台本概要
258 views
タイトル | 彼女の好きな犬 |
---|---|
作者名 | うどんマン (@hello_udon_don) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 4人用台本(男2、女2) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
彼女が愛しているのは"僕"ですか?
258 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
芽樹 | 男 | 151 | 【いぶき】何かを思い出したい |
ハル子 | 女 | 51 | 大人な女性。犬が好き |
咲良 | 女 | 89 | 【さら】いぶきの幼馴染 |
中山、他全て兼 | 男 | - | 中山/猿/ライオン/店員 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ハル子:…芽樹くん
芽樹:どうしたの、ハル子さん
ハル子:そんなに見つめないで。溶けちゃうわ
芽樹:ごめんなさい。つい
ハル子:あなた、この前もそうやって私のこと見てたでしょ
芽樹:この前…?
ハル子:動物園よ
芽樹:動物園…
ハル子:先月行ったでしょ?ああ、…ええっと
芽樹:思い出した思い出した。迫力あったよね、ライオン
ハル子:そうよ、ライオン。芽樹くんがあんなに臆病だったなんて思わなかったわ
芽樹:笑わないでよ
ハル子:ウフフ
芽樹:…動物園、楽しかった?
ハル子:ええ、また行きましょ
芽樹:…意外だな
ハル子:どうして…?
芽樹:ハル子さん、大人なイメージだったから
ハル子:私、動物好きなの
芽樹:へぇー、そうなんだ
ハル子:特に犬がいいわね
芽樹:だったら別に動物園じゃなくても
ハル子:なに?
芽樹:あ、いや
ハル子:芽樹くん
芽樹:俺は動物よりもハル子さんの方が好きだよ
ハル子:ありがとう
芽樹:…うん
ハル子:ほら、口開けて?
芽樹:はい
ハル子:あーん
0:ハル子、カバンの中の袋から団子を取り出し、芽樹に食べさせる
ハル子:よーく噛んでね
芽樹:うん。…あの、ところでさ
ハル子:何かしら
芽樹:動物園、何ていうとこだっけ?ほら、難しい名前だったからさ…
ハル子:“モンキーパーク”よ
芽樹:そうだった、そうだった。…ありがとう
ーーーーーーーーーー
0:モンキーパーク入場口
ーーーーーーーーーー
咲良:うーーわ、きもちわるっ!
芽樹:何だよ
咲良:待ち受け
芽樹:可愛いだろ
咲良:あのさ、どうしてそういう写真なのかな
芽樹:他に持ってなくて
咲良:盗撮したやつだよね?その写真
芽樹:可愛いだろ
咲良:可愛いけど
芽樹:お美しいだろ
咲良:お美しいけど
芽樹:ずっと見ていたいだろ
咲良:…そうだね
芽樹:ずーっと、見ていたいよな
咲良:そ・う・だ・ね!!!
芽樹:なんだよ!おっきい声出すなよ!猿かよ!
咲良:女の子にむかって猿だなんてどういうことかしら!
芽樹:すいません
咲良:一緒に写真撮ったらいいじゃん
芽樹:う、うん
咲良:彼女なんでしょ?
芽樹:うん、そうなんだけど。なんていうか
咲良:…
芽樹:うーん
咲良:…言いたくないならいいよ別に
芽樹:うん
咲良:動物園、ハル子さんと来れば良かったのに
芽樹:先月行ったばかりだよ
咲良:そうなの?
芽樹:たぶん
咲良:なにそれ
芽樹:…俺、忘れっぽいからさ
咲良:じゃあ何?今日私が呼ばれたのって…
芽樹:先月ハル子さんとデートした道を一緒に辿って!お願い!
咲良:嫌よ!あんたの記憶を呼び起こすためのデートなんて!
芽樹:いやデートじゃないよ
咲良:はぁ?
芽樹:お願い!ねぇお願い!
咲良:いーや!
芽樹:こんなこと頼めるのお前しかいないんだよ
咲良:いーーや!
芽樹:お前しかいないんだ
咲良:ハル子さんともう一回来れば良かったじゃん!
芽樹:う、うん
咲良:うん
芽樹:やっぱそうだよね
咲良:…そうだよ、絶対
芽樹:ハル子さんと
咲良:まぁ、今日は来ちゃったし?付き合ってあげるけど
芽樹:いいよ別に
咲良:は?
芽樹:一人で回るよ
咲良:え?は?
芽樹:だから一人で…
咲良:入口まで来てそんなこと言う?
芽樹:嫌なんでしょ?
咲良:…ずるいよ
芽樹:ごめん
咲良:…今日だけだよ
ーーーーーーーーーー
0:モンキーパーク園内
ーーーーーーーーーー
中山:皆さんご覧ください。こちらがコモンリスザルです。オマキザル科の中では最も小さい仲間で、とても機敏に…
0:
咲良:ちょっと!芽樹!
芽樹:何?
咲良:お猿さんだよ!
芽樹:興味ない
咲良:せっかくモンキーパークに来たのに
芽樹:観光が目的じゃないから
咲良:あっそ
芽樹:はしゃぎ過ぎだよ
咲良:いいじゃん
芽樹:子供かよ
咲良:あっかんべーーーーだ!
芽樹:子供だ…
咲良:あんたもでしょ
芽樹:犬はどこかな
咲良:聞いてないし
芽樹:犬を見に行かないと
咲良:動物園で犬?
芽樹:うん
咲良:犬だったら家で飼ってるよ。イヴちゃんっていうの!生まれたばかりの可愛いチワワなんだから~!あっ、そうだ!なんなら今度見に来なよ?へぇー、芽樹は犬が好きだったのか~、そうなんだ~。早く言ってくれれば良かったのに~
咲良:…あれ。いない
猿:ウキーーーー!
咲良:芽樹ーーー!
猿:キ?
咲良:…せっかく来たんだし、ちょっとくらい楽しんでもいいよね。
猿:ウキーーーー!
咲良:かわいーーーー!!
ーーーーーーーーーー
0:ライオンのオリの前
ーーーーーーーーーー
芽樹:…
ライオン:ガオー!!
芽樹:…
ライオン:ガオー!!!
芽樹:…ライオンだ
中山:そのように、無心でライオンを見つめていらっしゃる方は初めてです
芽樹:え?
中山:この子、日本でトップクラスの大きさなんですよ?
芽樹:迫力ありますよね
中山:…
芽樹:うん、大きいです
中山:…お客様、ライオンが怖くないんですか?
芽樹:いえ、怖いです怖いです
中山:…
芽樹:ここに来るまでは怖いと思っていました
中山:というと…?
芽樹:オリが頑丈だから。安心して見れます
中山:そうですか
芽樹:ライオンは空を飛べないから
中山:飛べたとしても、ここから離れようとはしないでしょ
芽樹:え
中山:ああ…、ここにはエサも、世話をしてくれる人もいますから
芽樹:従業員さんは、ライオンは好きですか?
中山:うーん、実はあまり興味がないんです
芽樹:正直ですね
中山:他に夢中になれる人がいるからかな
芽樹:え?
中山:いえ、ただの独り言ですよ
芽樹:そうですか
中山:では芽樹さん、これにて
芽樹:あ、はい
中山:ブービエ・デ・フランダース
芽樹:はい?
中山:当園でしか見られない珍しい犬です。ぜひご覧になってください
芽樹:そうですか
ーーーーーーーーーー
0:芽樹の家
ーーーーーーーーーー
ハル子:ほら、口開けて?
芽樹:はい
ハル子:あーん
0:ハル子、カバンの中の袋から団子を取り出し、芽樹に食べさせる
ハル子:よーく噛んでね
芽樹:うん
ハル子:芽樹くん、そんなに見つめちゃ嫌よ
芽樹:ごめん、つい。ハル子さんが魅力的な人だから
ハル子:あら
芽樹:俺、忘れっぽいからさ。目にしっかり焼き付けておきたくて
ハル子:そんなこと言えるようになったのね、芽樹ちゃん
芽樹:からかわないでよ
ハル子:フフ、可愛い
芽樹:あれ、ハル子さん待ち受け変えたの?
ハル子:そうやって人のケータイのぞき見ないの
芽樹:ごめん、気になっちゃって
ハル子:私の一押しのブラックコーヒーよ
芽樹:へぇー。苦そう。ハル子さんほんと大人だね
ハル子:芽樹くんは子供のままね
芽樹:…今は犬よりコーヒーの方が好きなのかな?
ハル子:わんちゃんは大好きよ
芽樹:だよね。待ち受け『ブービエ・デ・フランダース』だったもんね
ハル子:あら
芽樹:動物園、楽しかったね。また俺と行こうね
ハル子:そうね
芽樹:ハル子さん、これ、プレゼント
ハル子:何かしら
芽樹:犬のネックレス
ハル子:…は?
芽樹:俺のとお揃いなんだ…!色違い、良かったらつけてくれないかなって…
ハル子:ふざけないで!!
芽樹:え。だって犬が好き…
ハル子:これを私につけろって!?
芽樹:ごめんなさい…
ハル子:…ああ、もう、いいわ
芽樹:ハル子さん…!どうして怒ってるの?悪いことしたなら謝…
ハル子:今日は帰るわね
芽樹:ごめん、ハル子さん
ハル子:続きは土曜日にしましょ。いつものカフェで待ってるわ
芽樹:いつもの…?
ハル子:先週行ったばかりじゃない。…あら、違ったかしら
芽樹:ああ、あそこか。うん、わかった
ハル子:じゃ、さよなら
ーーーーーーーーーー
0:カフェ
ーーーーーーーーーー
咲良:うん、美味しい!
芽樹:はいはい良かったねー
咲良:あんたは梅干しかしら
芽樹:は?
咲良:塩対応。重度な塩対応
芽樹:いつものことだろ
咲良:冷た。あんたは冷凍食品かしら
芽樹:は?
咲良:氷点下よりも冷たいわよ
芽樹:冷凍食品は氷点下だよ
咲良:…。
芽樹:…。
咲良:コーヒー美味しいわーーーー
芽樹:ごまかしたな
咲良:ちょっと苦いけど
芽樹:シロップ足す?
咲良:子ども扱いしないで
芽樹:使わないの?
咲良:使うわよ!
芽樹:めんどくさ
咲良:はぁー?
0:
店員:お客様、店内ではお静かにお願いします
咲良:あ、すみません
芽樹:すいません
店員:いえ。では、ごゆっくり
芽樹:あの、いつものお願いしてもいいですか
店員:いつもの…。ええ、かしこまりました
0:
芽樹:良かった
咲良:芽樹、何頼んだの?
芽樹:ブラックコーヒーだよ
咲良:うわ、苦そう
芽樹:苦くないよ
咲良:よくブラックなんか飲めるよね
芽樹:コーヒー好きだもん
咲良:知ってる
芽樹:…
咲良:私はグイグイ足すわよ~!
芽樹:甘そう
咲良:あ。入れ過ぎた
芽樹:真っ白じゃん。糖尿病お疲れ様です
咲良:やめろ!
芽樹:カルテ出しときますね
咲良:結構です
芽樹:カルテ、出しときますね
咲良:二回言うな…!
芽樹:カルテ、
咲良:結構、結構、コケコッコー!
芽樹:…
咲良:お願い、何か言ってよ
芽樹:静かにしないと怒られるよ
咲良:はい、すみません
0:
店員:お待たせいたしました。タピオカプチーノです
芽樹:ありがとうございます。綺麗な色ですね
店員:それはどうも。では、ごゆっくり
芽樹:あの、すみません
店員:はい、何でしょう
芽樹:これじゃないです
咲良:いいじゃん、美味しいよ
芽樹:これじゃねぇんだって!!
咲良:やめなよ…!
店員:申し訳ございません。“いつもの”と言われましても、お客様はご来店が初めてでいらっしゃいますので、当店人気のものを提供させていただきました
咲良:そ、そうなんですか
芽樹:初めて…じゃねぇよ
咲良:芽樹?
芽樹:俺はここに来た!絶対に来たんだ!!
店員:…お客様、会員カードはお持ちですか
芽樹:ないよ、そんなの
店員:いつもご来店いただいているお客様であれば、お持ちかと
芽樹:ないよ、俺そういうの作らないし
店員:一度きりのお客様ならまだしも、常連様のお顔を忘れるようなことはありません
咲良:断言された
芽樹:忘れることはない?俺だって、忘れたくて忘れてるんじゃねぇよ!
咲良:芽樹、落ち着いて?
芽樹:俺は来たんだ!ハル子さんと一緒に!なのにどうして!俺は!!
店員:ハル子様でしたら、いつもご利用いただいております
芽樹:ハル子さん…
店員:お客様は…
芽樹:もういい。また来させてもらうよ
咲良:ちょっと、芽樹!
0:
咲良:あ、とっても美味しかったです。お会計はこれで!
店員:ありがとうございました
0:
咲良:芽樹!!
芽樹:何だよ!
咲良:馬鹿だなお前!
芽樹:はぁ?
咲良:馬鹿だよ
芽樹:…今日はありがとう。もう帰っていいよ
咲良:帰らない
芽樹:何言ってんだよ
咲良:私もバカなの。大馬鹿者なの。…似てるんだ私たち。だから放っておけない
芽樹:咲良
咲良:やっぱり行ったことなかったんだね。さっきのお店
芽樹:忘れてただけだよ
咲良:マップ見ながら歩いてたし
芽樹:…
咲良:レビュー見てたし
芽樹:…
咲良:扉の開け方わかってなかったし
芽樹:え
咲良:一番人気のタピオカプチーノ、初めて見た顔してたよ
芽樹:お前、人のことよく見てるな
咲良:まだある。私があんたに呼ばれたこと
芽樹:…。ごめん、俺ダメだな
咲良:うん、ダメダメだ
芽樹:そんなはっきり
咲良:大馬鹿者だ。…私と一緒
0:
咲良:芽樹、もう無理しないで?
0:ーーーーーーーーーー
ハル子:お待たせ
芽樹:待ってないよ
店員:いらっしゃいませ、ハル子様。ご注文はお決まりですか
ハル子:いつもの、お願い
店員:かしこまりました
芽樹:僕も同じやつを
店員:かしこまりました
ハル子:あら、強がっちゃって
芽樹:俺だって飲めるよ。ブラックコーヒー
ハル子:そうだったかしら
芽樹:そうだよ。ハル子さん、俺、苦いの飲めるんだよ
ハル子:調子いいんだから
芽樹:ハル子さん
ハル子:どうしたの?
芽樹:(この人は、ずっと誰と話してるんだろう)
ハル子:芽樹くん?
芽樹:(二人でいるのに一人でいるみたいだよ。俺といる時くらい、俺と会話してくれてもいいのに)
ハル子:ほら、口開けて?
芽樹:…はい
ハル子:あーん
0:ハル子、カバンの中の袋から団子を取り出し、芽樹に食べさせる
ハル子:よーく噛んでね
芽樹:(M)俺は泣きながら食べていた。ハル子さんが大好きだから
芽樹:(M)美味しい。首にかかっているネックレスが光っている。僕は彼女の好きな犬でしかないんだ
ハル子:…芽樹くん
芽樹:どうしたの、ハル子さん
ハル子:そんなに見つめないで。溶けちゃうわ
芽樹:ごめんなさい。つい
ハル子:あなた、この前もそうやって私のこと見てたでしょ
芽樹:この前…?
ハル子:動物園よ
芽樹:動物園…
ハル子:先月行ったでしょ?ああ、…ええっと
芽樹:思い出した思い出した。迫力あったよね、ライオン
ハル子:そうよ、ライオン。芽樹くんがあんなに臆病だったなんて思わなかったわ
芽樹:笑わないでよ
ハル子:ウフフ
芽樹:…動物園、楽しかった?
ハル子:ええ、また行きましょ
芽樹:…意外だな
ハル子:どうして…?
芽樹:ハル子さん、大人なイメージだったから
ハル子:私、動物好きなの
芽樹:へぇー、そうなんだ
ハル子:特に犬がいいわね
芽樹:だったら別に動物園じゃなくても
ハル子:なに?
芽樹:あ、いや
ハル子:芽樹くん
芽樹:俺は動物よりもハル子さんの方が好きだよ
ハル子:ありがとう
芽樹:…うん
ハル子:ほら、口開けて?
芽樹:はい
ハル子:あーん
0:ハル子、カバンの中の袋から団子を取り出し、芽樹に食べさせる
ハル子:よーく噛んでね
芽樹:うん。…あの、ところでさ
ハル子:何かしら
芽樹:動物園、何ていうとこだっけ?ほら、難しい名前だったからさ…
ハル子:“モンキーパーク”よ
芽樹:そうだった、そうだった。…ありがとう
ーーーーーーーーーー
0:モンキーパーク入場口
ーーーーーーーーーー
咲良:うーーわ、きもちわるっ!
芽樹:何だよ
咲良:待ち受け
芽樹:可愛いだろ
咲良:あのさ、どうしてそういう写真なのかな
芽樹:他に持ってなくて
咲良:盗撮したやつだよね?その写真
芽樹:可愛いだろ
咲良:可愛いけど
芽樹:お美しいだろ
咲良:お美しいけど
芽樹:ずっと見ていたいだろ
咲良:…そうだね
芽樹:ずーっと、見ていたいよな
咲良:そ・う・だ・ね!!!
芽樹:なんだよ!おっきい声出すなよ!猿かよ!
咲良:女の子にむかって猿だなんてどういうことかしら!
芽樹:すいません
咲良:一緒に写真撮ったらいいじゃん
芽樹:う、うん
咲良:彼女なんでしょ?
芽樹:うん、そうなんだけど。なんていうか
咲良:…
芽樹:うーん
咲良:…言いたくないならいいよ別に
芽樹:うん
咲良:動物園、ハル子さんと来れば良かったのに
芽樹:先月行ったばかりだよ
咲良:そうなの?
芽樹:たぶん
咲良:なにそれ
芽樹:…俺、忘れっぽいからさ
咲良:じゃあ何?今日私が呼ばれたのって…
芽樹:先月ハル子さんとデートした道を一緒に辿って!お願い!
咲良:嫌よ!あんたの記憶を呼び起こすためのデートなんて!
芽樹:いやデートじゃないよ
咲良:はぁ?
芽樹:お願い!ねぇお願い!
咲良:いーや!
芽樹:こんなこと頼めるのお前しかいないんだよ
咲良:いーーや!
芽樹:お前しかいないんだ
咲良:ハル子さんともう一回来れば良かったじゃん!
芽樹:う、うん
咲良:うん
芽樹:やっぱそうだよね
咲良:…そうだよ、絶対
芽樹:ハル子さんと
咲良:まぁ、今日は来ちゃったし?付き合ってあげるけど
芽樹:いいよ別に
咲良:は?
芽樹:一人で回るよ
咲良:え?は?
芽樹:だから一人で…
咲良:入口まで来てそんなこと言う?
芽樹:嫌なんでしょ?
咲良:…ずるいよ
芽樹:ごめん
咲良:…今日だけだよ
ーーーーーーーーーー
0:モンキーパーク園内
ーーーーーーーーーー
中山:皆さんご覧ください。こちらがコモンリスザルです。オマキザル科の中では最も小さい仲間で、とても機敏に…
0:
咲良:ちょっと!芽樹!
芽樹:何?
咲良:お猿さんだよ!
芽樹:興味ない
咲良:せっかくモンキーパークに来たのに
芽樹:観光が目的じゃないから
咲良:あっそ
芽樹:はしゃぎ過ぎだよ
咲良:いいじゃん
芽樹:子供かよ
咲良:あっかんべーーーーだ!
芽樹:子供だ…
咲良:あんたもでしょ
芽樹:犬はどこかな
咲良:聞いてないし
芽樹:犬を見に行かないと
咲良:動物園で犬?
芽樹:うん
咲良:犬だったら家で飼ってるよ。イヴちゃんっていうの!生まれたばかりの可愛いチワワなんだから~!あっ、そうだ!なんなら今度見に来なよ?へぇー、芽樹は犬が好きだったのか~、そうなんだ~。早く言ってくれれば良かったのに~
咲良:…あれ。いない
猿:ウキーーーー!
咲良:芽樹ーーー!
猿:キ?
咲良:…せっかく来たんだし、ちょっとくらい楽しんでもいいよね。
猿:ウキーーーー!
咲良:かわいーーーー!!
ーーーーーーーーーー
0:ライオンのオリの前
ーーーーーーーーーー
芽樹:…
ライオン:ガオー!!
芽樹:…
ライオン:ガオー!!!
芽樹:…ライオンだ
中山:そのように、無心でライオンを見つめていらっしゃる方は初めてです
芽樹:え?
中山:この子、日本でトップクラスの大きさなんですよ?
芽樹:迫力ありますよね
中山:…
芽樹:うん、大きいです
中山:…お客様、ライオンが怖くないんですか?
芽樹:いえ、怖いです怖いです
中山:…
芽樹:ここに来るまでは怖いと思っていました
中山:というと…?
芽樹:オリが頑丈だから。安心して見れます
中山:そうですか
芽樹:ライオンは空を飛べないから
中山:飛べたとしても、ここから離れようとはしないでしょ
芽樹:え
中山:ああ…、ここにはエサも、世話をしてくれる人もいますから
芽樹:従業員さんは、ライオンは好きですか?
中山:うーん、実はあまり興味がないんです
芽樹:正直ですね
中山:他に夢中になれる人がいるからかな
芽樹:え?
中山:いえ、ただの独り言ですよ
芽樹:そうですか
中山:では芽樹さん、これにて
芽樹:あ、はい
中山:ブービエ・デ・フランダース
芽樹:はい?
中山:当園でしか見られない珍しい犬です。ぜひご覧になってください
芽樹:そうですか
ーーーーーーーーーー
0:芽樹の家
ーーーーーーーーーー
ハル子:ほら、口開けて?
芽樹:はい
ハル子:あーん
0:ハル子、カバンの中の袋から団子を取り出し、芽樹に食べさせる
ハル子:よーく噛んでね
芽樹:うん
ハル子:芽樹くん、そんなに見つめちゃ嫌よ
芽樹:ごめん、つい。ハル子さんが魅力的な人だから
ハル子:あら
芽樹:俺、忘れっぽいからさ。目にしっかり焼き付けておきたくて
ハル子:そんなこと言えるようになったのね、芽樹ちゃん
芽樹:からかわないでよ
ハル子:フフ、可愛い
芽樹:あれ、ハル子さん待ち受け変えたの?
ハル子:そうやって人のケータイのぞき見ないの
芽樹:ごめん、気になっちゃって
ハル子:私の一押しのブラックコーヒーよ
芽樹:へぇー。苦そう。ハル子さんほんと大人だね
ハル子:芽樹くんは子供のままね
芽樹:…今は犬よりコーヒーの方が好きなのかな?
ハル子:わんちゃんは大好きよ
芽樹:だよね。待ち受け『ブービエ・デ・フランダース』だったもんね
ハル子:あら
芽樹:動物園、楽しかったね。また俺と行こうね
ハル子:そうね
芽樹:ハル子さん、これ、プレゼント
ハル子:何かしら
芽樹:犬のネックレス
ハル子:…は?
芽樹:俺のとお揃いなんだ…!色違い、良かったらつけてくれないかなって…
ハル子:ふざけないで!!
芽樹:え。だって犬が好き…
ハル子:これを私につけろって!?
芽樹:ごめんなさい…
ハル子:…ああ、もう、いいわ
芽樹:ハル子さん…!どうして怒ってるの?悪いことしたなら謝…
ハル子:今日は帰るわね
芽樹:ごめん、ハル子さん
ハル子:続きは土曜日にしましょ。いつものカフェで待ってるわ
芽樹:いつもの…?
ハル子:先週行ったばかりじゃない。…あら、違ったかしら
芽樹:ああ、あそこか。うん、わかった
ハル子:じゃ、さよなら
ーーーーーーーーーー
0:カフェ
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咲良:うん、美味しい!
芽樹:はいはい良かったねー
咲良:あんたは梅干しかしら
芽樹:は?
咲良:塩対応。重度な塩対応
芽樹:いつものことだろ
咲良:冷た。あんたは冷凍食品かしら
芽樹:は?
咲良:氷点下よりも冷たいわよ
芽樹:冷凍食品は氷点下だよ
咲良:…。
芽樹:…。
咲良:コーヒー美味しいわーーーー
芽樹:ごまかしたな
咲良:ちょっと苦いけど
芽樹:シロップ足す?
咲良:子ども扱いしないで
芽樹:使わないの?
咲良:使うわよ!
芽樹:めんどくさ
咲良:はぁー?
0:
店員:お客様、店内ではお静かにお願いします
咲良:あ、すみません
芽樹:すいません
店員:いえ。では、ごゆっくり
芽樹:あの、いつものお願いしてもいいですか
店員:いつもの…。ええ、かしこまりました
0:
芽樹:良かった
咲良:芽樹、何頼んだの?
芽樹:ブラックコーヒーだよ
咲良:うわ、苦そう
芽樹:苦くないよ
咲良:よくブラックなんか飲めるよね
芽樹:コーヒー好きだもん
咲良:知ってる
芽樹:…
咲良:私はグイグイ足すわよ~!
芽樹:甘そう
咲良:あ。入れ過ぎた
芽樹:真っ白じゃん。糖尿病お疲れ様です
咲良:やめろ!
芽樹:カルテ出しときますね
咲良:結構です
芽樹:カルテ、出しときますね
咲良:二回言うな…!
芽樹:カルテ、
咲良:結構、結構、コケコッコー!
芽樹:…
咲良:お願い、何か言ってよ
芽樹:静かにしないと怒られるよ
咲良:はい、すみません
0:
店員:お待たせいたしました。タピオカプチーノです
芽樹:ありがとうございます。綺麗な色ですね
店員:それはどうも。では、ごゆっくり
芽樹:あの、すみません
店員:はい、何でしょう
芽樹:これじゃないです
咲良:いいじゃん、美味しいよ
芽樹:これじゃねぇんだって!!
咲良:やめなよ…!
店員:申し訳ございません。“いつもの”と言われましても、お客様はご来店が初めてでいらっしゃいますので、当店人気のものを提供させていただきました
咲良:そ、そうなんですか
芽樹:初めて…じゃねぇよ
咲良:芽樹?
芽樹:俺はここに来た!絶対に来たんだ!!
店員:…お客様、会員カードはお持ちですか
芽樹:ないよ、そんなの
店員:いつもご来店いただいているお客様であれば、お持ちかと
芽樹:ないよ、俺そういうの作らないし
店員:一度きりのお客様ならまだしも、常連様のお顔を忘れるようなことはありません
咲良:断言された
芽樹:忘れることはない?俺だって、忘れたくて忘れてるんじゃねぇよ!
咲良:芽樹、落ち着いて?
芽樹:俺は来たんだ!ハル子さんと一緒に!なのにどうして!俺は!!
店員:ハル子様でしたら、いつもご利用いただいております
芽樹:ハル子さん…
店員:お客様は…
芽樹:もういい。また来させてもらうよ
咲良:ちょっと、芽樹!
0:
咲良:あ、とっても美味しかったです。お会計はこれで!
店員:ありがとうございました
0:
咲良:芽樹!!
芽樹:何だよ!
咲良:馬鹿だなお前!
芽樹:はぁ?
咲良:馬鹿だよ
芽樹:…今日はありがとう。もう帰っていいよ
咲良:帰らない
芽樹:何言ってんだよ
咲良:私もバカなの。大馬鹿者なの。…似てるんだ私たち。だから放っておけない
芽樹:咲良
咲良:やっぱり行ったことなかったんだね。さっきのお店
芽樹:忘れてただけだよ
咲良:マップ見ながら歩いてたし
芽樹:…
咲良:レビュー見てたし
芽樹:…
咲良:扉の開け方わかってなかったし
芽樹:え
咲良:一番人気のタピオカプチーノ、初めて見た顔してたよ
芽樹:お前、人のことよく見てるな
咲良:まだある。私があんたに呼ばれたこと
芽樹:…。ごめん、俺ダメだな
咲良:うん、ダメダメだ
芽樹:そんなはっきり
咲良:大馬鹿者だ。…私と一緒
0:
咲良:芽樹、もう無理しないで?
0:ーーーーーーーーーー
ハル子:お待たせ
芽樹:待ってないよ
店員:いらっしゃいませ、ハル子様。ご注文はお決まりですか
ハル子:いつもの、お願い
店員:かしこまりました
芽樹:僕も同じやつを
店員:かしこまりました
ハル子:あら、強がっちゃって
芽樹:俺だって飲めるよ。ブラックコーヒー
ハル子:そうだったかしら
芽樹:そうだよ。ハル子さん、俺、苦いの飲めるんだよ
ハル子:調子いいんだから
芽樹:ハル子さん
ハル子:どうしたの?
芽樹:(この人は、ずっと誰と話してるんだろう)
ハル子:芽樹くん?
芽樹:(二人でいるのに一人でいるみたいだよ。俺といる時くらい、俺と会話してくれてもいいのに)
ハル子:ほら、口開けて?
芽樹:…はい
ハル子:あーん
0:ハル子、カバンの中の袋から団子を取り出し、芽樹に食べさせる
ハル子:よーく噛んでね
芽樹:(M)俺は泣きながら食べていた。ハル子さんが大好きだから
芽樹:(M)美味しい。首にかかっているネックレスが光っている。僕は彼女の好きな犬でしかないんだ