台本概要
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タイトル | グリーンギター・プロローグストーリー「復讐のメロディー」 |
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作者名 | 火演花-カエンバナ (@Flower_Actfire) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 6人用台本(男3、女3) |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
「グリーンギター」、最近巷を騒がさせている謎の人物の名前だ。 黒い噂の有る企業や機関を狙って襲撃して、目撃者によると緑色のギターを背負っていたことからそんな名前が着いた。 そんなグリーンギターの正体は、復讐に燃える悲劇のギタリストだった。 187 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
相原さやか | 女 | 84 | 超人気バンド、Dropping Jamのギターボーカル。網川プロ襲撃事件以降消息が途絶えている。 |
高橋陽菜 | 女 | 31 | 享年22歳。Dropping Jamのベースを担当していた。 |
上田麻里 | 女 | 19 | 享年21歳。Dropping Jamのキーボードを担当していた。 |
荒木勇翔 | 男 | 19 | 享年21歳。Dropping Jamのドラムを担当していた。 |
網川譲治 | 男 | 14 | 芸能事務所、網川プロの社長をしていた人物。 |
三橋琉人 | 男 | 21 | 網川プロ襲撃事件についての調査を行った刑事。現在は「グリーンギター」について調査している。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
相原さやか:ドラムのカウントの後、快活に鳴る強烈なメロディー、観客の歓声。全てが愛しかった。
相原さやか:私には大切な人が居た。3人の大切な仲間。皆最高の人たちだった。
相原さやか:きっと私たちはずっと一緒だと、思ってた………………
三橋琉人:最近、有る一人の人物が世間を騒がせている。その名もグリーンギター。
三橋琉人:黒い噂の絶えない民間企業や、怪しい動きをしている国営組織などを狙って襲撃している、まあ俺から言わしてみればテロリストだ。
三橋琉人:しかし、ネットなり何なりでは「悪に制裁を与える正義の味方だ」とか「悪を持って悪を征する義賊だ」とか騒がれている。が、所詮は民間人を危険にさらす反乱因子。刑事としてはとっ捕まえてさっさと法の下裁きたい所だ。
三橋琉人:……今は五月。この時期は目に見えて頭のおかしい犯罪者が増える時期。俺みたいな職業の人間は忙しくなる…だが、この時期はどうしてもあの事件を思い出すんだ。「網川プロ襲撃事件」。ある日突然、何でもない芸能事務所を襲った凄惨な事件だ。その時事務所に居たスタッフ数名、そして…当時凄まじい人気を誇っていたバンドグループ、「Dropping Jam」のメンバー4人の内3名が死亡した。
三橋琉人:当時の「Dropping Jam」は絶大だった。そん時の俺も、流行りの音楽グループだったからよく休憩中に聞いていたのを覚えている。小さなライブハウスを最初の拠点とし、着々と人気を集めていった青春ポップな曲を扱うバンド。事件が起こる前にファン待望の全国ツアーを控えていたらしい。
三橋琉人:超人気バンドグループメンバーのあまりにも突然すぎる死というのは当時大々的に報道され、多くの人々を悲しませた。今でもたまに事件資料を見返す。「本当に間違ってなかったのか」と。
三橋琉人:俺の刑事歴の中ではトップレベルで大きな事件だったからだ。最終的な調査の末、数人の大学生の集団による事件だということで片づけられた。…果たして本当だろうか。
三橋琉人:事件発生時、網川プロダクションの事務所内にはたまたま常駐の警備員が居なかった。後は、犯行に使われたのが刃物だけでなく拳銃も使用されていたこと。そして、何よりも超人気バンドグループである「Dropping Jam」が居たということが知られていたこと。どう考えても練りに練った計画的犯行。ただの大学生がここまで詳しく内部の情報を知れるか?
三橋琉人:勿論、俺たち刑事は関係者を全部洗った。しかし、確かな証拠は一切見つからなかった。俺には何か大きな裏の人間が関わっているようで仕方なかったんだ。
三橋琉人:俺だってあの時に何もしなかったわけじゃ無い。上にも更なる調査を求めたし、個人的調査も行っていた。しかし…断念せざる終えなかった。完全に行き詰ってしまったからだ。
三橋琉人:あれからもう4年。すっかり民衆からこの事件は忘れ去られている。
相原さやか:「ねえ!バンドやろうよ!」
相原さやか:そんな一人の少女の言葉で、「Dropping Jam」は生まれた。あれはまだ私たちが高校生の時。
相原さやか:必ずすっごい有名になって、色んな人たちの光になれるよう曲を作って!皆でいつまでも音楽をやりたい!皆でバンドやろうよ!
高橋陽菜:もー。さやかはいつも唐突だなあ。まあでも、面白そうかも。二人はどう思う?
上田麻里:え、私は…皆がやるのなら…
荒木勇翔:俺は賛成しますよ。先輩のやることはいつも面白そうで最高っすね!本当暇しねえ。
相原さやか:でしょでしょー?じゃあさじゃあさ!バンド名決めよ!
高橋陽菜:ええ、いきなりすぎなーい?まずは誰がどの楽器やるかとかさあ。
相原さやか:こういうのは勢いが重要なのさ。勢いが!勇翔、何か良いの無い?
荒木勇翔:そうっすねー。「最強の四人」!とかどうですか!
上田麻里:だっさ…これだから男は…
荒木勇翔:ああ!?じゃあお前なんか良いの有るのか言ってみろよ!
上田麻里:はいはい。自分のセンスを指摘されたらそうやってすぐ「お前はどうなんだ」で攻める常套句。馬鹿の一つ覚え。子供みたーい。
荒木勇翔:くっそ!言わせておけば!
高橋陽菜:はいはい、後輩諸君。落ち着いて。そうだなあ…「Dropping Jam」とかどう?
相原さやか:ほほう。その心は?
高橋陽菜:いや、麻里が今ジャムパン食べてたからさ。何となーく。何か響きがカッコいいと思わない?
相原さやか:うーん…二人はどう思う?
荒木勇翔:俺はこいつのじゃなければ全然。
上田麻里:私はこの脳みその成長が中学生で終わってるような奴の案じゃなければ大丈夫です。
荒木勇翔:てめえ、まだ言うか!
上田麻里:うるせえ!ガキ!
相原さやか:あっははw二人ともまじで仲良いなあwww
高橋陽菜:あんたには仲良く見えるのね…
相原さやか:(こうして、私たちのバンドは結成された。試しに、文化祭で皆で発表してみることにした。私たちがどこまでやれるか気になったから。まずは誰が何の楽器を担当するか決めた。)
相原さやか:私はギターやりたーい!一番簡単そうだから!
高橋陽菜:えーさやか、ギターやるんなら多分ボーカルもやることになるよ?大体ギターが歌うことが多いし。
相原さやか:え、まじ?ま、まあ気合でどうにかするわ!皆は?
荒木勇翔:俺、ドラムやります。やっぱ一番体力使うと思うし。男の俺が適任だと思うんで。
上田麻里:私はキーボードやります。昔から習い事でピアノ教室に通ってたので演奏には自信があります!
高橋陽菜:成程ね。じゃあ私がベースかな。まあ私らしくて良いかも。ベースって言ったら縁の下の力持ちだもんね。いっつも皆の面倒見てる私に超合ってるじゃん。
相原さやか:そんじゃあ文化祭まで練習頑張ろう!
相原さやか:(それから文化祭までの約3か月、私たちは練習し続けた。まだ結成してすぐだったし、まずは他のバンドのコピーから始めた。)
相原さやか:そんじゃ、一回通しでやってみよっか。
高橋陽菜:オーケー。勇翔、行くよ。
荒木勇翔:了解!
0:演奏後
相原さやか:………え、めっちゃ良くない?
上田麻里:本当、もしかして先輩たちも勇翔も、昔から楽器弾いてました?
高橋陽菜:いや、私楽器触るの初めて。
相原さやか:私も。
荒木勇翔:俺も…
上田麻里:あれ、皆もしかして天才ってやつ!?
相原さやか:(と、何か最初から私たちの息はありえないレベルで合っていた。そして、迎えた文化祭当日。)
上田麻里:あ~…緊張してきた…
荒木勇翔:大丈夫だって。ミスっても皆で全力でフォローし会おう。先輩達も、頑張りましょう。
高橋陽菜:そうだね。もっとも、一番気がかりなのはどっかの誰かさんの歌だけど。
上田麻里:確かに…先輩、あんまり歌上手じゃないですもんね。
相原さやか:うっ…本番前に凄いぐさぐさ刺してくるじゃん…と、とにかく!皆頑張ろう!
0:一同ステージに上がる
相原さやか:どうもー!「Dropping Jam」です!今日は聞きに来てくれてありがとうございます!それでは、早速聞いてください!
相原さやか:(それぞれが自身の楽器に全神経を集中させる。必ず良い演奏にする。その気迫が全員から伝わってきた。)
相原さやか:(結果として、私たちの初舞台は大成功に終わった。)
高橋陽菜:いやあ。まさかあんなに盛り上がるとはねえ。さやかの歌もいつもよりか良かったし。
上田麻里:皆、練習以上の力が出せていて、びっくりしました。
荒木勇翔:ここまで上手くできたのもやっぱ練習の賜物ってことっすね!
相原さやか:まさに大成功ってやつだね!それでさ…皆、相談なんだけど。
高橋陽菜:ん?
相原さやか:これからは、バンドハウスで演奏しない?その…すぐに有名にはなれないかもだけど、私は、このバンドをここで終わらせたくないから!
上田麻里:……良いと思います!私も、ここで終わりにするにはもったいないなって思ってましたから!
荒木勇翔:俺も!どうせなら武道館目指しましょうよ!日本中、ひいては世界中に俺たちの名を轟かせましょう!
高橋陽菜:はあ…ほんっと、あんたの言うことはとんでもないわね…突拍子が無くて無謀。でも…めっちゃ面白い。私も乗った。
相原さやか:(後の話は、世間は皆知っている話。最初は小さなバンドハウスから始まった私たちだけど、どんどん実力を伸ばしていって、私たちが大学生になったばかりの時に網川プロに入る。あの時は凄く嬉しかった。)
網川譲治:網川プロの社長を務めている。網川譲治だ。よろしく頼む。
相原さやか:よろしくお願いします。えーっと、それで私たちに用が有る、というのは一体何でしょう?
網川譲治:単刀直入に言わせてもらおう。君たちに、我が社のタレントになってもらいたい。
高橋陽菜:え、それって…これからは網川プロの管轄下で動ことになるってことですか?
網川譲治:ああ。そうなる。我々スタッフも手厚いサポートを約束しよう。
上田麻里:もしかして…もっと大きな会場でのコンサートもできるってことですか!?
荒木勇翔:それこそ、武道館とか!東京ドームとか!
網川譲治:君たちのこれからの頑張り次第では、充分あり得るだろう。
相原さやか:え、えーっと…皆、という感じらしいけどどう思う?
高橋陽菜:それ聞く必要ある?
上田麻里:だって、網川プロですよ!有名アイドルやカリスマ的アーティストが沢山所属している事務所ですよ!
荒木勇翔:ここを逃したら絶対後悔すると思います!
相原さやか:…分かった。これからお世話になります。網川社長。
網川譲治:交渉成立、だな。俺も良い仕事を持ってこよう。必ずや、君たちを日本を代表するバンドグループに育ててやる。
相原さやか:(それから、私たちには沢山仕事が入ってきた。メンバー皆で音楽番組に出演するのは勿論、陽菜は物凄い頭が良かったからニュース番組とかのコメンテーターとか難しい仕事をやってたし、麻里はめちゃくちゃに可愛かったからモデルとかの仕事ができた。勇翔は何と演技の才能が有ったみたいで、バンド活動の傍ら役者もこなしていた。私はというと、よくバラエティとかに出たりしてたかな。まあ場を賑やかすのは得意だったし)
相原さやか:(そして、バンドを結成して丁度5年が経った日、私は突然社長に呼び出された。)
網川譲治:よう。悪いな。急に呼び出して。
相原さやか:いいえ、全然大丈夫ですよー。社長に呼び出されるときはいつも美味しいものが食べれるのでむしろ嬉しいです!
網川譲治:お前、俺と飯行ってた時そんなこと考えてやがったのか。ま、まあ良いさ。今日はお前に大事な報告が有ってな。
相原さやか:…何でしょう。
網川譲治:…………お前たちの全国ツアーが決定した。
相原さやか:…………え
網川譲治:あれ、あんまり嬉しくない感じか?まいった…(遮って)
相原さやか:ええええええええええええええええええええええ!?まじですか!?!?!?!??!!?!?
網川譲治:うるっっっっっっせええええ!公共の場だぞごらあ!
相原さやか:あ、あはは。ごめんなさい。でも、ほんとに私たちが?
網川譲治:本当だ。お前たちの人気は今や凄まじいもんだ。今人気のバンドといえば何ですかと言われれば「Dropping Jam」の名前が真っ先に浮かぶくらいにはな。
相原さやか:そっかあ。私たちもこの次元に来たってことかあ。皆にも早く伝えないと!
網川譲治:そうだな。これから忙しくなる。色々構想を立てておくことだ。
相原さやか:(私たちは順調に人気バンドにのし上がって行ってた。本当に、怖くなるぐらいに)
相原さやか:皆!全国ツアーが決まったよ!
高橋陽菜:まじ?本気で言ってる?
相原さやか:大マジのマジ。
上田麻里:全国…す、凄い。私たちトップアーティストの仲間入りじゃないですか。
荒木勇翔:やべえ。なんか実感湧かねえ。本当長いようで短い道のりだったなあ。
相原さやか:ということでさ!一回初心に戻って皆で演奏してみない?私たちが初めて弾いたあの曲で!
高橋陽菜:あー。確かに良いかも。あの頃の純粋な気持ちを思い出せそう。
上田麻里:こうやって他の人の曲を弾くのも久々ですね!
荒木勇翔:ほんと、あの頃のことが昨日のことみたいに思い出せるっすね。
相原さやか:よし…
高橋陽菜:あ、そういえばさ、さやか。
相原さやか:ん?何?
高橋陽菜:さやかのその緑色のギター、結成からずっと変えてないよね。
相原さやか:あー。まあ楽器初めて買いに行ったときにビビッと来たんだよね。このギターに運命感じたんだよ。…もしかして変かな?
高橋陽菜:全然。さやかっぽくて良いよ。ね?皆。
上田麻里:確かに。先輩といえば緑のギターってイメージですね。
荒木勇翔:分かる。俺たちは何回か楽器変えたり、複数持つとかしてるのに先輩はずっとそれだけを使ってますもんね。
相原さやか:あはは。まあ物は大事にしないとだしね。そんじゃ。いくよ!
相原さやか:(これから私たちはどんどん人気が出て、更に飛躍していくのだと、そう思っていた。でもあの日、私たちの道は絶たれてしまった。)
相原さやか:あーー。つっかれたあ。
高橋陽菜:ほんと。いくら忙しいとはいえこのスケジュールはやばいわ。
上田麻里:私も休みが無くて嫌になっちゃいます。勇翔は確か次のドラマは主演でしょ?凄いなあ。
荒木勇翔:お前にしては珍しく褒めるじゃねえか。ま、上手くやるつもりだよ。お前こそ、色んな雑誌出たり番組出てるじゃないか。流石だよな。
高橋陽菜:ほんと、皆売れっ子だねえ。なんか喉乾いてきた。さやかー、飲み物買ってきてー。
相原さやか:えー。何で私が!
上田麻里:先輩いっつも面倒くさがって行ってくれないじゃないですか!不公平です!
荒木勇翔:そうっすよ!プラスでお菓子も買ってきてください!
相原さやか:は、はーい。コンビニ行ってくるー。
相原さやか:(忘れもしない。あの日は事務所のスタジオを借りて練習をしていた。全国ツアーの最後の打ち合わせのつもりだった。よりにもよってあの日は私が買い出しに行くことになって…私は、一人になった。)
相原さやか:はあ、飲み物くそ重いー。皆こんなの持ってたのか。悪いことしちゃってたなあ。
相原さやか:あれ、スタッフさん、こんな所で何で寝てるんだ。地ベタですよー。
相原さやか:(起こそうとしたとき、腹部から出血してるのが分かった。私はすぐに皆の居るスタジオに向かった。そんなわけない。何で。何でこんなことに。おかしい。おかしいおかしいおかしい。大丈夫。皆は大丈夫。)
相原さやか:皆!
相原さやか:(扉を開けて見えたのは、ぐったりとした勇翔、仰向けに倒れた麻里、ナイフが刺さったまま苦しい顔をしている陽菜だった。)
相原さやか:勇翔!麻里!大丈夫!?何で!何でこんなことに!何で!
高橋陽菜:もう、だめだよ。二人とも、即死だった…
相原さやか:陽菜!ダメ!動かないで!今救急車を呼ぶから!せめて陽菜だけでも!ああ、血が凄い出てる。誰が!誰がこんなことを!
高橋陽菜:いや…さやか、これ、駄目かも…無理じゃないかなあ…
相原さやか:いやだ!絶対死なせない!まだ私たち全国ツアーできてない!夢が叶ってないもん!二人もまだ生きてるから!ね?………でしょ?
高橋陽菜:…あはは。ほんっと、さやかは馬鹿だなあ。…無理だよ。あんた以外皆死ぬ…
相原さやか:辞めてよ!私を一人にしないでよ!いやだあ…いやだよう…お願い、死なないで…
高橋陽菜:…私たちが居なくたって、さやかは幸せになってね。多分、あんたは明るいし、私たちが居なくてもやってけるでしょ。
相原さやか:皆が居るから私だって明るくふるまえるの!それなのに…皆が居なくなったら…どうすれば…
高橋陽菜:ああ…やばい…何か…手に力…入らなくなってきたあ…ああ…あたし、死ぬんだ…はは…
相原さやか:うっ、うう………さやか、だったら、教えて。
高橋陽菜:へ?
相原さやか:誰が、皆を殺したの?どんな奴が、ねえ!
高橋陽菜:…それは…
相原さやか:(皆はきっと死ぬ。私の心には深い悲しみと共にどうしようもないほどの憎悪が込み上げてきた)
高橋陽菜:……私たちとあんま変わらないぐらいの男が4人…電話で…誰かと喋ってた。………電話の相手は…「アルファ」って…名乗ってた…
相原さやか:「アルファ」…
相原さやか:アルファ…分かった。私は絶対、そいつを殺す!そいつを殺して!そして!皆が受けた苦しみを味あわせる!
高橋陽菜:ええ…?さやかが?そんな…私は…さやかには…そん…な…
相原さやか:陽菜?あれ、陽菜?ねえ!陽菜!…………そっか…皆、これで…うっ…うっ…ああああああああああああああああ!
三橋琉人:この事件を調べさせてもらってる三橋だ。あんたは被害者の方々の近しい人物にして、第一発見者だ。当時の状況を教えてくれ。
相原さやか:(事件の後、私は取り調べを受けることになった。でも私の頭の中には、「アルファ」のことしか無かった。)
三橋琉人:事件以前、妖しい動きは無かったか?何か心当たりが有れば教えて欲しい。
網川譲治:私は、本当に、何も…あの、本当に「Dropping Jam」の3人は、死んだのですか!?
三橋琉人:…ああ。事実だ。
網川譲治:ああ、そんな…何で、あいつらが何をしたっていうんだ…
三橋琉人:……
相原さやか:(ああ、何で私があの時死ねなかったんだろ。何で私が残ったんだろ。私が死にたかった。)
相原さやか:(何で…何で…何で…)
相原さやか:(…絶対許さない。皆を殺したやつを。「アルファ」というやつを。)
三橋琉人:…まあ。今はもう、終わってしまった事件だ。気持ちを入れ替えるべきだということは分かっている。しかし…
三橋琉人:唯一残されたメンバーである相原さやかの、あの時の顔は、今でも忘れられない。あの、絶望に満ちたような顔が…
三橋琉人:あの事件以降、相原さやかは消息不明になってるらしい。そんな状態のせいで「Dropping Jam」は事実上の解散になり、消滅。網川プロの社長である網川譲治は、社長を辞めたらしい。よほどショックだったのだろうな。
三橋琉人:本当に、嫌な事件だ。
三橋琉人:…仕事をしてるうちに、事件の記憶も朧気になっていく。だからこそ、俺は事件の解決には手を抜かない。あの頃にそう決めたんだ。
0:すると、捜査の命令が下る。
三橋琉人:…行くか。また新しい事件が有ったみたいだ。今日も「グリーンギター」がなんかしたみたいだ。
相原さやか:ドラムのカウントの後、快活に鳴る強烈なメロディー、観客の歓声。全てが愛しかった。
相原さやか:私には大切な人が居た。3人の大切な仲間。皆最高の人たちだった。
相原さやか:きっと私たちはずっと一緒だと、思ってた。
相原さやか:しかし、私たちはある日、引き離された。
相原さやか:大切な人たちは、理不尽に奪われてしまった。
相原さやか:なのに、何故私だけがのうのうと生きていられようか。絶対に、復讐する。
相原さやか:私たちを不幸にした奴に、地獄を味あわせる。
相原さやか:絶対に…許さない。
相原さやか:私はあれから、「アルファ」を求めて様々な場所を襲撃するようになった。
相原さやか:そのうち世間は私を「グリーンギター」と呼ぶようになった。
相原さやか:私が持っているギターが、緑色だったからそんな名前が着いた。
相原さやか:皆私を正義の味方のように呼ぶが、そんなのは関係ない。
相原さやか:私は「グリーンギター」。私が望むのは、復讐のみ。
相原さやか:ドラムのカウントの後、快活に鳴る強烈なメロディー、観客の歓声。全てが愛しかった。
相原さやか:私には大切な人が居た。3人の大切な仲間。皆最高の人たちだった。
相原さやか:きっと私たちはずっと一緒だと、思ってた………………
三橋琉人:最近、有る一人の人物が世間を騒がせている。その名もグリーンギター。
三橋琉人:黒い噂の絶えない民間企業や、怪しい動きをしている国営組織などを狙って襲撃している、まあ俺から言わしてみればテロリストだ。
三橋琉人:しかし、ネットなり何なりでは「悪に制裁を与える正義の味方だ」とか「悪を持って悪を征する義賊だ」とか騒がれている。が、所詮は民間人を危険にさらす反乱因子。刑事としてはとっ捕まえてさっさと法の下裁きたい所だ。
三橋琉人:……今は五月。この時期は目に見えて頭のおかしい犯罪者が増える時期。俺みたいな職業の人間は忙しくなる…だが、この時期はどうしてもあの事件を思い出すんだ。「網川プロ襲撃事件」。ある日突然、何でもない芸能事務所を襲った凄惨な事件だ。その時事務所に居たスタッフ数名、そして…当時凄まじい人気を誇っていたバンドグループ、「Dropping Jam」のメンバー4人の内3名が死亡した。
三橋琉人:当時の「Dropping Jam」は絶大だった。そん時の俺も、流行りの音楽グループだったからよく休憩中に聞いていたのを覚えている。小さなライブハウスを最初の拠点とし、着々と人気を集めていった青春ポップな曲を扱うバンド。事件が起こる前にファン待望の全国ツアーを控えていたらしい。
三橋琉人:超人気バンドグループメンバーのあまりにも突然すぎる死というのは当時大々的に報道され、多くの人々を悲しませた。今でもたまに事件資料を見返す。「本当に間違ってなかったのか」と。
三橋琉人:俺の刑事歴の中ではトップレベルで大きな事件だったからだ。最終的な調査の末、数人の大学生の集団による事件だということで片づけられた。…果たして本当だろうか。
三橋琉人:事件発生時、網川プロダクションの事務所内にはたまたま常駐の警備員が居なかった。後は、犯行に使われたのが刃物だけでなく拳銃も使用されていたこと。そして、何よりも超人気バンドグループである「Dropping Jam」が居たということが知られていたこと。どう考えても練りに練った計画的犯行。ただの大学生がここまで詳しく内部の情報を知れるか?
三橋琉人:勿論、俺たち刑事は関係者を全部洗った。しかし、確かな証拠は一切見つからなかった。俺には何か大きな裏の人間が関わっているようで仕方なかったんだ。
三橋琉人:俺だってあの時に何もしなかったわけじゃ無い。上にも更なる調査を求めたし、個人的調査も行っていた。しかし…断念せざる終えなかった。完全に行き詰ってしまったからだ。
三橋琉人:あれからもう4年。すっかり民衆からこの事件は忘れ去られている。
相原さやか:「ねえ!バンドやろうよ!」
相原さやか:そんな一人の少女の言葉で、「Dropping Jam」は生まれた。あれはまだ私たちが高校生の時。
相原さやか:必ずすっごい有名になって、色んな人たちの光になれるよう曲を作って!皆でいつまでも音楽をやりたい!皆でバンドやろうよ!
高橋陽菜:もー。さやかはいつも唐突だなあ。まあでも、面白そうかも。二人はどう思う?
上田麻里:え、私は…皆がやるのなら…
荒木勇翔:俺は賛成しますよ。先輩のやることはいつも面白そうで最高っすね!本当暇しねえ。
相原さやか:でしょでしょー?じゃあさじゃあさ!バンド名決めよ!
高橋陽菜:ええ、いきなりすぎなーい?まずは誰がどの楽器やるかとかさあ。
相原さやか:こういうのは勢いが重要なのさ。勢いが!勇翔、何か良いの無い?
荒木勇翔:そうっすねー。「最強の四人」!とかどうですか!
上田麻里:だっさ…これだから男は…
荒木勇翔:ああ!?じゃあお前なんか良いの有るのか言ってみろよ!
上田麻里:はいはい。自分のセンスを指摘されたらそうやってすぐ「お前はどうなんだ」で攻める常套句。馬鹿の一つ覚え。子供みたーい。
荒木勇翔:くっそ!言わせておけば!
高橋陽菜:はいはい、後輩諸君。落ち着いて。そうだなあ…「Dropping Jam」とかどう?
相原さやか:ほほう。その心は?
高橋陽菜:いや、麻里が今ジャムパン食べてたからさ。何となーく。何か響きがカッコいいと思わない?
相原さやか:うーん…二人はどう思う?
荒木勇翔:俺はこいつのじゃなければ全然。
上田麻里:私はこの脳みその成長が中学生で終わってるような奴の案じゃなければ大丈夫です。
荒木勇翔:てめえ、まだ言うか!
上田麻里:うるせえ!ガキ!
相原さやか:あっははw二人ともまじで仲良いなあwww
高橋陽菜:あんたには仲良く見えるのね…
相原さやか:(こうして、私たちのバンドは結成された。試しに、文化祭で皆で発表してみることにした。私たちがどこまでやれるか気になったから。まずは誰が何の楽器を担当するか決めた。)
相原さやか:私はギターやりたーい!一番簡単そうだから!
高橋陽菜:えーさやか、ギターやるんなら多分ボーカルもやることになるよ?大体ギターが歌うことが多いし。
相原さやか:え、まじ?ま、まあ気合でどうにかするわ!皆は?
荒木勇翔:俺、ドラムやります。やっぱ一番体力使うと思うし。男の俺が適任だと思うんで。
上田麻里:私はキーボードやります。昔から習い事でピアノ教室に通ってたので演奏には自信があります!
高橋陽菜:成程ね。じゃあ私がベースかな。まあ私らしくて良いかも。ベースって言ったら縁の下の力持ちだもんね。いっつも皆の面倒見てる私に超合ってるじゃん。
相原さやか:そんじゃあ文化祭まで練習頑張ろう!
相原さやか:(それから文化祭までの約3か月、私たちは練習し続けた。まだ結成してすぐだったし、まずは他のバンドのコピーから始めた。)
相原さやか:そんじゃ、一回通しでやってみよっか。
高橋陽菜:オーケー。勇翔、行くよ。
荒木勇翔:了解!
0:演奏後
相原さやか:………え、めっちゃ良くない?
上田麻里:本当、もしかして先輩たちも勇翔も、昔から楽器弾いてました?
高橋陽菜:いや、私楽器触るの初めて。
相原さやか:私も。
荒木勇翔:俺も…
上田麻里:あれ、皆もしかして天才ってやつ!?
相原さやか:(と、何か最初から私たちの息はありえないレベルで合っていた。そして、迎えた文化祭当日。)
上田麻里:あ~…緊張してきた…
荒木勇翔:大丈夫だって。ミスっても皆で全力でフォローし会おう。先輩達も、頑張りましょう。
高橋陽菜:そうだね。もっとも、一番気がかりなのはどっかの誰かさんの歌だけど。
上田麻里:確かに…先輩、あんまり歌上手じゃないですもんね。
相原さやか:うっ…本番前に凄いぐさぐさ刺してくるじゃん…と、とにかく!皆頑張ろう!
0:一同ステージに上がる
相原さやか:どうもー!「Dropping Jam」です!今日は聞きに来てくれてありがとうございます!それでは、早速聞いてください!
相原さやか:(それぞれが自身の楽器に全神経を集中させる。必ず良い演奏にする。その気迫が全員から伝わってきた。)
相原さやか:(結果として、私たちの初舞台は大成功に終わった。)
高橋陽菜:いやあ。まさかあんなに盛り上がるとはねえ。さやかの歌もいつもよりか良かったし。
上田麻里:皆、練習以上の力が出せていて、びっくりしました。
荒木勇翔:ここまで上手くできたのもやっぱ練習の賜物ってことっすね!
相原さやか:まさに大成功ってやつだね!それでさ…皆、相談なんだけど。
高橋陽菜:ん?
相原さやか:これからは、バンドハウスで演奏しない?その…すぐに有名にはなれないかもだけど、私は、このバンドをここで終わらせたくないから!
上田麻里:……良いと思います!私も、ここで終わりにするにはもったいないなって思ってましたから!
荒木勇翔:俺も!どうせなら武道館目指しましょうよ!日本中、ひいては世界中に俺たちの名を轟かせましょう!
高橋陽菜:はあ…ほんっと、あんたの言うことはとんでもないわね…突拍子が無くて無謀。でも…めっちゃ面白い。私も乗った。
相原さやか:(後の話は、世間は皆知っている話。最初は小さなバンドハウスから始まった私たちだけど、どんどん実力を伸ばしていって、私たちが大学生になったばかりの時に網川プロに入る。あの時は凄く嬉しかった。)
網川譲治:網川プロの社長を務めている。網川譲治だ。よろしく頼む。
相原さやか:よろしくお願いします。えーっと、それで私たちに用が有る、というのは一体何でしょう?
網川譲治:単刀直入に言わせてもらおう。君たちに、我が社のタレントになってもらいたい。
高橋陽菜:え、それって…これからは網川プロの管轄下で動ことになるってことですか?
網川譲治:ああ。そうなる。我々スタッフも手厚いサポートを約束しよう。
上田麻里:もしかして…もっと大きな会場でのコンサートもできるってことですか!?
荒木勇翔:それこそ、武道館とか!東京ドームとか!
網川譲治:君たちのこれからの頑張り次第では、充分あり得るだろう。
相原さやか:え、えーっと…皆、という感じらしいけどどう思う?
高橋陽菜:それ聞く必要ある?
上田麻里:だって、網川プロですよ!有名アイドルやカリスマ的アーティストが沢山所属している事務所ですよ!
荒木勇翔:ここを逃したら絶対後悔すると思います!
相原さやか:…分かった。これからお世話になります。網川社長。
網川譲治:交渉成立、だな。俺も良い仕事を持ってこよう。必ずや、君たちを日本を代表するバンドグループに育ててやる。
相原さやか:(それから、私たちには沢山仕事が入ってきた。メンバー皆で音楽番組に出演するのは勿論、陽菜は物凄い頭が良かったからニュース番組とかのコメンテーターとか難しい仕事をやってたし、麻里はめちゃくちゃに可愛かったからモデルとかの仕事ができた。勇翔は何と演技の才能が有ったみたいで、バンド活動の傍ら役者もこなしていた。私はというと、よくバラエティとかに出たりしてたかな。まあ場を賑やかすのは得意だったし)
相原さやか:(そして、バンドを結成して丁度5年が経った日、私は突然社長に呼び出された。)
網川譲治:よう。悪いな。急に呼び出して。
相原さやか:いいえ、全然大丈夫ですよー。社長に呼び出されるときはいつも美味しいものが食べれるのでむしろ嬉しいです!
網川譲治:お前、俺と飯行ってた時そんなこと考えてやがったのか。ま、まあ良いさ。今日はお前に大事な報告が有ってな。
相原さやか:…何でしょう。
網川譲治:…………お前たちの全国ツアーが決定した。
相原さやか:…………え
網川譲治:あれ、あんまり嬉しくない感じか?まいった…(遮って)
相原さやか:ええええええええええええええええええええええ!?まじですか!?!?!?!??!!?!?
網川譲治:うるっっっっっっせええええ!公共の場だぞごらあ!
相原さやか:あ、あはは。ごめんなさい。でも、ほんとに私たちが?
網川譲治:本当だ。お前たちの人気は今や凄まじいもんだ。今人気のバンドといえば何ですかと言われれば「Dropping Jam」の名前が真っ先に浮かぶくらいにはな。
相原さやか:そっかあ。私たちもこの次元に来たってことかあ。皆にも早く伝えないと!
網川譲治:そうだな。これから忙しくなる。色々構想を立てておくことだ。
相原さやか:(私たちは順調に人気バンドにのし上がって行ってた。本当に、怖くなるぐらいに)
相原さやか:皆!全国ツアーが決まったよ!
高橋陽菜:まじ?本気で言ってる?
相原さやか:大マジのマジ。
上田麻里:全国…す、凄い。私たちトップアーティストの仲間入りじゃないですか。
荒木勇翔:やべえ。なんか実感湧かねえ。本当長いようで短い道のりだったなあ。
相原さやか:ということでさ!一回初心に戻って皆で演奏してみない?私たちが初めて弾いたあの曲で!
高橋陽菜:あー。確かに良いかも。あの頃の純粋な気持ちを思い出せそう。
上田麻里:こうやって他の人の曲を弾くのも久々ですね!
荒木勇翔:ほんと、あの頃のことが昨日のことみたいに思い出せるっすね。
相原さやか:よし…
高橋陽菜:あ、そういえばさ、さやか。
相原さやか:ん?何?
高橋陽菜:さやかのその緑色のギター、結成からずっと変えてないよね。
相原さやか:あー。まあ楽器初めて買いに行ったときにビビッと来たんだよね。このギターに運命感じたんだよ。…もしかして変かな?
高橋陽菜:全然。さやかっぽくて良いよ。ね?皆。
上田麻里:確かに。先輩といえば緑のギターってイメージですね。
荒木勇翔:分かる。俺たちは何回か楽器変えたり、複数持つとかしてるのに先輩はずっとそれだけを使ってますもんね。
相原さやか:あはは。まあ物は大事にしないとだしね。そんじゃ。いくよ!
相原さやか:(これから私たちはどんどん人気が出て、更に飛躍していくのだと、そう思っていた。でもあの日、私たちの道は絶たれてしまった。)
相原さやか:あーー。つっかれたあ。
高橋陽菜:ほんと。いくら忙しいとはいえこのスケジュールはやばいわ。
上田麻里:私も休みが無くて嫌になっちゃいます。勇翔は確か次のドラマは主演でしょ?凄いなあ。
荒木勇翔:お前にしては珍しく褒めるじゃねえか。ま、上手くやるつもりだよ。お前こそ、色んな雑誌出たり番組出てるじゃないか。流石だよな。
高橋陽菜:ほんと、皆売れっ子だねえ。なんか喉乾いてきた。さやかー、飲み物買ってきてー。
相原さやか:えー。何で私が!
上田麻里:先輩いっつも面倒くさがって行ってくれないじゃないですか!不公平です!
荒木勇翔:そうっすよ!プラスでお菓子も買ってきてください!
相原さやか:は、はーい。コンビニ行ってくるー。
相原さやか:(忘れもしない。あの日は事務所のスタジオを借りて練習をしていた。全国ツアーの最後の打ち合わせのつもりだった。よりにもよってあの日は私が買い出しに行くことになって…私は、一人になった。)
相原さやか:はあ、飲み物くそ重いー。皆こんなの持ってたのか。悪いことしちゃってたなあ。
相原さやか:あれ、スタッフさん、こんな所で何で寝てるんだ。地ベタですよー。
相原さやか:(起こそうとしたとき、腹部から出血してるのが分かった。私はすぐに皆の居るスタジオに向かった。そんなわけない。何で。何でこんなことに。おかしい。おかしいおかしいおかしい。大丈夫。皆は大丈夫。)
相原さやか:皆!
相原さやか:(扉を開けて見えたのは、ぐったりとした勇翔、仰向けに倒れた麻里、ナイフが刺さったまま苦しい顔をしている陽菜だった。)
相原さやか:勇翔!麻里!大丈夫!?何で!何でこんなことに!何で!
高橋陽菜:もう、だめだよ。二人とも、即死だった…
相原さやか:陽菜!ダメ!動かないで!今救急車を呼ぶから!せめて陽菜だけでも!ああ、血が凄い出てる。誰が!誰がこんなことを!
高橋陽菜:いや…さやか、これ、駄目かも…無理じゃないかなあ…
相原さやか:いやだ!絶対死なせない!まだ私たち全国ツアーできてない!夢が叶ってないもん!二人もまだ生きてるから!ね?………でしょ?
高橋陽菜:…あはは。ほんっと、さやかは馬鹿だなあ。…無理だよ。あんた以外皆死ぬ…
相原さやか:辞めてよ!私を一人にしないでよ!いやだあ…いやだよう…お願い、死なないで…
高橋陽菜:…私たちが居なくたって、さやかは幸せになってね。多分、あんたは明るいし、私たちが居なくてもやってけるでしょ。
相原さやか:皆が居るから私だって明るくふるまえるの!それなのに…皆が居なくなったら…どうすれば…
高橋陽菜:ああ…やばい…何か…手に力…入らなくなってきたあ…ああ…あたし、死ぬんだ…はは…
相原さやか:うっ、うう………さやか、だったら、教えて。
高橋陽菜:へ?
相原さやか:誰が、皆を殺したの?どんな奴が、ねえ!
高橋陽菜:…それは…
相原さやか:(皆はきっと死ぬ。私の心には深い悲しみと共にどうしようもないほどの憎悪が込み上げてきた)
高橋陽菜:……私たちとあんま変わらないぐらいの男が4人…電話で…誰かと喋ってた。………電話の相手は…「アルファ」って…名乗ってた…
相原さやか:「アルファ」…
相原さやか:アルファ…分かった。私は絶対、そいつを殺す!そいつを殺して!そして!皆が受けた苦しみを味あわせる!
高橋陽菜:ええ…?さやかが?そんな…私は…さやかには…そん…な…
相原さやか:陽菜?あれ、陽菜?ねえ!陽菜!…………そっか…皆、これで…うっ…うっ…ああああああああああああああああ!
三橋琉人:この事件を調べさせてもらってる三橋だ。あんたは被害者の方々の近しい人物にして、第一発見者だ。当時の状況を教えてくれ。
相原さやか:(事件の後、私は取り調べを受けることになった。でも私の頭の中には、「アルファ」のことしか無かった。)
三橋琉人:事件以前、妖しい動きは無かったか?何か心当たりが有れば教えて欲しい。
網川譲治:私は、本当に、何も…あの、本当に「Dropping Jam」の3人は、死んだのですか!?
三橋琉人:…ああ。事実だ。
網川譲治:ああ、そんな…何で、あいつらが何をしたっていうんだ…
三橋琉人:……
相原さやか:(ああ、何で私があの時死ねなかったんだろ。何で私が残ったんだろ。私が死にたかった。)
相原さやか:(何で…何で…何で…)
相原さやか:(…絶対許さない。皆を殺したやつを。「アルファ」というやつを。)
三橋琉人:…まあ。今はもう、終わってしまった事件だ。気持ちを入れ替えるべきだということは分かっている。しかし…
三橋琉人:唯一残されたメンバーである相原さやかの、あの時の顔は、今でも忘れられない。あの、絶望に満ちたような顔が…
三橋琉人:あの事件以降、相原さやかは消息不明になってるらしい。そんな状態のせいで「Dropping Jam」は事実上の解散になり、消滅。網川プロの社長である網川譲治は、社長を辞めたらしい。よほどショックだったのだろうな。
三橋琉人:本当に、嫌な事件だ。
三橋琉人:…仕事をしてるうちに、事件の記憶も朧気になっていく。だからこそ、俺は事件の解決には手を抜かない。あの頃にそう決めたんだ。
0:すると、捜査の命令が下る。
三橋琉人:…行くか。また新しい事件が有ったみたいだ。今日も「グリーンギター」がなんかしたみたいだ。
相原さやか:ドラムのカウントの後、快活に鳴る強烈なメロディー、観客の歓声。全てが愛しかった。
相原さやか:私には大切な人が居た。3人の大切な仲間。皆最高の人たちだった。
相原さやか:きっと私たちはずっと一緒だと、思ってた。
相原さやか:しかし、私たちはある日、引き離された。
相原さやか:大切な人たちは、理不尽に奪われてしまった。
相原さやか:なのに、何故私だけがのうのうと生きていられようか。絶対に、復讐する。
相原さやか:私たちを不幸にした奴に、地獄を味あわせる。
相原さやか:絶対に…許さない。
相原さやか:私はあれから、「アルファ」を求めて様々な場所を襲撃するようになった。
相原さやか:そのうち世間は私を「グリーンギター」と呼ぶようになった。
相原さやか:私が持っているギターが、緑色だったからそんな名前が着いた。
相原さやか:皆私を正義の味方のように呼ぶが、そんなのは関係ない。
相原さやか:私は「グリーンギター」。私が望むのは、復讐のみ。