士:…誰だ! 0:竜騎士、起きてアンナの首を掴み倒し短剣を抜く 竜騎士:はあ、はあ、何だ貴様は!帝国の暗殺者か!?今ここで飛竜の餌にしても良いんだぞ! アンナ:ちょっと待って!私は暗殺者じゃないよ! 竜騎士:なに?…確かに、暗殺者ならばこんな近づき方はしないし見た所武器も持っていない… 竜騎士:…すまない。気が立っていた。ここに居ても何も意味は無いだろう。帰ってくれ… アンナ:ねえ!何でこんな森の奥の丘にドラゴンと一緒に居るの?貴方は誰?もしかして王国の騎士様なの!? 竜騎士:いや…俺は… アンナ:ねえねえ!あなたの名前は何? 竜騎士:教えたく、ない…それと…一人にしてくれないか。 アンナ:え 竜騎士:一人に…なりたいんだ。 アンナ:… 0:アンナは村に帰っていく アンナ:あの人、本当に何者なんだろ… ウルノス:お、アンナちゃん。どうしたんだい?浮かない顔して。 アンナ:あ、ウルノス君。あのね、村の近くの森を抜けると丘が有るでしょ? ウルノス:うんうん。有るねえ。 アンナ:そこでね、ドラゴンと騎士様みたいな人が居てね… ウルノス:ドラゴン!?ええ!?まじ!? 0:ウルノスの叫び声に周囲ざわつく アンナ:ちょ、ちょっとお…ウルノス君…声大きいよお…皆見てるよ? ウルノス:ああ、ごめん。でもさ、ドラゴンだよ?ここら辺じゃ絶対に見れない!この状況にテンションが上がらなきゃあ学者じゃないよ! アンナ:うう、ウルノス君…顔が近いよう… ウルノス:え、あ、ごめんごめん…テンションが上がっちゃって…そっかあ、明日会いに行ってみるかなあ。 アンナ:でも…あの騎士様、私のこと相手にしてくれなかったんだ。一人にしてくれって。 ウルノス:うーんそっか。何か事情が有るんだろうね。ならば尚更一人にはできないよ! アンナ:え ウルノス:よーし、そうなれば今日は早く寝なくちゃ!お休みー! アンナ:ええ!? 竜騎士モノ:この声は…あいつの声か… 竜騎士モノ:捕虜として捕まって…あいつは自ら命を投げ出した… 竜騎士モノ:国の為と言い… 竜騎士モノ:あーあ、傑作だな。 竜騎士モノ:俺はまだ「皆」の幻影を見てるのか… 0:竜騎士、目が覚める ウルノス:やあ、目が覚めたかい? 竜騎士:…! ウルノス:随分深く眠っていたけれど、ゆっくり眠れてたようで何より… 竜騎士:ケスラ!おい、お前生きて… ウルノス:ちょいちょいちょっと待った。ケスラ?とは誰だい?僕の名はウルノス。そこの村の学者さ。 竜騎士:あ…そう…か…。…こんな所に何をしに来た? ウルノス:いやあ、ドラゴンが居るって聞いてね。僕の中の学者魂が黙っちゃいなくてさあ。 ウルノス:それにしてもこのドラゴン、しっかり教育されているねえ。ここまでしつけされているドラゴンを従えてるってなると大分絞れて来るよね。 竜騎士:…何がだ ウルノス:君の身の上だよ。ドラゴンを戦力にしてて、ドラゴン自体は教育済み。そしてその鎧。王国聖騎士のマークが胸に刻印されてある。君、エルネオ王国の騎士だろう? 竜騎士:…ああ。その通りだ。 ウルノス:やっぱりね。そんな騎士様がこんな所で何をしているのさ。今は戦争も落ち着いているとはいえ国全体の治安は悪くなっている。こんなド田舎に来るほど暇じゃないだろう。 竜騎士:…お前は俺に何の用が有る。用が無いなら帰れ。 ウルノス:だから、ドラゴンを見させてもらっているんだよ。ここら辺じゃまず見れないからね。君とのお話はそのついでと言えばついでだけど。 竜騎士:昨日の子供といい、お前といい、あんたらはお節介が過ぎる。俺のこともどうせあの子供から聞いたんだろう?全く余計なことを… ウルノス:彼女はとても純粋な子供さ。君がここら辺では異色すぎるのがいけないんだよ。王国の騎士様でそれと一緒にドラゴンまで着いてきたんじゃ子供の人気者になることは馬鹿でも分かるんじゃないか。 竜騎士:ちっ、余計なお世話だ。 ウルノス:まあ、何が有ったのかは知らないけれどゆっくりしていきなよ。考えたいことが君にも有るだろうから僕はこれでお暇するよ。 0:ウルノスは村へ帰っていく。 竜騎士:それにしても…似ている奴だった。ケスラ… 0:村にて アンナ:あ、ウルノス君、お帰り!騎士様はどうだった? ウルノス:君に聞いた様子と変わらない様子だったよ。見たところエルネオの騎士なんだと思う。エルネオって言ったら、この間大きい戦争が有ったばかりだ。おそらく彼はその戦争に参加していて、心に大きな傷を負っているんだと思うよ。 アンナ:そっか…あの騎士様、心が傷付いちゃってるんだね… ウルノス:ああ。あれを元気づけるのは相当厳しいと思うけど。 アンナ:いや、良いこと思いついちゃった。それじゃあウルノス君またねー! 0:村の酒場 アンナ:やっぱりここに居た! セレン:ん?アンナちゃんじゃない。こんな所に何しに来たの? アンナ:ねえねえセレンー。村の近くの丘に騎士様が居るのは知ってる? セレン:そういえば今日来てた客が何か言ってたわね。二匹ドラゴンを連れているんだってね。それがどうかした? アンナ:ちょっと私と一緒に騎士様の所まで来てほしいの。 セレン:うーん、別に良いけれども行って何をするの?騎士なんてつまらない人ばかりよ?それに私が行った所で何か力を貸せるとは思えないし… アンナ:セレンにはお話をしてあげてほしいの。傭兵だって騎士と同じように戦いに身を置いているでしょう?その騎士様、戦争で心が傷付いているみたいで… セレン:成程ね。事情は分かったわ。そういうことなら私も一緒に行ってあげるけれどあんまり期待しないでよ? アンナ;ありがとー!それじゃあ明日の朝に教会で会おうね! セレン:騎士、ねえ。話すのなんてもう何年ぶりになるのかしら。 竜騎士モノ:また、いつもの夢か。 竜騎士モノ:俺は今まで何人殺しただろうか。 竜騎士モノ:何人が俺のせいで涙を流しただろうか。 竜騎士モノ:今でも忘れられない。俺が焼き払った家屋から赤子を抱きかかえた少女が出てきたのを。 竜騎士モノ:俺は騎士でも何でもない。ただの人殺しだろう。 0:竜騎士目覚める 竜騎士:…朝か セレン:へえ、この人があなたが言ってた騎士サマ? アンナ:そうだよー。あ、おはよう! 竜騎士:お前、また来たのか。今度は何の用だ。 アンナ:私はご飯を届けに来ただけ。だから今日はこの人とお話ししてほしいの。 竜騎士:は? アンナ:はい、ここに置いておくね。ちゃんと食べるんだよ?私は二人が喋っている間、ドラゴンと遊んでるねー! 竜騎士:おい、待て!余計なお世話だと… 0:セレン、竜騎士の隣に座る セレン:隣、失礼するわね。 竜騎士:…お前は何の用なんだ。 セレン:あの子に貴方と話してあげてって言われたの。 竜騎士:話すことなどない。 セレン:…貴方、エルネオの騎士なんでしょう?この前の大戦にも参加したのよね? 竜騎士:そんなことをお前に教えてやる意味は無い。 セレン:いいえ、有るわ。 竜騎士:は?どこにそんな根拠が… セレン:私も…王国側で傭兵として参加したから。 竜騎士:なっ、 セレン:だから知っているの。あの戦争の酷い有様を。 竜騎士:…お前は、どこで戦っていた。 セレン:ライトの街よ。騎士と傭兵の入り混じった遊撃部隊でね、実力者ばかりが集まってたし皆仲が良かった。 竜騎士:知っている。しかしあそこは特に戦況が悪かったはず。よく生きて帰って来たな。 セレン:…私以外は皆死んだわ。 竜騎士:なに? セレン:…敵軍の魔道士たちが共鳴魔法で大規模な攻撃を行ったの。数人の傭兵仲間たちと逃げ続けてたんだけれど、いつの間にか皆いなくなってて…私は遊撃部隊最後の生き残りとしてそのまま本隊まで報告に行った。 竜騎士:それで? セレン:契約を私の方から終了した。金はもらえなかったけれど首が繋がってるだけ良しとしたわ。 竜騎士:これだから傭兵は。お前らは良いよな、逃げようと思えばいつでも逃げれる。 セレン:あはは、酷い皮肉ね。…貴方はどこで戦ってたの? 竜騎士:………イライド海岸。 セレン:イライドって、最前線じゃない!そんな場所で戦ってたの? 竜騎士:…ああ。 セレン:一人で? 竜騎士:いいや、相棒が居た。 セレン:そう。その相棒は今は? 0:竜騎士、苦い顔をする。セレンはすぐさま察知して聞くのを辞める。 セレン:いや、やっぱり答えなくて良いわ。こんなことを聞くべきじゃなかったわね。 竜騎士:構わないさ。むしろ聞いて俺を馬鹿だと笑ってくれよ。 セレン:…… 竜騎士:そいつは腕の良い剣士でな。身体は小さいが動きの速い奴だった。士官学校時代からの友で騎士見習いの時からずっと肩を並べて戦い抜いてきたんだよ。きっと俺たちは死ぬまで一緒だと、そんな歌劇みたいに気障なことを言い合ったりもしたさ。 セレン:…それで? 竜騎士:先の大戦でそいつはあっけなく死んだよ。敵側の捕虜になっちまってな。国のため情報を落とすまいと敵から武器を奪って腹を斬ったって後に残党に聞いた。 セレン:そう…立派な最期だったのね。 竜騎士:立派?はっ、馬鹿言えよ。そいつは、友との約束の一つも守れない馬鹿だよ。なーにが国のためだよ。ダチを遺して一人逝くような奴に…国が守れるかってんだよ。 セレン:… 竜騎士:なあ、お前はどう思ったんだ? セレン:え… 竜騎士:同じ隊の仲間が死んだときにどう思った? セレン:…別に何とも思わなかった…ていうのが正直な気持ちだったかしら。傭兵なんて仕事をしてれば昨日酒を飲んだ仲間が次の日見当たらないなんてこと、もう何回も経験していたから。 竜騎士:そうか。そんなものなんだな。 セレン:その相棒が死んだのに耐えられなくて、ここに来たのかしら? 竜騎士:…それも有るな。ここは大して戦争の影響も受けてないからな。 セレン:… 竜騎士:… セレン:まあ、話してくれてありがとう。おかげで貴方のことがちょっと分かったわ。 竜騎士:… セレン:アンナちゃんのご飯、ちゃんと食べなよ。あの子が作るご飯、凄く美味しいんだから。 竜騎士:… セレン:それじゃあね。 セレン:さ、帰りましょうか。 アンナ:え?もう良いの? セレン:うん。あの人がどんな人か分かったから。 アンナ:そっか。騎士様、またね? 竜騎士:… 0:次の日 アンナ:おはよう。 竜騎士:… アンナ:ご飯、食べてくれたんだ。 竜騎士:… アンナ:今日、村長さんが来るって言ってたよ。 竜騎士:なに? アンナ:この村の村長さんね、実は昔は騎士だったの。だから貴方の話を熱心に聞いてくれると思うよ? 竜騎士:お前は…俺に何故そこまでする。昨日の女の件や学者の奴の件もだ。俺を何故一人にしない。 アンナ:私は、一人がどんなに辛いか分かるから。 アンナ:私ね、教会で住ませてもらってるんだ。お父さんもお母さんも私が小さい頃に死んじゃって… アンナ:今はすっごく楽しいけれどね、昔はずっと一人で悲しかったの。だから… 竜騎士:だからお前は俺に構ってくるのか。 アンナ:うん。 竜騎士:…そうか…お前みたいなやつも…中には居るんだな。 アンナ:ん?何か言った? 竜騎士:いいや。お前、戦争ってどう思う? アンナ:え、うーん…きっとね、私がどうこう言えるものでは無いと思うの。 アンナ:戦争って、違う考え方の人がぶつかるから起きるんでしょ?どちらも悪いとも言えないし良いとも言えない。だから戦争はいつまでも起きているし、苦しむ人が沢山居るんだと思うよ。 竜騎士:…ああ、その通りだ。戦争に悪ってもんは存在しない。だから、自分のやってることは正しいのかなんて愚門も良い所だ。 竜騎士:だが、騎士として、兵士として戦う者たちは常に自分の心の中で苦しんでいる。己のやっていることが正義なのか否かと…お前は、人を殺した奴が天国に行けると思うか? アンナ:…ううん、そうは思わない。 アンナ:やっぱり人を殺すのはダメなことだよ。そこにどんなに立派な志しがあっても、人を殺したっていうことは永遠に罪になるんだと思う。 竜騎士:はっ、もっともだな。 アンナ:でも…自分が殺してしまった人の分までただただ生きるのが、大事なんじゃないかなあ。 アンナ:じゃあ、私はそろそろ帰るね。 竜騎士:…ああ。 0:昼頃、村長が来る ガウン:そこの村の村長をやっているガウンだ。失礼するぞ。 竜騎士:…あなたは、騎士をやっていたと聞いた。 ガウン:うむ。その通りだ。話に聞く限りでは貴公も騎士だと聞いたのだが、その姿を見るに貴公はただの騎士ではないな。 竜騎士:…やはり分かるか。 ガウン:連れているドラゴンを見れば分かるぞ。わしが予想するに貴公、「裂空」の騎士ではないか? 竜騎士:!そこまで分かるんだな。 ガウン:当たり前だ。わしは王国に四十年仕えた身。当時の裂空とも面識があるからな。 竜騎士:…一つ、聞きたいことが有るんだ。 ガウン:申してみよ。 竜騎士:騎士である以上、人をあなたも沢山殺しただろう。どのような思いで戦っていた? ガウン:…貴公は、なぜ騎士になった? 竜騎士:…どこにそんなことを聞く必要が。 ガウン:良いから答えよ。 竜騎士:…何だ? ガウン:なに? 竜騎士:思い…出せないんだ。俺は…何で騎士になったんだ? ガウン:ふっ、はっはっはっは!騎士になった理由さえ忘れてしまったのか。成程なあ。貴公が戦うことに悩みを抱えている理由はそこに有ると思うぞ。わしの場合は、養わなくてはならない家族が居ってな。家族のことを思えば、槍を振るうのも苦じゃなかった。 ガウン:何か理由がなければわざわざ騎士にはならんだろう。まずは騎士になった理由を思い出し、己の戦う理由を見出すことから始めることだ。 竜騎士:…先輩からのご助言、誠に感謝する。 ガウン:参考になったのなら嬉しく思うぞ。何か用が有ったらいつでも村に降りてくると良い。村の者は皆暖かい者ばかりだからな。それでは、わしは失礼するよ。今はここでゆっくりと考えることだ。 0:村長、帰っていく 竜騎士:俺が、戦う…理由… 0:竜騎士、騒がしさに目を覚ます 竜騎士:ん?どうした。グラーレン。…人が来る? アンナ:はあ、はあ、はあ。 0:アンナ、物凄い勢いで走ってくる。 竜騎士:どうした。そんなに慌てて。 アンナ:魔物と…数人呪術師が現れて… 竜騎士:何? アンナ:今、セレンとかウルノス君とか、村長さんが戦ってるんだけれど、やばいの! 竜騎士:…それで、俺にどうしろと? アンナ:お願い…助けて… 竜騎士:… アンナ:敵が凄く多いの…このままじゃ村が大変なことになっちゃう! 竜騎士:…俺は、もう戦いたくない… アンナ:はあ、はあ、え? 竜騎士:武器を持つだけで、腕が震えるんだよ!またこの俺の力で、誰かが苦しむって思うと…怖いんだ! アンナ:… 竜騎士:だから…無理だ… 0:アンナ、背を向ける竜騎士に泣きつくように抱き着く アンナ:おね…がい…村の皆が居なくなったら…私は…また一人になっちゃう… 竜騎士:っ…! アンナ:もう…一人は嫌だ。でも、私は…皆を守ることができない… 竜騎士:うっ… アンナ:この村で戦える人は少ないの。皆を守れる人は、貴方しか居ない。 竜騎士:つっ………… 0:竜騎士心の中 ???:やあ、困ってるね。 竜騎士:… ???:君は、士官学校時代困ってる人が見過ごせない性格だった。 竜騎士:… ???:あの頃の君なら今の状況、絶対助けに行くよね。 竜騎士:もう、あの時の俺は居ない。 ???:嘘をつけよ。君の心のどこかに絶対居るはずだ。あの頃の君が。 竜騎士:お前が、死んでしまったから俺はこうなってるんだよ!お前さえ…生きていてくれたら…俺は… ???:…ごめんね。死んでしまって。 竜騎士:死者から謝罪なんて聞きたくねえよ。 ???:確かに君の中で、僕の存在がどんなに大きなものだったかは分かってたんだ。 ???:でも僕はこうも思ったんだ。誰よりも強い君なら、僕が居なくなってもその悲しみを乗り越えて、戦い続けてくれるって。 ???:君は戦う理由が分からないんだよね? 竜騎士:… ???:だったら、僕の分まで…死んだ人の分まで生きることを戦う理由にしてほしい。 ???:君が屍の山を積み上げていくごとに、君の罪も重くなっていく。でも、人を殺した以上は君は生きなければならない。他人の人生を奪った以上、君はその分生き抜くんだ。 ???:そして、いつか死んでしまった時には、もう一度会おう。一緒に地獄でまた戦うんだ。地獄の悪魔相手に、僕たちのコンビネーションを見せてやるんだよ! 竜騎士:…はっ、はははは! ???:おいおい、どうしたんだよ。 竜騎士:分かったよ。ああ、分かったよ。戦い抜いてやるよ!そうだな。もう地獄行きは確定だしな。その分、殺したやつの分とにかく、ゴキブリのように生きて生きて生きて生き恥さらしてやるよお! ???:ふふっ、あはは!そうさ。その意気だよ。やっぱり君にはそういうテンションが合う。 竜騎士:ああ。何か、すっきりしたわ。お前のお陰で。 ???:いいや、僕だけの力じゃない。 竜騎士:え? ???:この村の人たちの言葉が、君に僕と向き合う力をくれたから僕はこうやって君と話すことができた。 ???:今の君なら、きっと戦える。「裂空」の力、みせてやれよ。 竜騎士:…ああ。お前も、地獄で首を長ーくして待ってろよ。…先に死んでんじゃねえぞ? ???:ははっ!地獄で死ぬって何だよ。 竜騎士:それもそうだな。…しばらくの間、じゃあな。 ???:うん。バイバイ。____。 竜騎士:ああ、「ケスラ」___ 0:村では セレン:くっそ、倒しても倒しても減らない…! ウルノス:ああ、こりゃあめんどくさいね。まるで軍と同じだ。大丈夫ですか?村長? ガウン:なあに、この程度の量の軍勢は何度も相手にしておるわあ! ウルノス:さすがですね。しっかし、こんな状況じゃなければなあ。僕の新型魔法で一発なんだけど。 セレン:え?あんた…この量の敵をいっぺんに殺れる秘策でもあるの? ウルノス:無いことは無いけど、その為には村の人たちに一か所に避難してもらう必要がある。 セレン:面倒な魔法ね!そんなの無茶だわ。ここで食い止めるので精一杯なんだし。 ガウン:おい、お主ら!何かが飛んでくるぞ! 0:ドラゴンの咆哮が響き渡る ウルノス:あれは…! 竜騎士:うらあ! 0:魔物たち、一気にドラゴンによって蹴散らされる。 ガウン:裂空の騎士よ。貴公、戦えるようになったのか。 竜騎士:ああ。友が助けてくれた。 セレン:そう…例の彼が? 竜騎士:…そうさ。 ウルノス:竜騎士君、復活直後で悪いんだがある秘策が思いついたんだ。頼みが有るんだけど良いかい? 竜騎士:一体それは何だ? ウルノス:君には、中央に有る噴水に村人たちを集めてほしいんだ。完了したら指笛で合図をくれ。音が聞こえたら、僕が村中に居る魔物たちを魔法で一掃する。 竜騎士:分かった。では、行ってくる。 0:竜騎士、飛び立つ。 セレン:ふふ、戦ってる方がかっこいいじゃない。 ガウン:ほう、タイプなのか?ああいう男が。 セレン:まあ、嫌いじゃないわ。 竜騎士:ゼスタ、お前は村内に居る魔物たちを見つけたらすぐに殺せ。俺とグラーレンは人々を誘導してくる。頼んだぞ! 0:ゼスタ、分かったといわんばかりにまばたきをする。竜騎士、次々に避難をさせて遂に人々の誘導に成功。 竜騎士:よし、避難は完了したな。合図だ。 0:指笛の音がウルノスに聞こえる。 ウルノス:!準備は完了したね。行くぞ!天より落ちる神の怒号を食らえ!レッド・サンダー! 0:魔物たちに次々と雷が落ちる。 ウルノス:よっしゃ。大成功って所かな。 ガウン:あとはこの軍勢をけしかけた呪術師共だ。早急に蹴散らしてくれ… セレン:!村長、後ろ! 0:突然呪術師たち現れガウンは魔法によって吹き飛ばされる。 ガウン:ぐう…きさ…まら… セレン:村長!ちっ、 0:セレン敵を確認。相手は五人に対してこちらは二人。 呪術師:まったく、世話の焼けるものよ…大して兵士もおらぬちっぽけな村にここまで苦戦するとは… 呪術師:しかし、そこの童よ。先ほどは中々優れた魔道じゃたぞ。どうじゃ、わしらの仲間とならんか? ウルノス:はははっ、そんな糞みたいなお誘い、かえって恐縮だよ。こっちから願い下げだから消えな。 呪術師:ほほう。ではお主にも消えてもらう。 ウルノス:ぐっ、 0:ウルノス、魔法をよけるが他の呪術師の追撃が命中する ウルノス:卑怯だね、五対二なんて。 呪術師:我々に公平性を求める時点でお門違いよ。 セレン:ウルノス、勝算は? ウルノス:いやあ、数の暴力には敵わないなあ。 セレン:分かった。 0:セレン、何かを決意し一気に間合いを詰める。二人を瞬時に斬りつける。 セレン:お前も! 呪術師:甘いわ。 0:呪術師、障壁魔法を使い攻撃を防ぐ。すぐさま他の呪術師が攻撃をし、セレンは倒れる。 セレン:うっ…く… 呪術師:ほほう。今ので死なぬか。お主、魔道の適応能力が有るかもな。 ウルノス:はあ、僕だけが立ってられる感じかあ。やっばいな。 呪術師:もう一度聞こう。わしらの仲間になれば命は助けよう。 ウルノス:まあ、しょうがないかあ…良いさ。君らの仲間になろう。 呪術師:であれば手始めにそこで倒れている女を殺せ。 0:ウルノス、セレンに近づいていく。 セレン:っつ… ウルノス:ふう………ウインド。 0:ウルノス、二人の魔導士に攻撃。 ウルノス:ばああああか!本気で仲間になるわけ無いだろ!お前も、死ね! 呪術師:ダークアンク。 ウルノス:くっ…く…そ… 呪術師:全く、愚かなものよ。中々良い才能を持っていたが、残念だな。さらばだ。 ウルノス:はっ、あんたがな。 0:すると辺り一面に飛竜の咆哮が響き渡る。 呪術師:な…に? 竜騎士:敵は一人…大分減らしてくれてたっぽいな。 呪術師:くっ、魔物たちの様子がどうもおかしいと思っていたが貴様のせいだったか! 竜騎士:グラーレン、やれ。 0:声高々に叫ぶグラーレン。するとダークアンクの術が解ける。 呪術師:なに!?わしの魔術が…使えん…!? 竜騎士:はっ、知らねえのか?黒竜の咆哮には魔封じの効果があるんだよ。これであんたは魔法の使えないただの一般人だ。 呪術師:ま、待て。話し合おうではないか。せめて命だけは… 竜騎士:下衆が、死ね。 呪術師:ぐうううううううううううああああああああああああああああああああ! 0:戦いが終わり多少の復興が進んだ村の酒場 アンナ:本当にありがとう。騎士様! 竜騎士:別に俺はほとんど何もできていない。感謝ならウルノスと、セレンと、ガウン殿に言え。 ガウン:いや、わしも老いを感じた戦いだったよ。貴公が居なければ負けていた戦いだった。村の長としても感謝を言いたい。 ウルノス:そうそう。僕も中々厳しい戦いだったし。君のお陰としか言えないよ。一番おいしい所を貰っていく君の強欲さもうかがえたしね。 0:そうこう話しているうちにウルノスとガウンの二人は他の村人と話し、アンナは店の手伝いに向かう。セレンと二人になる。 セレン:改めて、お疲れ様。 竜騎士:ああ、そちらこそ。 セレン:…この先、どうするの? 竜騎士:王都に戻る。お前たちと話して俺も戦う理由を作ることができたからな。もう一度、裂空として戦ってくるさ。 セレン:そっか………ねえ、私も連れてってよ。 竜騎士:は?何で。 セレン:もう少し、あなたと一緒に居たいなって思って。 竜騎士:だからって何故俺がお前と一緒に… セレン:貴方の戦う理由を探すことを手伝った報酬よ。お願い。 竜騎士:…はあ、分かった。連れて行こう。 セレン:ふふ。ありがとう。 0:竜騎士、旅立ちの日 ガウン:裂空よ、そなたは強い。これからも戦う理由を胸に戦い続けよ。貴公の活躍がここまで流れてくるのを、楽しみに待っているからな。 竜騎士:はい。あなたから教えられたことを胸に、これからも精進してまいります。 ウルノス:たまには、遊びに来てくれても良いんだからね。君にも、君のドラゴンにもまだまだ聞きたいことが沢山あるからさ。 竜騎士:そうだな。またいつか縁が有れば、その時は。 0:アンナ、ただ一人悲しそうな顔をしている。 竜騎士:お前にしては珍しく、暗いな。 アンナ:だって、もう会えないから… 竜騎士:…アンナ。お前の殺しや、戦争への考え方は、人として忘れてはならないことだ。それがその年で分かっているのは、お前が賢い証拠と言えるだろう。だから胸を張れ。どうかその気持ちを忘れないで欲しい。 アンナ:うん。 竜騎士:よし。それじゃ、そろそろ出るぞ。 セレン:分かった。 竜騎士:飛竜には乗れるのか? セレン:昔、仲間に教えてもらったから大丈夫。よろしくね。ゼスタ。 竜騎士:よし、それじゃ、世話になった。いつになるかは分からないが、また。 アンナ:…ま、待って! 竜騎士:ん?まだ何かあるのか? アンナ:あなたの、名前を教えて! 竜騎士:そりゃあ裂空… アンナ:それは異名なんでしょう?本当の名前。 竜騎士:ああ、そういうことか。俺の名前は______ 0:竜騎士、セレンが飛び去った後 アンナ:ねえ、ウルノス君。 ウルノス:ん? アンナ:あれって花の名前だよね。 ウルノス:ああ。そうだね。確か、花言葉は変わらぬ思い、光輝、温順そして… ウルノス:「飛翔」。 セレン:ねえ。 竜騎士:ん? セレン:あなたってそんな名前だったのね。 竜騎士:まあな。 セレン:これからよろしくね。「ローダンセ」。 ローダンセ:…ああ。よろしく。

竜騎士モノ:金属がぶつかり合う音、人の肉が切り裂かれる感触、兵士の歌う軍歌、大地にまき散らされる血液… 竜騎士モノ:毎日夢に見る。大戦が終わってもう2年。年月が傷ついた人々を癒すことは無い。飛竜に乗りながらそんなことを考える。 竜騎士モノ:俺は戦争で生き残ってしまった。勿論死んだ人々の苦しみも分かるが生き残ってしまった者にも苦しみが付きまとう。 0:竜騎士、休む場所を求めて山間の村の近くの丘に降り立つ 竜騎士:明日は…どうしようか。 0:次の日の朝 アンナ:木の実、木の実、ここら辺の木に生ってたよね。ふふっ、パイにして教会の皆に作ってあげるんだー! アンナ:ん?あそこの丘に居るのって…ドラゴン!?凄い!何でこんな所に居るの?ちょっと近づいちゃおう! 0:竜に近づいてくアンナ アンナ:うわー!黒のドラゴンに青のドラゴン!ん?あ!騎士様だー! 竜騎士:…誰だ! 0:竜騎士、起きてアンナの首を掴み倒し短剣を抜く 竜騎士:はあ、はあ、何だ貴様は!帝国の暗殺者か!?今ここで飛竜の餌にしても良いんだぞ! アンナ:ちょっと待って!私は暗殺者じゃないよ! 竜騎士:なに?…確かに、暗殺者ならばこんな近づき方はしないし見た所武器も持っていない… 竜騎士:…すまない。気が立っていた。ここに居ても何も意味は無いだろう。帰ってくれ… アンナ:ねえ!何でこんな森の奥の丘にドラゴンと一緒に居るの?貴方は誰?もしかして王国の騎士様なの!? 竜騎士:いや…俺は… アンナ:ねえねえ!あなたの名前は何? 竜騎士:教えたく、ない…それと…一人にしてくれないか。 アンナ:え 竜騎士:一人に…なりたいんだ。 アンナ:… 0:アンナは村に帰っていく アンナ:あの人、本当に何者なんだろ… ウルノス:お、アンナちゃん。どうしたんだい?浮かない顔して。 アンナ:あ、ウルノス君。あのね、村の近くの森を抜けると丘が有るでしょ? ウルノス:うんうん。有るねえ。 アンナ:そこでね、ドラゴンと騎士様みたいな人が居てね… ウルノス:ドラゴン!?ええ!?まじ!? 0:ウルノスの叫び声に周囲ざわつく アンナ:ちょ、ちょっとお…ウルノス君…声大きいよお…皆見てるよ? ウルノス:ああ、ごめん。でもさ、ドラゴンだよ?ここら辺じゃ絶対に見れない!この状況にテンションが上がらなきゃあ学者じゃないよ! アンナ:うう、ウルノス君…顔が近いよう… ウルノス:え、あ、ごめんごめん…テンションが上がっちゃって…そっかあ、明日会いに行ってみるかなあ。 アンナ:でも…あの騎士様、私のこと相手にしてくれなかったんだ。一人にしてくれって。 ウルノス:うーんそっか。何か事情が有るんだろうね。ならば尚更一人にはできないよ! アンナ:え ウルノス:よーし、そうなれば今日は早く寝なくちゃ!お休みー! アンナ:ええ!? 竜騎士モノ:この声は…あいつの声か… 竜騎士モノ:捕虜として捕まって…あいつは自ら命を投げ出した… 竜騎士モノ:国の為と言い… 竜騎士モノ:あーあ、傑作だな。 竜騎士モノ:俺はまだ「皆」の幻影を見てるのか… 0:竜騎士、目が覚める ウルノス:やあ、目が覚めたかい? 竜騎士:…! ウルノス:随分深く眠っていたけれど、ゆっくり眠れてたようで何より… 竜騎士:ケスラ!おい、お前生きて… ウルノス:ちょいちょいちょっと待った。ケスラ?とは誰だい?僕の名はウルノス。そこの村の学者さ。 竜騎士:あ…そう…か…。…こんな所に何をしに来た? ウルノス:いやあ、ドラゴンが居るって聞いてね。僕の中の学者魂が黙っちゃいなくてさあ。 ウルノス:それにしてもこのドラゴン、しっかり教育されているねえ。ここまでしつけされているドラゴンを従えてるってなると大分絞れて来るよね。 竜騎士:…何がだ ウルノス:君の身の上だよ。ドラゴンを戦力にしてて、ドラゴン自体は教育済み。そしてその鎧。王国聖騎士のマークが胸に刻印されてある。君、エルネオ王国の騎士だろう? 竜騎士:…ああ。その通りだ。 ウルノス:やっぱりね。そんな騎士様がこんな所で何をしているのさ。今は戦争も落ち着いているとはいえ国全体の治安は悪くなっている。こんなド田舎に来るほど暇じゃないだろう。 竜騎士:…お前は俺に何の用が有る。用が無いなら帰れ。 ウルノス:だから、ドラゴンを見させてもらっているんだよ。ここら辺じゃまず見れないからね。君とのお話はそのついでと言えばついでだけど。 竜騎士:昨日の子供といい、お前といい、あんたらはお節介が過ぎる。俺のこともどうせあの子供から聞いたんだろう?全く余計なことを… ウルノス:彼女はとても純粋な子供さ。君がここら辺では異色すぎるのがいけないんだよ。王国の騎士様でそれと一緒にドラゴンまで着いてきたんじゃ子供の人気者になることは馬鹿でも分かるんじゃないか。 竜騎士:ちっ、余計なお世話だ。 ウルノス:まあ、何が有ったのかは知らないけれどゆっくりしていきなよ。考えたいことが君にも有るだろうから僕はこれでお暇するよ。 0:ウルノスは村へ帰っていく。 竜騎士:それにしても…似ている奴だった。ケスラ… 0:村にて アンナ:あ、ウルノス君、お帰り!騎士様はどうだった? ウルノス:君に聞いた様子と変わらない様子だったよ。見たところエルネオの騎士なんだと思う。エルネオって言ったら、この間大きい戦争が有ったばかりだ。おそらく彼はその戦争に参加していて、心に大きな傷を負っているんだと思うよ。 アンナ:そっか…あの騎士様、心が傷付いちゃってるんだね… ウルノス:ああ。あれを元気づけるのは相当厳しいと思うけど。 アンナ:いや、良いこと思いついちゃった。それじゃあウルノス君またねー! 0:村の酒場 アンナ:やっぱりここに居た! セレン:ん?アンナちゃんじゃない。こんな所に何しに来たの? アンナ:ねえねえセレンー。村の近くの丘に騎士様が居るのは知ってる? セレン:そういえば今日来てた客が何か言ってたわね。二匹ドラゴンを連れているんだってね。それがどうかした? アンナ:ちょっと私と一緒に騎士様の所まで来てほしいの。 セレン:うーん、別に良いけれども行って何をするの?騎士なんてつまらない人ばかりよ?それに私が行った所で何か力を貸せるとは思えないし… アンナ:セレンにはお話をしてあげてほしいの。傭兵だって騎士と同じように戦いに身を置いているでしょう?その騎士様、戦争で心が傷付いているみたいで… セレン:成程ね。事情は分かったわ。そういうことなら私も一緒に行ってあげるけれどあんまり期待しないでよ? アンナ;ありがとー!それじゃあ明日の朝に教会で会おうね! セレン:騎士、ねえ。話すのなんてもう何年ぶりになるのかしら。 竜騎士モノ:また、いつもの夢か。 竜騎士モノ:俺は今まで何人殺しただろうか。 竜騎士モノ:何人が俺のせいで涙を流しただろうか。 竜騎士モノ:今でも忘れられない。俺が焼き払った家屋から赤子を抱きかかえた少女が出てきたのを。 竜騎士モノ:俺は騎士でも何でもない。ただの人殺しだろう。 0:竜騎士目覚める 竜騎士:…朝か セレン:へえ、この人があなたが言ってた騎士サマ? アンナ:そうだよー。あ、おはよう! 竜騎士:お前、また来たのか。今度は何の用だ。 アンナ:私はご飯を届けに来ただけ。だから今日はこの人とお話ししてほしいの。 竜騎士:は? アンナ:はい、ここに置いておくね。ちゃんと食べるんだよ?私は二人が喋っている間、ドラゴンと遊んでるねー! 竜騎士:おい、待て!余計なお世話だと… 0:セレン、竜騎士の隣に座る セレン:隣、失礼するわね。 竜騎士:…お前は何の用なんだ。 セレン:あの子に貴方と話してあげてって言われたの。 竜騎士:話すことなどない。 セレン:…貴方、エルネオの騎士なんでしょう?この前の大戦にも参加したのよね? 竜騎士:そんなことをお前に教えてやる意味は無い。 セレン:いいえ、有るわ。 竜騎士:は?どこにそんな根拠が… セレン:私も…王国側で傭兵として参加したから。 竜騎士:なっ、 セレン:だから知っているの。あの戦争の酷い有様を。 竜騎士:…お前は、どこで戦っていた。 セレン:ライトの街よ。騎士と傭兵の入り混じった遊撃部隊でね、実力者ばかりが集まってたし皆仲が良かった。 竜騎士:知っている。しかしあそこは特に戦況が悪かったはず。よく生きて帰って来たな。 セレン:…私以外は皆死んだわ。 竜騎士:なに? セレン:…敵軍の魔道士たちが共鳴魔法で大規模な攻撃を行ったの。数人の傭兵仲間たちと逃げ続けてたんだけれど、いつの間にか皆いなくなってて…私は遊撃部隊最後の生き残りとしてそのまま本隊まで報告に行った。 竜騎士:それで? セレン:契約を私の方から終了した。金はもらえなかったけれど首が繋がってるだけ良しとしたわ。 竜騎士:これだから傭兵は。お前らは良いよな、逃げようと思えばいつでも逃げれる。 セレン:あはは、酷い皮肉ね。…貴方はどこで戦ってたの? 竜騎士:………イライド海岸。 セレン:イライドって、最前線じゃない!そんな場所で戦ってたの? 竜騎士:…ああ。 セレン:一人で? 竜騎士:いいや、相棒が居た。 セレン:そう。その相棒は今は? 0:竜騎士、苦い顔をする。セレンはすぐさま察知して聞くのを辞める。 セレン:いや、やっぱり答えなくて良いわ。こんなことを聞くべきじゃなかったわね。 竜騎士:構わないさ。むしろ聞いて俺を馬鹿だと笑ってくれよ。 セレン:…… 竜騎士:そいつは腕の良い剣士でな。身体は小さいが動きの速い奴だった。士官学校時代からの友で騎士見習いの時からずっと肩を並べて戦い抜いてきたんだよ。きっと俺たちは死ぬまで一緒だと、そんな歌劇みたいに気障なことを言い合ったりもしたさ。 セレン:…それで? 竜騎士:先の大戦でそいつはあっけなく死んだよ。敵側の捕虜になっちまってな。国のため情報を落とすまいと敵から武器を奪って腹を斬ったって後に残党に聞いた。 セレン:そう…立派な最期だったのね。 竜騎士:立派?はっ、馬鹿言えよ。そいつは、友との約束の一つも守れない馬鹿だよ。なーにが国のためだよ。ダチを遺して一人逝くような奴に…国が守れるかってんだよ。 セレン:… 竜騎士:なあ、お前はどう思ったんだ? セレン:え… 竜騎士:同じ隊の仲間が死んだときにどう思った? セレン:…別に何とも思わなかった…ていうのが正直な気持ちだったかしら。傭兵なんて仕事をしてれば昨日酒を飲んだ仲間が次の日見当たらないなんてこと、もう何回も経験していたから。 竜騎士:そうか。そんなものなんだな。 セレン:その相棒が死んだのに耐えられなくて、ここに来たのかしら? 竜騎士:…それも有るな。ここは大して戦争の影響も受けてないからな。 セレン:… 竜騎士:… セレン:まあ、話してくれてありがとう。おかげで貴方のことがちょっと分かったわ。 竜騎士:… セレン:アンナちゃんのご飯、ちゃんと食べなよ。あの子が作るご飯、凄く美味しいんだから。 竜騎士:… セレン:それじゃあね。 セレン:さ、帰りましょうか。 アンナ:え?もう良いの? セレン:うん。あの人がどんな人か分かったから。 アンナ:そっか。騎士様、またね? 竜騎士:… 0:次の日 アンナ:おはよう。 竜騎士:… アンナ:ご飯、食べてくれたんだ。 竜騎士:… アンナ:今日、村長さんが来るって言ってたよ。 竜騎士:なに? アンナ:この村の村長さんね、実は昔は騎士だったの。だから貴方の話を熱心に聞いてくれると思うよ? 竜騎士:お前は…俺に何故そこまでする。昨日の女の件や学者の奴の件もだ。俺を何故一人にしない。 アンナ:私は、一人がどんなに辛いか分かるから。 アンナ:私ね、教会で住ませてもらってるんだ。お父さんもお母さんも私が小さい頃に死んじゃって… アンナ:今はすっごく楽しいけれどね、昔はずっと一人で悲しかったの。だから… 竜騎士:だからお前は俺に構ってくるのか。 アンナ:うん。 竜騎士:…そうか…お前みたいなやつも…中には居るんだな。 アンナ:ん?何か言った? 竜騎士:いいや。お前、戦争ってどう思う? アンナ:え、うーん…きっとね、私がどうこう言えるものでは無いと思うの。 アンナ:戦争って、違う考え方の人がぶつかるから起きるんでしょ?どちらも悪いとも言えないし良いとも言えない。だから戦争はいつまでも起きているし、苦しむ人が沢山居るんだと思うよ。 竜騎士:…ああ、その通りだ。戦争に悪ってもんは存在しない。だから、自分のやってることは正しいのかなんて愚門も良い所だ。 竜騎士:だが、騎士として、兵士として戦う者たちは常に自分の心の中で苦しんでいる。己のやっていることが正義なのか否かと…お前は、人を殺した奴が天国に行けると思うか? アンナ:…ううん、そうは思わない。 アンナ:やっぱり人を殺すのはダメなことだよ。そこにどんなに立派な志しがあっても、人を殺したっていうことは永遠に罪になるんだと思う。 竜騎士:はっ、もっともだな。 アンナ:でも…自分が殺してしまった人の分までただただ生きるのが、大事なんじゃないかなあ。 アンナ:じゃあ、私はそろそろ帰るね。 竜騎士:…ああ。 0:昼頃、村長が来る ガウン:そこの村の村長をやっているガウンだ。失礼するぞ。 竜騎士:…あなたは、騎士をやっていたと聞いた。 ガウン:うむ。その通りだ。話に聞く限りでは貴公も騎士だと聞いたのだが、その姿を見るに貴公はただの騎士ではないな。 竜騎士:…やはり分かるか。 ガウン:連れているドラゴンを見れば分かるぞ。わしが予想するに貴公、「裂空」の騎士ではないか? 竜騎士:!そこまで分かるんだな。 ガウン:当たり前だ。わしは王国に四十年仕えた身。当時の裂空とも面識があるからな。 竜騎士:…一つ、聞きたいことが有るんだ。 ガウン:申してみよ。 竜騎士:騎士である以上、人をあなたも沢山殺しただろう。どのような思いで戦っていた? ガウン:…貴公は、なぜ騎士になった? 竜騎士:…どこにそんなことを聞く必要が。 ガウン:良いから答えよ。 竜騎士:…何だ? ガウン:なに? 竜騎士:思い…出せないんだ。俺は…何で騎士になったんだ? ガウン:ふっ、はっはっはっは!騎士になった理由さえ忘れてしまったのか。成程なあ。貴公が戦うことに悩みを抱えている理由はそこに有ると思うぞ。わしの場合は、養わなくてはならない家族が居ってな。家族のことを思えば、槍を振るうのも苦じゃなかった。 ガウン:何か理由がなければわざわざ騎士にはならんだろう。まずは騎士になった理由を思い出し、己の戦う理由を見出すことから始めることだ。 竜騎士:…先輩からのご助言、誠に感謝する。 ガウン:参考になったのなら嬉しく思うぞ。何か用が有ったらいつでも村に降りてくると良い。村の者は皆暖かい者ばかりだからな。それでは、わしは失礼するよ。今はここでゆっくりと考えることだ。 0:村長、帰っていく 竜騎士:俺が、戦う…理由… 0:竜騎士、騒がしさに目を覚ます 竜騎士:ん?どうした。グラーレン。…人が来る? アンナ:はあ、はあ、はあ。 0:アンナ、物凄い勢いで走ってくる。 竜騎士:どうした。そんなに慌てて。 アンナ:魔物と…数人呪術師が現れて… 竜騎士:何? アンナ:今、セレンとかウルノス君とか、村長さんが戦ってるんだけれど、やばいの! 竜騎士:…それで、俺にどうしろと? アンナ:お願い…助けて… 竜騎士:… アンナ:敵が凄く多いの…このままじゃ村が大変なことになっちゃう! 竜騎士:…俺は、もう戦いたくない… アンナ:はあ、はあ、え? 竜騎士:武器を持つだけで、腕が震えるんだよ!またこの俺の力で、誰かが苦しむって思うと…怖いんだ! アンナ:… 竜騎士:だから…無理だ… 0:アンナ、背を向ける竜騎士に泣きつくように抱き着く アンナ:おね…がい…村の皆が居なくなったら…私は…また一人になっちゃう… 竜騎士:っ…! アンナ:もう…一人は嫌だ。でも、私は…皆を守ることができない… 竜騎士:うっ… アンナ:この村で戦える人は少ないの。皆を守れる人は、貴方しか居ない。 竜騎士:つっ………… 0:竜騎士心の中 ???:やあ、困ってるね。 竜騎士:… ???:君は、士官学校時代困ってる人が見過ごせない性格だった。 竜騎士:… ???:あの頃の君なら今の状況、絶対助けに行くよね。 竜騎士:もう、あの時の俺は居ない。 ???:嘘をつけよ。君の心のどこかに絶対居るはずだ。あの頃の君が。 竜騎士:お前が、死んでしまったから俺はこうなってるんだよ!お前さえ…生きていてくれたら…俺は… ???:…ごめんね。死んでしまって。 竜騎士:死者から謝罪なんて聞きたくねえよ。 ???:確かに君の中で、僕の存在がどんなに大きなものだったかは分かってたんだ。 ???:でも僕はこうも思ったんだ。誰よりも強い君なら、僕が居なくなってもその悲しみを乗り越えて、戦い続けてくれるって。 ???:君は戦う理由が分からないんだよね? 竜騎士:… ???:だったら、僕の分まで…死んだ人の分まで生きることを戦う理由にしてほしい。 ???:君が屍の山を積み上げていくごとに、君の罪も重くなっていく。でも、人を殺した以上は君は生きなければならない。他人の人生を奪った以上、君はその分生き抜くんだ。 ???:そして、いつか死んでしまった時には、もう一度会おう。一緒に地獄でまた戦うんだ。地獄の悪魔相手に、僕たちのコンビネーションを見せてやるんだよ! 竜騎士:…はっ、はははは! ???:おいおい、どうしたんだよ。 竜騎士:分かったよ。ああ、分かったよ。戦い抜いてやるよ!そうだな。もう地獄行きは確定だしな。その分、殺したやつの分とにかく、ゴキブリのように生きて生きて生きて生き恥さらしてやるよお! ???:ふふっ、あはは!そうさ。その意気だよ。やっぱり君にはそういうテンションが合う。 竜騎士:ああ。何か、すっきりしたわ。お前のお陰で。 ???:いいや、僕だけの力じゃない。 竜騎士:え? ???:この村の人たちの言葉が、君に僕と向き合う力をくれたから僕はこうやって君と話すことができた。 ???:今の君なら、きっと戦える。「裂空」の力、みせてやれよ。 竜騎士:…ああ。お前も、地獄で首を長ーくして待ってろよ。…先に死んでんじゃねえぞ? ???:ははっ!地獄で死ぬって何だよ。 竜騎士:それもそうだな。…しばらくの間、じゃあな。 ???:うん。バイバイ。____。 竜騎士:ああ、「ケスラ」___ 0:村では セレン:くっそ、倒しても倒しても減らない…! ウルノス:ああ、こりゃあめんどくさいね。まるで軍と同じだ。大丈夫ですか?村長? ガウン:なあに、この程度の量の軍勢は何度も相手にしておるわあ! ウルノス:さすがですね。しっかし、こんな状況じゃなければなあ。僕の新型魔法で一発なんだけど。 セレン:え?あんた…この量の敵をいっぺんに殺れる秘策でもあるの? ウルノス:無いことは無いけど、その為には村の人たちに一か所に避難してもらう必要がある。 セレン:面倒な魔法ね!そんなの無茶だわ。ここで食い止めるので精一杯なんだし。 ガウン:おい、お主ら!何かが飛んでくるぞ! 0:ドラゴンの咆哮が響き渡る ウルノス:あれは…! 竜騎士:うらあ! 0:魔物たち、一気にドラゴンによって蹴散らされる。 ガウン:裂空の騎士よ。貴公、戦えるようになったのか。 竜騎士:ああ。友が助けてくれた。 セレン:そう…例の彼が? 竜騎士:…そうさ。 ウルノス:竜騎士君、復活直後で悪いんだがある秘策が思いついたんだ。頼みが有るんだけど良いかい? 竜騎士:一体それは何だ? ウルノス:君には、中央に有る噴水に村人たちを集めてほしいんだ。完了したら指笛で合図をくれ。音が聞こえたら、僕が村中に居る魔物たちを魔法で一掃する。 竜騎士:分かった。では、行ってくる。 0:竜騎士、飛び立つ。 セレン:ふふ、戦ってる方がかっこいいじゃない。 ガウン:ほう、タイプなのか?ああいう男が。 セレン:まあ、嫌いじゃないわ。 竜騎士:ゼスタ、お前は村内に居る魔物たちを見つけたらすぐに殺せ。俺とグラーレンは人々を誘導してくる。頼んだぞ! 0:ゼスタ、分かったといわんばかりにまばたきをする。竜騎士、次々に避難をさせて遂に人々の誘導に成功。 竜騎士:よし、避難は完了したな。合図だ。 0:指笛の音がウルノスに聞こえる。 ウルノス:!準備は完了したね。行くぞ!天より落ちる神の怒号を食らえ!レッド・サンダー! 0:魔物たちに次々と雷が落ちる。 ウルノス:よっしゃ。大成功って所かな。 ガウン:あとはこの軍勢をけしかけた呪術師共だ。早急に蹴散らしてくれ… セレン:!村長、後ろ! 0:突然呪術師たち現れガウンは魔法によって吹き飛ばされる。 ガウン:ぐう…きさ…まら… セレン:村長!ちっ、 0:セレン敵を確認。相手は五人に対してこちらは二人。 呪術師:まったく、世話の焼けるものよ…大して兵士もおらぬちっぽけな村にここまで苦戦するとは… 呪術師:しかし、そこの童よ。先ほどは中々優れた魔道じゃたぞ。どうじゃ、わしらの仲間とならんか? ウルノス:はははっ、そんな糞みたいなお誘い、かえって恐縮だよ。こっちから願い下げだから消えな。 呪術師:ほほう。ではお主にも消えてもらう。 ウルノス:ぐっ、 0:ウルノス、魔法をよけるが他の呪術師の追撃が命中する ウルノス:卑怯だね、五対二なんて。 呪術師:我々に公平性を求める時点でお門違いよ。 セレン:ウルノス、勝算は? ウルノス:いやあ、数の暴力には敵わないなあ。 セレン:分かった。 0:セレン、何かを決意し一気に間合いを詰める。二人を瞬時に斬りつける。 セレン:お前も! 呪術師:甘いわ。 0:呪術師、障壁魔法を使い攻撃を防ぐ。すぐさま他の呪術師が攻撃をし、セレンは倒れる。 セレン:うっ…く… 呪術師:ほほう。今ので死なぬか。お主、魔道の適応能力が有るかもな。 ウルノス:はあ、僕だけが立ってられる感じかあ。やっばいな。 呪術師:もう一度聞こう。わしらの仲間になれば命は助けよう。 ウルノス:まあ、しょうがないかあ…良いさ。君らの仲間になろう。 呪術師:であれば手始めにそこで倒れている女を殺せ。 0:ウルノス、セレンに近づいていく。 セレン:っつ… ウルノス:ふう………ウインド。 0:ウルノス、二人の魔導士に攻撃。 ウルノス:ばああああか!本気で仲間になるわけ無いだろ!お前も、死ね! 呪術師:ダークアンク。 ウルノス:くっ…く…そ… 呪術師:全く、愚かなものよ。中々良い才能を持っていたが、残念だな。さらばだ。 ウルノス:はっ、あんたがな。 0:すると辺り一面に飛竜の咆哮が響き渡る。 呪術師:な…に? 竜騎士:敵は一人…大分減らしてくれてたっぽいな。 呪術師:くっ、魔物たちの様子がどうもおかしいと思っていたが貴様のせいだったか! 竜騎士:グラーレン、やれ。 0:声高々に叫ぶグラーレン。するとダークアンクの術が解ける。 呪術師:なに!?わしの魔術が…使えん…!? 竜騎士:はっ、知らねえのか?黒竜の咆哮には魔封じの効果があるんだよ。これであんたは魔法の使えないただの一般人だ。 呪術師:ま、待て。話し合おうではないか。せめて命だけは… 竜騎士:下衆が、死ね。 呪術師:ぐうううううううううううああああああああああああああああああああ! 0:戦いが終わり多少の復興が進んだ村の酒場 アンナ:本当にありがとう。騎士様! 竜騎士:別に俺はほとんど何もできていない。感謝ならウルノスと、セレンと、ガウン殿に言え。 ガウン:いや、わしも老いを感じた戦いだったよ。貴公が居なければ負けていた戦いだった。村の長としても感謝を言いたい。 ウルノス:そうそう。僕も中々厳しい戦いだったし。君のお陰としか言えないよ。一番おいしい所を貰っていく君の強欲さもうかがえたしね。 0:そうこう話しているうちにウルノスとガウンの二人は他の村人と話し、アンナは店の手伝いに向かう。セレンと二人になる。 セレン:改めて、お疲れ様。 竜騎士:ああ、そちらこそ。 セレン:…この先、どうするの? 竜騎士:王都に戻る。お前たちと話して俺も戦う理由を作ることができたからな。もう一度、裂空として戦ってくるさ。 セレン:そっか………ねえ、私も連れてってよ。 竜騎士:は?何で。 セレン:もう少し、あなたと一緒に居たいなって思って。 竜騎士:だからって何故俺がお前と一緒に… セレン:貴方の戦う理由を探すことを手伝った報酬よ。お願い。 竜騎士:…はあ、分かった。連れて行こう。 セレン:ふふ。ありがとう。 0:竜騎士、旅立ちの日 ガウン:裂空よ、そなたは強い。これからも戦う理由を胸に戦い続けよ。貴公の活躍がここまで流れてくるのを、楽しみに待っているからな。 竜騎士:はい。あなたから教えられたことを胸に、これからも精進してまいります。 ウルノス:たまには、遊びに来てくれても良いんだからね。君にも、君のドラゴンにもまだまだ聞きたいことが沢山あるからさ。 竜騎士:そうだな。またいつか縁が有れば、その時は。 0:アンナ、ただ一人悲しそうな顔をしている。 竜騎士:お前にしては珍しく、暗いな。 アンナ:だって、もう会えないから… 竜騎士:…アンナ。お前の殺しや、戦争への考え方は、人として忘れてはならないことだ。それがその年で分かっているのは、お前が賢い証拠と言えるだろう。だから胸を張れ。どうかその気持ちを忘れないで欲しい。 アンナ:うん。 竜騎士:よし。それじゃ、そろそろ出るぞ。 セレン:分かった。 竜騎士:飛竜には乗れるのか? セレン:昔、仲間に教えてもらったから大丈夫。よろしくね。ゼスタ。 竜騎士:よし、それじゃ、世話になった。いつになるかは分からないが、また。 アンナ:…ま、待って! 竜騎士:ん?まだ何かあるのか? アンナ:あなたの、名前を教えて! 竜騎士:そりゃあ裂空… アンナ:それは異名なんでしょう?本当の名前。 竜騎士:ああ、そういうことか。俺の名前は______ 0:竜騎士、セレンが飛び去った後 アンナ:ねえ、ウルノス君。 ウルノス:ん? アンナ:あれって花の名前だよね。 ウルノス:ああ。そうだね。確か、花言葉は変わらぬ思い、光輝、温順そして… ウルノス:「飛翔」。 セレン:ねえ。 竜騎士:ん? セレン:あなたってそんな名前だったのね。 竜騎士:まあな。 セレン:これからよろしくね。「ローダンセ」。 ローダンセ:…ああ。よろしく。