台本概要

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タイトル 牙のない狼たちは
作者名 うどんマン  (@hello_udon_don)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男4、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 牙のない狼VS牙もちの羊
羊の国の監獄に囚われた狼たちの復讐劇
うどんマン渾身の作品です

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ファング 76 【狼】親分。クールな兄貴肌
ウルガ 76 【狼】アツい野郎。勝ち気で向こう見ずな性格
フォーク 53 【狼】性格は大人しめ。手先が器用。※女性でも演じやすい
ひっつー 40 【羊】看守。サイコパス狂女
つーびー 39 【羊】看守。偉い立場にあり
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:  ファング:牙を抜かれた俺たちは虐げられ、死ぬこともできずに生きもがいている 0:羊の国 監獄 ウルガ:だから、俺はやってねぇっつってんだろ! ひっつー:こわーい! ウルガ:ガルルルル ひっつー:看守ぅ聞いて下さいよぉ、こいつが看守の大事な書類をめちゃくちゃにしたんですぅ つーびー:まったく、イケナイ子にはお仕置きが必要だな ひっつー:あはははは! ウルガ:出られねぇってのにどうやって看守室に行けるってんだ ひっつー:どうやって行ったんでしょうねぇ? ウルガ:ふざけやがって!このクソ羊どもが!! ファング:ウルガ、やめておけ ウルガ:親分 ファング:話すだけ無駄だ つーびー:今日もクールだねぇ、ファングくんは ファング:… つーびー:そういうところが気に入らない 0:看守、ムチでファングをうつ ファング:っ…!! ウルガ:親分! ひっつー:あはははは!もしかしてこいつぅムチでうたれて興奮してるんじゃないですかぁ? つーびー:とんだマゾ野郎だな ウルガ:言わせておけば!! ファング:ウルガやめろ。今はそのときじゃない。 ウルガ:もう我慢の限界だ!羊ごときにこんな屈辱…!! ひっつー:屈辱ぅ?私たちはぁ、ずっとそっち側だったんですよぉ? ウルガ:知るか!狼が羊より上なのは当たり前だろうが! ひっつー:話にならないわぁ? つーびー:弱肉強食。牙のない君たちはもう落ちたんだよ。立場をわきまえたまえ ひっつー:わきまえてちょーだい? ウルガ:ガルルルル ファング:よせ。 ウルガ:見損なったぜ親分。俺は一匹になっても抗い続ける ファング:… ウルガ:くそっ、あんたは反論もできねぇクズになっちまったのかよ ひっつー:仲間割れですかぁ~?ほんとしょうもないやつらねぇ つーびー:さぁ、お仕置きの続きを始めようか。いい声で鳴いてくれよ? ひっつー:たっぷりとねっ つーびー:ほらよっ! ファング:ぐはっ…!! 0:響くムチの音と狼たちの叫び声 0:一つの独房に三匹の狼が収容されている --------------------------------------------- フォーク:すごい傷… ウルガ:ったく、おかげでしばらく動けそうにねぇわ ファング:大丈夫か…? ウルガ:触んな!!腰抜け野郎に心配されなくても大丈夫だっ…! ファング:お前はすぐカッとなる。その性格直せねぇのか ウルガ:なんだと! フォーク:やめなよ!傷がひらくよ! ウルガ:うるせぇ! フォーク:もー。。。 ファング:今はその時じゃない、耐えるんだ ウルガ:そればっかだよなぁ、いつになったらくるんだ「その時」ってのはよぉ! フォーク:明日には決行できるかもしれません! ウルガ:あぁ? ファング:明日か… フォーク:ええ。明日の昼食、配膳にくるのがペーターなんです ファング:それで完成するのか フォーク:はい ウルガ:おい、話が見えねぇんだが フォーク:スパイですよ。スパイ。 ウルガ:スパイ? フォーク:ええ。ここから抜け出すには鋭利なものが必要になるでしょう。でも、俺たちには牙も爪も何もない フォーク:だから、牙を抜かれていない羊側に脈をつくっておいたんです ファング:それがペーターってやつだな フォーク:はい ウルガ:で、どうなるんだ? フォーク:ペーターが配膳当番の度に彼の牙を受け取って、そして集めた牙でこれを作っていました ファング:おお! フォーク:立派なナイフでしょ?俺、手先は器用なもんで! ファング:よくやった、フォーク フォーク:えっへへ ウルガ:お、おい ファング:あ? ウルガ:そのペーターってのは信用できんのか、羊なんだろ? フォーク:昔、ペーターがお仕置きされてるところを親分が助けたんです ファング:もともと看守のやり方に疑問を持っていたらしい フォーク:ちょっと仕返ししたいって言ったら牙を差し出してくれました ウルガ:…どうして黙ってた!俺にも言ってくれてりゃ… フォーク:ウルガは隠し事とか向いてないでしょ? ウルガ:なに!? フォーク:絶対バレるもん… ファング:あはは。明日の決行に向けて今日はもう寝よう フォーク:はーい ファング:じゃ、おやすみ フォーク:おやすみなさい ウルガ:…親分、悪かったよ ファング:何も知らなかったんだ、気にするな ウルガ:…うい ----------------------------------------- 0:監獄、医務室 ひっつー:はぁーい、野蛮な狼さぁーん?牙抜きのお時間ですよぉ?いい子で並びましょうねぇ フォーク:まだちょっとしか生えてないのに ひっつー:育つ前に抜いておかなくちゃダメでしょぉ?私たちが安心して暮らせるように フォーク:… ひっつー:騒ぐと、痛くしちゃうわよぉ~、ってあれ、今日は静かねぇ? ウルガ:さっさとやれよ ひっつー:あれれぇどうしたのぉ?調子狂っちゃうわぁ~? つーびー:どうした ひっつー:看守ぅ、こいつ大人しくてなんか面白くないのぉ~ ウルガ:騒ぐなって言ったり騒げって言ったりどっちなんだよ ひっつー:こいつもしかして、賢者タイム的なぁ? ウルガ:ガルルルル ひっつー:こわいわぁ~看守ぅ つーびー:どうやら君は今日も懲りずにお仕置きされたいようだねぇ? ファング:ウルガ、のせられるな ウルガ:わかってるって ひっつー:あら、仲直りしちゃったのねぇ、面白くないのっ つーびー:ほら、牙抜きの時間だ ひっつー:はーい!では、抜きますねぇ~?3、2、1、それぇ~! フォーク:ううううっっ…!!! ひっつー:鳴かずによく頑張りましたねぇ~いいこいいこ~ フォーク:麻酔…かけてよ… ひっつー:狼にうつ麻酔なんてないのよぉ、当然でしょ?はい次ぃ~ 0:  ファング:俺たちは牙を抜かれ、羊たちが暮らすこの国で生かされている ファング:どれだけ反撃の時を待っただろう ファング:すぐにでも嚙みついてやりたいのに、耐えて耐えて、ひたすら耐えて、 ファング:ああ、もうすぐだ。腹が減った… ---------------------------------------- 0:独房、ペーターを待つ三匹の狼 ウルガ:いよいよか フォーク:こんな生活早く抜け出して美味しいものいっぱい食べたい ファング:アジトにゃ酒もあるぜ? ウルガ:うひょー!酒!ご馳走! フォーク:あとは時を待つだけ。。。 ファング:一度、作戦を確認しておこう フォーク:はい。ペーターから牙を受け取ったら、この先端に取り付けてナイフの完成です。看守がきたタイミングでナイフを突き付け一気につめる フォーク:あとはなるように ウルガ:随分新手な手法だな ファング:俺たちは狼だぜ。一つ凶器があれば十分 ウルガ:ああ フォーク:あっ、来た!ペーター… 0:そこに現れたのは看守だった つーびー:やぁ、さっきぶりだね狼くんたち フォーク:看守…!? ウルガ:何しにきやがった! つーびー:見回りだよ、君たちがいい子にしているか、ね ファング:いい子にしてるぜ つーびー:ファングくん、実に君は優等生だね。隣りの彼と違って反抗的ではないし… ファング:… つーびー:気に入らないなぁ、ほんとうに 0:看守、ムチを構える ウルガ:おい!お前は憂さ晴らしのためにきやがったのか…! つーびー:ん?あぁ、そうだったそうだった。見回りとそれから… つーびー:残念なお知らせだよ ウルガ:あぁ? つーびー:ペーターくんの大事な牙が悪い狼たちに奪われてしまったみたいなんだ ファング:…っ! ウルガ:どういうことだ… つーびー:そのままの意味だよ、頭が悪いなぁ フォーク:ペーター… つーびー:ウォッシュルームが血だらけでね、どうしたもんかと思ったらペーターくんが牙を抜いていたんだ 狼たち:…っ!! つーびー:(ため息)まったく狼なんかに肩入れしやがって つーびー:だから、彼の代わりに私が配膳に来たのさ フォーク:俺が無理に頼んだから… つーびー:困った部下ばかりだよ つーびー:はい、昼食だよ。今日のメニューはラム肉のソテー ファング:ラム肉だと!? ウルガ:嘘だろおい つーびー:どうしたんだい?腹が空いているのだろう?召し上がれ フォーク:ガルルルル つーびー:そんな怖い顔するなよ。せっかくのご馳走なんだからさぁ つーびー:私だってこんなことしたくなかったよ、君たちがこうさせたんだ。ほら責任もって食いな フォーク:…っ! つーびー:どうした?今まで散々食ってきただろ。羊食いの狼が、まったくもって都合のいい フォーク:ペーター… つーびー:お前はこっちだ。ナイフは回収する。お仕置きが必要だな フォーク:…っ つーびー:ほら来い!! ファング:待て!! つーびー:あ? 0:看守、ナイフの刃先をファングに向ける つーびー:よくできてるなぁこれ。あと一歩。残念でした ファング:ぐっ…!! 0:シュッ、ファングの頬が切りつけられる 0:未完成のナイフの切れ味は悪い。だが確かに痛かった つーびー:明日、こいつの死刑執行を行う。 ウルガ:やめろ!!! つーびー:お前も切られたいのか?見せしめにはちょうどいいな フォーク:…やめて つーびー:…ん? フォーク:こんな生活、耐えられないよ。俺、もう… ファング:フォーク フォーク:考えないようにしてたんだ!ここから解放されると思ってたから!だから、苦しいことも耐えてきた! ファング:… フォーク:ペーターが死んだ。そしてナイフも取り上げられて。全部俺のせいだ ファング:それは違う! フォーク:親分たちとまた、何でもない話で笑いあって美味しいものいっぱい食べたかったなぁ フォーク:でも、俺のせいで誰かが酷い目に合うなら、死んだ方がましだなんてそんなこと思っちゃったんだ ファング:悲観的になるな!俺たちは絶対に生きるんだ! フォーク:俺、親分みたいに強くないからさ。 ファング:俺だって強くないさ。死ぬのは怖い。だけどお前、逃げようとしてないか フォーク:親分… ファング:狼に誇りをもて つーびー:友情ごっこなんて泣けるなぁ。フフ、明日は狼の肉が食えるぞ? 0:看守に連れ去られるフォーク ファング:大丈夫だ、絶対迎えにいくからな、フォーク…!!! 0:狼の遠吠えが虚しく響く ---------------------------------- 0:翌朝 ひっつー:はぁーい皆さーん?ご機嫌いかがぁ~?ぐっすり眠れたかしらぁ~? 狼たち:… ひっつー:(大きな声で)眠れたかしら!! 狼たち:…はーい ひっつー:やる気ないわねぇ。まぁいいわぁ、点呼をとりま~す! 0:ひっつー、狼たちの名前を順に呼んでいく ひっつー:次、ファングさーん ファング:…はい ひっつー:そして、フォークさーん ひっつー:あれ、返事がありませんねぇ。どこ行っちゃったのかしらぁ。あ、いっけなーい☆忘れてたぁ! ひっつー:ここにいましたぁ~☆ 0:狼たちの前に縛り付けられたフォークが連れてこられる ウルガ:フォーク!! ひっつー:静粛に静粛にぃ~! ひっつー:この子は羊から牙を奪い、そして凶器を作っていましたぁ!やだぁ、何て恐ろしい子なのぉ フォーク:… ひっつー:そんな恐ろしい子はどうなるのか。皆さんに教えてあげたいと思いま~す☆ 0:フォークの周りに木の枝がしかれ、火が放たれる フォーク:あつっ…! ひっつー:うっふふふふふふ!今日の夜ご飯になってもらいま~す☆ ファング:… ひっつー:大丈夫。美味しくしてあげるからねぇ ファング:… ひっつー:メラメラ~メラメラ~☆ ファング:… ひっつー:なーんだ、さっぱりしてるのねぇ。誰か騒ぐかと思って警備隊を用意したのにぃ ファング:… ひっつー:つまんないの 0:ひっつー、火を仰ぐ フォーク:あつつつつ!!! 0:ウルガ、ファングに ウルガ:おい。 ファング:… ウルガ:何黙ってやがる!このままじゃ燃えちまうぞ! ファング:… ウルガ:おい!! ファング:… ウルガ:助けるんじゃなかったのかよ!!! 0:ウルガ、ファングを殴り飛ばす ファング:…っ!! つーびー:何事かね ひっつー:看守ぅ、また仲間割れですぅ つーびー:狼ってやつは本当に喧嘩っ早いな ひっつー:でぇもぉ、面白くなってきちゃいました~☆ ウルガ:…ほら立てよ!もう一発殴ってやる ファング:お前の脳は筋肉か? ウルガ:あ? ファング:いい加減知性をつけろよ ウルガ:あんたは勇気を持った方がいいな。小心すぎてヘドが出る ファング:勇気?持っているつもりだが ウルガ:臆病の間違いじゃねぇのか ファング:見栄ばかりよりはマシだろう ウルガ:ガルルルル… ファング:ガルルルル… フォーク:や、やめてよ!! ウルガ:黙ってろ!今こいつと決着つけんだよ ファング:ボスに勝てると思ってんのか。やはり知性をつけた方がいいな ウルガ:勝てるさ。あんたみたいな腰抜け野郎に負ける訳ねぇだろ ファング:ウルガ、その言葉覚えておけよ ウルガ:こっちのセリフだ…! 0:ファングに飛びかかるウルガ 0:牙のない口で、だがしっかりと嚙みつく ファング:嚙みつけたら苦労しねぇんだよ。全く痛くねぇな ウルガ:ガルルルル… ひっつー:こいつら何やってんのぉ☆マジうけるぅ つーびー:惨めな ファング:…うっ! ウルガ:仕置きの傷が完全に癒えたわけじゃねぇだろ。ここから食いちぎればあんたは終わりだ ファング:がああああああ!! 0:以前お仕置きを受けた腕からは身が見えている フォーク:ちょっとウルガ!本当に何やってんだ…う、あっつい ウルガ:誰も止めんじゃねぇぞ!!こいつは、こいつは俺が殺す!! ファング:ぐああああ!! フォーク:ウルガ! ひっつー:やだやだぁテンション上がってきたんですけどぉ! つーびー:見せしめに殺し合いのショーかぁ。いいねぇ 0:ファングの腕がはがれそうになる ウルガ:… ファング:どうした…っ、早くやれよ… ウルガ:…親分、本当にいいのか ファング:やれ ウルガ:ガルルルル 0:ウルガ、勢いよくファングの腕を引きちぎる ファング:ぐああああああああああ ウルガ:親分!! ファング:迷ってんじゃねぇええええ!!ほらいけ!!! ウルガ:っ…!!! 0:ウルガ、ファングの腕骨を高く掲げ吠える ウルガ:よく聞け羊ども。俺たちは絶対にお前らを許さねぇ。これは、俺たちの親分の勇気の骨だ!!!これでみんな殺してやるよ 0:ウルガの気迫にビビる羊たち つーびー:な、何を怖気づいている!警備隊、かかれぇえええ!!! ウルガ:警備隊?羊の群れなんかちっとも怖くねぇんだよ!!!かかってこいや!!!! つーびー:何をしている!早くかかれっ! 0:ウルガにむかう羊の警備隊たち ウルガ:…っ! 0:羊の牙が体中に刺さる ウルガ:くそがっ…! 0:必死に剣をふるウルガ 0:次々に倒れていく羊たち ひっつー:い、いやあああああ! つーびー:誰でもいい!早くあいつを捕まえろ!! ウルガ:二度と捕まってたまるか!これさえあればなぁ、俺たちが負けることなんてねぇんだよ!! つーびー:こ、こいつがどうなってもいいのか!! 0:フォークに火を近づける看守 ウルガ:姑息なんだよ!おらあっ! 0:看守、あっけなく斬られる ひっつー:か、看守ぅ。。。 ウルガ:相手がメスだろうと、容赦しねぇぜ ひっつー:ひっ! ウルガ:俺たちが安心して暮らすためだ 0:ひっつーも斬られる 0:ウルガ、フォークの縄をほどき、ファングのもとへ ウルガ&フォーク:親分! ファング:よくやった ウルガ:親分、ほら逃げるぜ! 0:ファングの腕はもうない ファング:俺はもう無理だよ フォーク:腕が… ファング:ウルガ、なかなかあつい芝居だったじゃねぇか、大根かと思ってたが ウルガ:そんなこと言ってる場合じゃねぇだろ! ファング:ったく最後までうるせぇな ウルガ:…フン ファング:ウルガ、皆のことはお前にまかせた ウルガ:…親分 ファング:フォーク、こいつのサポートを頼まれてくれないか フォーク:…わかりました親分 ファング:もう俺は親分じゃねぇ フォーク:…っ ファング:よし、いけ! ファング:追手がくるぞ。遠くまで逃げろよ。牙が生えたら反撃だ フォーク:…ううう ファング:いけ!!! ウルガ:フォーク、いくぞ! フォーク:…今までありがとうございました!!! ファング:おう 0:ウルガとフォーク、他の狼たちも駆け出していく ----------------------------------------- 0:残ったファング。柱のかげから何者かが見ている ファング:そこにいるのは誰だ? ファング:…羊の子か。 0:あたりは羊の死骸でいっぱい ファング:あんま見んじゃねぇ。トラウマになるぞ ファング:どうした。…ああ、狼が憎いか ファング:変わらねぇんだ。この世界は ファング:お前は何を感じる? ファング:復讐するなとは言わないぜ。復讐しろとも言わねぇが ファング:俺は力をつけて、そして果たしたのさ ファング:お前も同じ道をたどるなら、一つアドバイスをくれてやろう ファング:仲間を、大切にしておけ 0:羊の子はふるえながらコクリと頷く 0:ファング、静かに笑うと息を引き取った 0:  0:羊の国から遠く遠く離れた丘の上 ウルガ:アオーーーーーン(遠吠え) フォーク:アオーーーーーン(遠吠え) 0:狼たちの遠吠えが響く 0:こうして俺たちの世界は続いていくんだ

0:  ファング:牙を抜かれた俺たちは虐げられ、死ぬこともできずに生きもがいている 0:羊の国 監獄 ウルガ:だから、俺はやってねぇっつってんだろ! ひっつー:こわーい! ウルガ:ガルルルル ひっつー:看守ぅ聞いて下さいよぉ、こいつが看守の大事な書類をめちゃくちゃにしたんですぅ つーびー:まったく、イケナイ子にはお仕置きが必要だな ひっつー:あはははは! ウルガ:出られねぇってのにどうやって看守室に行けるってんだ ひっつー:どうやって行ったんでしょうねぇ? ウルガ:ふざけやがって!このクソ羊どもが!! ファング:ウルガ、やめておけ ウルガ:親分 ファング:話すだけ無駄だ つーびー:今日もクールだねぇ、ファングくんは ファング:… つーびー:そういうところが気に入らない 0:看守、ムチでファングをうつ ファング:っ…!! ウルガ:親分! ひっつー:あはははは!もしかしてこいつぅムチでうたれて興奮してるんじゃないですかぁ? つーびー:とんだマゾ野郎だな ウルガ:言わせておけば!! ファング:ウルガやめろ。今はそのときじゃない。 ウルガ:もう我慢の限界だ!羊ごときにこんな屈辱…!! ひっつー:屈辱ぅ?私たちはぁ、ずっとそっち側だったんですよぉ? ウルガ:知るか!狼が羊より上なのは当たり前だろうが! ひっつー:話にならないわぁ? つーびー:弱肉強食。牙のない君たちはもう落ちたんだよ。立場をわきまえたまえ ひっつー:わきまえてちょーだい? ウルガ:ガルルルル ファング:よせ。 ウルガ:見損なったぜ親分。俺は一匹になっても抗い続ける ファング:… ウルガ:くそっ、あんたは反論もできねぇクズになっちまったのかよ ひっつー:仲間割れですかぁ~?ほんとしょうもないやつらねぇ つーびー:さぁ、お仕置きの続きを始めようか。いい声で鳴いてくれよ? ひっつー:たっぷりとねっ つーびー:ほらよっ! ファング:ぐはっ…!! 0:響くムチの音と狼たちの叫び声 0:一つの独房に三匹の狼が収容されている --------------------------------------------- フォーク:すごい傷… ウルガ:ったく、おかげでしばらく動けそうにねぇわ ファング:大丈夫か…? ウルガ:触んな!!腰抜け野郎に心配されなくても大丈夫だっ…! ファング:お前はすぐカッとなる。その性格直せねぇのか ウルガ:なんだと! フォーク:やめなよ!傷がひらくよ! ウルガ:うるせぇ! フォーク:もー。。。 ファング:今はその時じゃない、耐えるんだ ウルガ:そればっかだよなぁ、いつになったらくるんだ「その時」ってのはよぉ! フォーク:明日には決行できるかもしれません! ウルガ:あぁ? ファング:明日か… フォーク:ええ。明日の昼食、配膳にくるのがペーターなんです ファング:それで完成するのか フォーク:はい ウルガ:おい、話が見えねぇんだが フォーク:スパイですよ。スパイ。 ウルガ:スパイ? フォーク:ええ。ここから抜け出すには鋭利なものが必要になるでしょう。でも、俺たちには牙も爪も何もない フォーク:だから、牙を抜かれていない羊側に脈をつくっておいたんです ファング:それがペーターってやつだな フォーク:はい ウルガ:で、どうなるんだ? フォーク:ペーターが配膳当番の度に彼の牙を受け取って、そして集めた牙でこれを作っていました ファング:おお! フォーク:立派なナイフでしょ?俺、手先は器用なもんで! ファング:よくやった、フォーク フォーク:えっへへ ウルガ:お、おい ファング:あ? ウルガ:そのペーターってのは信用できんのか、羊なんだろ? フォーク:昔、ペーターがお仕置きされてるところを親分が助けたんです ファング:もともと看守のやり方に疑問を持っていたらしい フォーク:ちょっと仕返ししたいって言ったら牙を差し出してくれました ウルガ:…どうして黙ってた!俺にも言ってくれてりゃ… フォーク:ウルガは隠し事とか向いてないでしょ? ウルガ:なに!? フォーク:絶対バレるもん… ファング:あはは。明日の決行に向けて今日はもう寝よう フォーク:はーい ファング:じゃ、おやすみ フォーク:おやすみなさい ウルガ:…親分、悪かったよ ファング:何も知らなかったんだ、気にするな ウルガ:…うい ----------------------------------------- 0:監獄、医務室 ひっつー:はぁーい、野蛮な狼さぁーん?牙抜きのお時間ですよぉ?いい子で並びましょうねぇ フォーク:まだちょっとしか生えてないのに ひっつー:育つ前に抜いておかなくちゃダメでしょぉ?私たちが安心して暮らせるように フォーク:… ひっつー:騒ぐと、痛くしちゃうわよぉ~、ってあれ、今日は静かねぇ? ウルガ:さっさとやれよ ひっつー:あれれぇどうしたのぉ?調子狂っちゃうわぁ~? つーびー:どうした ひっつー:看守ぅ、こいつ大人しくてなんか面白くないのぉ~ ウルガ:騒ぐなって言ったり騒げって言ったりどっちなんだよ ひっつー:こいつもしかして、賢者タイム的なぁ? ウルガ:ガルルルル ひっつー:こわいわぁ~看守ぅ つーびー:どうやら君は今日も懲りずにお仕置きされたいようだねぇ? ファング:ウルガ、のせられるな ウルガ:わかってるって ひっつー:あら、仲直りしちゃったのねぇ、面白くないのっ つーびー:ほら、牙抜きの時間だ ひっつー:はーい!では、抜きますねぇ~?3、2、1、それぇ~! フォーク:ううううっっ…!!! ひっつー:鳴かずによく頑張りましたねぇ~いいこいいこ~ フォーク:麻酔…かけてよ… ひっつー:狼にうつ麻酔なんてないのよぉ、当然でしょ?はい次ぃ~ 0:  ファング:俺たちは牙を抜かれ、羊たちが暮らすこの国で生かされている ファング:どれだけ反撃の時を待っただろう ファング:すぐにでも嚙みついてやりたいのに、耐えて耐えて、ひたすら耐えて、 ファング:ああ、もうすぐだ。腹が減った… ---------------------------------------- 0:独房、ペーターを待つ三匹の狼 ウルガ:いよいよか フォーク:こんな生活早く抜け出して美味しいものいっぱい食べたい ファング:アジトにゃ酒もあるぜ? ウルガ:うひょー!酒!ご馳走! フォーク:あとは時を待つだけ。。。 ファング:一度、作戦を確認しておこう フォーク:はい。ペーターから牙を受け取ったら、この先端に取り付けてナイフの完成です。看守がきたタイミングでナイフを突き付け一気につめる フォーク:あとはなるように ウルガ:随分新手な手法だな ファング:俺たちは狼だぜ。一つ凶器があれば十分 ウルガ:ああ フォーク:あっ、来た!ペーター… 0:そこに現れたのは看守だった つーびー:やぁ、さっきぶりだね狼くんたち フォーク:看守…!? ウルガ:何しにきやがった! つーびー:見回りだよ、君たちがいい子にしているか、ね ファング:いい子にしてるぜ つーびー:ファングくん、実に君は優等生だね。隣りの彼と違って反抗的ではないし… ファング:… つーびー:気に入らないなぁ、ほんとうに 0:看守、ムチを構える ウルガ:おい!お前は憂さ晴らしのためにきやがったのか…! つーびー:ん?あぁ、そうだったそうだった。見回りとそれから… つーびー:残念なお知らせだよ ウルガ:あぁ? つーびー:ペーターくんの大事な牙が悪い狼たちに奪われてしまったみたいなんだ ファング:…っ! ウルガ:どういうことだ… つーびー:そのままの意味だよ、頭が悪いなぁ フォーク:ペーター… つーびー:ウォッシュルームが血だらけでね、どうしたもんかと思ったらペーターくんが牙を抜いていたんだ 狼たち:…っ!! つーびー:(ため息)まったく狼なんかに肩入れしやがって つーびー:だから、彼の代わりに私が配膳に来たのさ フォーク:俺が無理に頼んだから… つーびー:困った部下ばかりだよ つーびー:はい、昼食だよ。今日のメニューはラム肉のソテー ファング:ラム肉だと!? ウルガ:嘘だろおい つーびー:どうしたんだい?腹が空いているのだろう?召し上がれ フォーク:ガルルルル つーびー:そんな怖い顔するなよ。せっかくのご馳走なんだからさぁ つーびー:私だってこんなことしたくなかったよ、君たちがこうさせたんだ。ほら責任もって食いな フォーク:…っ! つーびー:どうした?今まで散々食ってきただろ。羊食いの狼が、まったくもって都合のいい フォーク:ペーター… つーびー:お前はこっちだ。ナイフは回収する。お仕置きが必要だな フォーク:…っ つーびー:ほら来い!! ファング:待て!! つーびー:あ? 0:看守、ナイフの刃先をファングに向ける つーびー:よくできてるなぁこれ。あと一歩。残念でした ファング:ぐっ…!! 0:シュッ、ファングの頬が切りつけられる 0:未完成のナイフの切れ味は悪い。だが確かに痛かった つーびー:明日、こいつの死刑執行を行う。 ウルガ:やめろ!!! つーびー:お前も切られたいのか?見せしめにはちょうどいいな フォーク:…やめて つーびー:…ん? フォーク:こんな生活、耐えられないよ。俺、もう… ファング:フォーク フォーク:考えないようにしてたんだ!ここから解放されると思ってたから!だから、苦しいことも耐えてきた! ファング:… フォーク:ペーターが死んだ。そしてナイフも取り上げられて。全部俺のせいだ ファング:それは違う! フォーク:親分たちとまた、何でもない話で笑いあって美味しいものいっぱい食べたかったなぁ フォーク:でも、俺のせいで誰かが酷い目に合うなら、死んだ方がましだなんてそんなこと思っちゃったんだ ファング:悲観的になるな!俺たちは絶対に生きるんだ! フォーク:俺、親分みたいに強くないからさ。 ファング:俺だって強くないさ。死ぬのは怖い。だけどお前、逃げようとしてないか フォーク:親分… ファング:狼に誇りをもて つーびー:友情ごっこなんて泣けるなぁ。フフ、明日は狼の肉が食えるぞ? 0:看守に連れ去られるフォーク ファング:大丈夫だ、絶対迎えにいくからな、フォーク…!!! 0:狼の遠吠えが虚しく響く ---------------------------------- 0:翌朝 ひっつー:はぁーい皆さーん?ご機嫌いかがぁ~?ぐっすり眠れたかしらぁ~? 狼たち:… ひっつー:(大きな声で)眠れたかしら!! 狼たち:…はーい ひっつー:やる気ないわねぇ。まぁいいわぁ、点呼をとりま~す! 0:ひっつー、狼たちの名前を順に呼んでいく ひっつー:次、ファングさーん ファング:…はい ひっつー:そして、フォークさーん ひっつー:あれ、返事がありませんねぇ。どこ行っちゃったのかしらぁ。あ、いっけなーい☆忘れてたぁ! ひっつー:ここにいましたぁ~☆ 0:狼たちの前に縛り付けられたフォークが連れてこられる ウルガ:フォーク!! ひっつー:静粛に静粛にぃ~! ひっつー:この子は羊から牙を奪い、そして凶器を作っていましたぁ!やだぁ、何て恐ろしい子なのぉ フォーク:… ひっつー:そんな恐ろしい子はどうなるのか。皆さんに教えてあげたいと思いま~す☆ 0:フォークの周りに木の枝がしかれ、火が放たれる フォーク:あつっ…! ひっつー:うっふふふふふふ!今日の夜ご飯になってもらいま~す☆ ファング:… ひっつー:大丈夫。美味しくしてあげるからねぇ ファング:… ひっつー:メラメラ~メラメラ~☆ ファング:… ひっつー:なーんだ、さっぱりしてるのねぇ。誰か騒ぐかと思って警備隊を用意したのにぃ ファング:… ひっつー:つまんないの 0:ひっつー、火を仰ぐ フォーク:あつつつつ!!! 0:ウルガ、ファングに ウルガ:おい。 ファング:… ウルガ:何黙ってやがる!このままじゃ燃えちまうぞ! ファング:… ウルガ:おい!! ファング:… ウルガ:助けるんじゃなかったのかよ!!! 0:ウルガ、ファングを殴り飛ばす ファング:…っ!! つーびー:何事かね ひっつー:看守ぅ、また仲間割れですぅ つーびー:狼ってやつは本当に喧嘩っ早いな ひっつー:でぇもぉ、面白くなってきちゃいました~☆ ウルガ:…ほら立てよ!もう一発殴ってやる ファング:お前の脳は筋肉か? ウルガ:あ? ファング:いい加減知性をつけろよ ウルガ:あんたは勇気を持った方がいいな。小心すぎてヘドが出る ファング:勇気?持っているつもりだが ウルガ:臆病の間違いじゃねぇのか ファング:見栄ばかりよりはマシだろう ウルガ:ガルルルル… ファング:ガルルルル… フォーク:や、やめてよ!! ウルガ:黙ってろ!今こいつと決着つけんだよ ファング:ボスに勝てると思ってんのか。やはり知性をつけた方がいいな ウルガ:勝てるさ。あんたみたいな腰抜け野郎に負ける訳ねぇだろ ファング:ウルガ、その言葉覚えておけよ ウルガ:こっちのセリフだ…! 0:ファングに飛びかかるウルガ 0:牙のない口で、だがしっかりと嚙みつく ファング:嚙みつけたら苦労しねぇんだよ。全く痛くねぇな ウルガ:ガルルルル… ひっつー:こいつら何やってんのぉ☆マジうけるぅ つーびー:惨めな ファング:…うっ! ウルガ:仕置きの傷が完全に癒えたわけじゃねぇだろ。ここから食いちぎればあんたは終わりだ ファング:がああああああ!! 0:以前お仕置きを受けた腕からは身が見えている フォーク:ちょっとウルガ!本当に何やってんだ…う、あっつい ウルガ:誰も止めんじゃねぇぞ!!こいつは、こいつは俺が殺す!! ファング:ぐああああ!! フォーク:ウルガ! ひっつー:やだやだぁテンション上がってきたんですけどぉ! つーびー:見せしめに殺し合いのショーかぁ。いいねぇ 0:ファングの腕がはがれそうになる ウルガ:… ファング:どうした…っ、早くやれよ… ウルガ:…親分、本当にいいのか ファング:やれ ウルガ:ガルルルル 0:ウルガ、勢いよくファングの腕を引きちぎる ファング:ぐああああああああああ ウルガ:親分!! ファング:迷ってんじゃねぇええええ!!ほらいけ!!! ウルガ:っ…!!! 0:ウルガ、ファングの腕骨を高く掲げ吠える ウルガ:よく聞け羊ども。俺たちは絶対にお前らを許さねぇ。これは、俺たちの親分の勇気の骨だ!!!これでみんな殺してやるよ 0:ウルガの気迫にビビる羊たち つーびー:な、何を怖気づいている!警備隊、かかれぇえええ!!! ウルガ:警備隊?羊の群れなんかちっとも怖くねぇんだよ!!!かかってこいや!!!! つーびー:何をしている!早くかかれっ! 0:ウルガにむかう羊の警備隊たち ウルガ:…っ! 0:羊の牙が体中に刺さる ウルガ:くそがっ…! 0:必死に剣をふるウルガ 0:次々に倒れていく羊たち ひっつー:い、いやあああああ! つーびー:誰でもいい!早くあいつを捕まえろ!! ウルガ:二度と捕まってたまるか!これさえあればなぁ、俺たちが負けることなんてねぇんだよ!! つーびー:こ、こいつがどうなってもいいのか!! 0:フォークに火を近づける看守 ウルガ:姑息なんだよ!おらあっ! 0:看守、あっけなく斬られる ひっつー:か、看守ぅ。。。 ウルガ:相手がメスだろうと、容赦しねぇぜ ひっつー:ひっ! ウルガ:俺たちが安心して暮らすためだ 0:ひっつーも斬られる 0:ウルガ、フォークの縄をほどき、ファングのもとへ ウルガ&フォーク:親分! ファング:よくやった ウルガ:親分、ほら逃げるぜ! 0:ファングの腕はもうない ファング:俺はもう無理だよ フォーク:腕が… ファング:ウルガ、なかなかあつい芝居だったじゃねぇか、大根かと思ってたが ウルガ:そんなこと言ってる場合じゃねぇだろ! ファング:ったく最後までうるせぇな ウルガ:…フン ファング:ウルガ、皆のことはお前にまかせた ウルガ:…親分 ファング:フォーク、こいつのサポートを頼まれてくれないか フォーク:…わかりました親分 ファング:もう俺は親分じゃねぇ フォーク:…っ ファング:よし、いけ! ファング:追手がくるぞ。遠くまで逃げろよ。牙が生えたら反撃だ フォーク:…ううう ファング:いけ!!! ウルガ:フォーク、いくぞ! フォーク:…今までありがとうございました!!! ファング:おう 0:ウルガとフォーク、他の狼たちも駆け出していく ----------------------------------------- 0:残ったファング。柱のかげから何者かが見ている ファング:そこにいるのは誰だ? ファング:…羊の子か。 0:あたりは羊の死骸でいっぱい ファング:あんま見んじゃねぇ。トラウマになるぞ ファング:どうした。…ああ、狼が憎いか ファング:変わらねぇんだ。この世界は ファング:お前は何を感じる? ファング:復讐するなとは言わないぜ。復讐しろとも言わねぇが ファング:俺は力をつけて、そして果たしたのさ ファング:お前も同じ道をたどるなら、一つアドバイスをくれてやろう ファング:仲間を、大切にしておけ 0:羊の子はふるえながらコクリと頷く 0:ファング、静かに笑うと息を引き取った 0:  0:羊の国から遠く遠く離れた丘の上 ウルガ:アオーーーーーン(遠吠え) フォーク:アオーーーーーン(遠吠え) 0:狼たちの遠吠えが響く 0:こうして俺たちの世界は続いていくんだ