台本概要
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タイトル | (朗読)覇王別姫~虞美人草~ |
---|---|
作者名 | 夜霧ミスト@夜霧姫 (@Yogirimist) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 1人用台本(不問1) ※兼役あり |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず作者へ連絡要 |
説明 |
虞美人草の朗読です 87 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
0 | 不問 | - | 朗読としてお使いください |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:昔々あるところに、それは大層美しき女性がいました
0:その女性の名は「虞(ぐ)」
0:周りの人たちからは「虞美人(ぐびじん)」「虞姫(ぐき)」と、呼ばれていました
0:彼女が生まれた頃、中華は混乱を極めていました
0:7つあった国のうち、強大な力を持つ「秦(しん)」が6国を滅ぼし、天下を統一してしまったのです
0:そして、秦王・嬴政(えいせい)は、自らを「地に降りた始めの皇帝」・・・「始皇帝(しこうてい)」を名乗り、中華を治めていくのです
0:しかし、その政治はとても過酷なものばかり
0:その行き過ぎた政策は、秦の人々を苦しめました
0:始皇帝急逝後、二代目皇帝となった「胡亥(こがい)」は宦官(かんがん)の趙高(ちょうこう)とともに、さらなる圧政を国民に強いました
0:そのことに国民は大いに怒り、武器を手にしたのです
0:そしてその頃、楚より一人の大男が歴史の表舞台に姿を表します
0:勉学はからっきし、大きな声を上げれば人が恐れ慄き、武を振るえばたちまち全てをなぎ倒す
0:その男の名は「項羽(こう・う)」
0:項羽は圧倒的な武力で秦を圧倒していきました
0:しかし、それを快く思わない周囲によって、項羽は力を発揮できずにいました
0:そんな項羽のそばから片時も離れず、時には叱咤し、時には激励し、献身的に夫を支えたのが、「虞姫」でした
0:「虞」と「項羽」の馴れ初めは、「項羽」の一目惚れでした
項羽:「なんと美しい女性だろうか、私の妻としよう」
0:「虞一公(ぐ・いっこう)」の娘であった「虞姫」はとても聡明で貞淑な女性でした
虞:「母曰く、私は貴人となる定めゆえ、誰とも契りを結ばず、あなたをお待ちしておりました」
0:二人は婚姻を結び、晴れて夫婦となったのでした
0:この頃の「項羽」は楚秦戦争時にいざこざがあった、「劉邦(りゅうほう)」という男と戦をしていました
0:項羽は己が武を以て、劉邦率いる漢軍に勝ち続けました
0:しかし、項羽の人柄をよく思わない人々は、次々と項羽から離れていきました
虞:「虞姫は、いついつまでも、大王と共にあります」
0:戦に勝っても、策に負け続ける項羽の心は、疲弊しきっていました
0:そんな項羽を傍で励まし続けたのです
0:そしてついに、項羽率いる楚軍は、窮地に追い詰められたのです
0:垓下(がいか)にて楚軍は漢軍に包囲されていました
項:「むむむ、この歌は」
0:なんと、4方から、祖国の楚歌が聞こえてきたのです
項:「・・・もはや、わが祖国も漢軍に頭を垂れたか」
0:これは、漢軍軍師・張良(ちょうりょう)の策で、漢軍全体に楚歌を覚えさせ、歌うことで楚軍の士気を削ぐというものでした
0:「四面楚歌」の故事成語のもとになった出来事です
0:この策により、項羽はすっかり意気消沈してしまいました
項:「虞姫を死なすくらいなら、劉邦に引き渡して生きていてもらいたい」
0:項羽は虞姫を死なせたくなかったので、劉邦にのもとに落ち延びるよう提案しました
0:憎き相手のもとで生きていてもらいたいと願うほど、それほどまでに愛していたのです
虞:「劉邦のもとに行くくらいなら、私はここで死にます」
0:虞姫はあえて項羽の傍にいることを選択しました
0:虞姫もまた、死しても一緒に有りたいと願うほどに、項羽のことを愛していたのです
0:その言葉を聞いた項羽は、虞姫の「覚悟」と「愛」の深さにいたく感動し、己の選択を恥じました
0:そして、彼はこう、詠んだのです
項:「力は山を抜き気は世を蓋う(おおう)」
項:「時利あらずして騅(すい)逝かず」
項:「騅の逝かざる如何(いか)すべき」
項:「虞よ虞よ汝を如何せん」
0:「私の力は山を抜くほど強く、気は世を覆うほどだ」
0:「しかし今は戦に負けようとしている。それを知ってか騅も前に行ってはくれない」
0:「騅が逝かぬのでは、私はどうすればよいのだ」
0:「虞よ、虞よ!私はあなたをどうすればよいのだ!」
0:「騅」とは項羽の駆る駿馬のことで、勇猛果敢で知られていました
0:そんな「騅」が前に進まない、どうしようと「騅」と自分の心境を交えた詩を、詠んだのです
0:それに対し、虞姫は
虞:「漢兵、已(すで)に地を略し、四方は楚の歌聲(うたごえ)」
虞:「大王の意気は盡(つ)き、賤妾(せんしょう)、いずくんぞ生をやすんぜん」
0:「漢兵は已に楚を攻略し、四方より楚歌の歌声が聞こえてまいります」
0:「大王の意気は尽いて、死のうとなさっています。私は、大王のいない世でどうやって生きていけばよいのですか!」
0:「あなたのいない世界なんて私は生きていたくない」と返歌しました
0:そして、項羽が漢軍に向けて突撃した後、「足手まといにならず」と、弟とともに自害したのでした
0:そして、彼女らを弔う墓には、真っ赤なヒナゲシ(ポピー)の花が咲いたのでした
0:人々はその花をこう呼ぶのです
0:そう、「グビジンソウ」・・・と
0:昔々あるところに、それは大層美しき女性がいました
0:その女性の名は「虞(ぐ)」
0:周りの人たちからは「虞美人(ぐびじん)」「虞姫(ぐき)」と、呼ばれていました
0:彼女が生まれた頃、中華は混乱を極めていました
0:7つあった国のうち、強大な力を持つ「秦(しん)」が6国を滅ぼし、天下を統一してしまったのです
0:そして、秦王・嬴政(えいせい)は、自らを「地に降りた始めの皇帝」・・・「始皇帝(しこうてい)」を名乗り、中華を治めていくのです
0:しかし、その政治はとても過酷なものばかり
0:その行き過ぎた政策は、秦の人々を苦しめました
0:始皇帝急逝後、二代目皇帝となった「胡亥(こがい)」は宦官(かんがん)の趙高(ちょうこう)とともに、さらなる圧政を国民に強いました
0:そのことに国民は大いに怒り、武器を手にしたのです
0:そしてその頃、楚より一人の大男が歴史の表舞台に姿を表します
0:勉学はからっきし、大きな声を上げれば人が恐れ慄き、武を振るえばたちまち全てをなぎ倒す
0:その男の名は「項羽(こう・う)」
0:項羽は圧倒的な武力で秦を圧倒していきました
0:しかし、それを快く思わない周囲によって、項羽は力を発揮できずにいました
0:そんな項羽のそばから片時も離れず、時には叱咤し、時には激励し、献身的に夫を支えたのが、「虞姫」でした
0:「虞」と「項羽」の馴れ初めは、「項羽」の一目惚れでした
項羽:「なんと美しい女性だろうか、私の妻としよう」
0:「虞一公(ぐ・いっこう)」の娘であった「虞姫」はとても聡明で貞淑な女性でした
虞:「母曰く、私は貴人となる定めゆえ、誰とも契りを結ばず、あなたをお待ちしておりました」
0:二人は婚姻を結び、晴れて夫婦となったのでした
0:この頃の「項羽」は楚秦戦争時にいざこざがあった、「劉邦(りゅうほう)」という男と戦をしていました
0:項羽は己が武を以て、劉邦率いる漢軍に勝ち続けました
0:しかし、項羽の人柄をよく思わない人々は、次々と項羽から離れていきました
虞:「虞姫は、いついつまでも、大王と共にあります」
0:戦に勝っても、策に負け続ける項羽の心は、疲弊しきっていました
0:そんな項羽を傍で励まし続けたのです
0:そしてついに、項羽率いる楚軍は、窮地に追い詰められたのです
0:垓下(がいか)にて楚軍は漢軍に包囲されていました
項:「むむむ、この歌は」
0:なんと、4方から、祖国の楚歌が聞こえてきたのです
項:「・・・もはや、わが祖国も漢軍に頭を垂れたか」
0:これは、漢軍軍師・張良(ちょうりょう)の策で、漢軍全体に楚歌を覚えさせ、歌うことで楚軍の士気を削ぐというものでした
0:「四面楚歌」の故事成語のもとになった出来事です
0:この策により、項羽はすっかり意気消沈してしまいました
項:「虞姫を死なすくらいなら、劉邦に引き渡して生きていてもらいたい」
0:項羽は虞姫を死なせたくなかったので、劉邦にのもとに落ち延びるよう提案しました
0:憎き相手のもとで生きていてもらいたいと願うほど、それほどまでに愛していたのです
虞:「劉邦のもとに行くくらいなら、私はここで死にます」
0:虞姫はあえて項羽の傍にいることを選択しました
0:虞姫もまた、死しても一緒に有りたいと願うほどに、項羽のことを愛していたのです
0:その言葉を聞いた項羽は、虞姫の「覚悟」と「愛」の深さにいたく感動し、己の選択を恥じました
0:そして、彼はこう、詠んだのです
項:「力は山を抜き気は世を蓋う(おおう)」
項:「時利あらずして騅(すい)逝かず」
項:「騅の逝かざる如何(いか)すべき」
項:「虞よ虞よ汝を如何せん」
0:「私の力は山を抜くほど強く、気は世を覆うほどだ」
0:「しかし今は戦に負けようとしている。それを知ってか騅も前に行ってはくれない」
0:「騅が逝かぬのでは、私はどうすればよいのだ」
0:「虞よ、虞よ!私はあなたをどうすればよいのだ!」
0:「騅」とは項羽の駆る駿馬のことで、勇猛果敢で知られていました
0:そんな「騅」が前に進まない、どうしようと「騅」と自分の心境を交えた詩を、詠んだのです
0:それに対し、虞姫は
虞:「漢兵、已(すで)に地を略し、四方は楚の歌聲(うたごえ)」
虞:「大王の意気は盡(つ)き、賤妾(せんしょう)、いずくんぞ生をやすんぜん」
0:「漢兵は已に楚を攻略し、四方より楚歌の歌声が聞こえてまいります」
0:「大王の意気は尽いて、死のうとなさっています。私は、大王のいない世でどうやって生きていけばよいのですか!」
0:「あなたのいない世界なんて私は生きていたくない」と返歌しました
0:そして、項羽が漢軍に向けて突撃した後、「足手まといにならず」と、弟とともに自害したのでした
0:そして、彼女らを弔う墓には、真っ赤なヒナゲシ(ポピー)の花が咲いたのでした
0:人々はその花をこう呼ぶのです
0:そう、「グビジンソウ」・・・と