台本概要

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タイトル [1:1:0]グビジンソウ
作者名 夜霧ミスト@夜霧姫  (@Yogirimist)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 10 分
台本使用規定 商用、非商用問わず作者へ連絡要
説明 項羽と項羽の妻、「虞姫」のお話

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
33 西楚の覇王 劉邦と覇を競った
35 虞姫 日本だと「虞美人」って呼ばれることが多い
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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虞:(N)時は今より2000年前、所謂「紀元前」と呼ばれる時代 虞:(N)祖国のために駆け抜けた一人の「漢(おとこ)」がおりました 虞:(N)武を振るえば瞬く間に敵を蹴散らし、土地を平らげ、敵味方からも「覇王」と恐れられたその男の名は「項籍」 虞:(N)いえ、こう言ったほうが馴染みが深いでしょう・・・ 虞:(N)「項羽」 虞:(N)しかしそんな「覇王」と呼ばれた漢は「劉邦」と言う名の男に追い詰められ、風前の灯 虞:(N)そんな彼のもとには美しき姫がおりました 虞:(N)このお話はそんな二人の悲恋のお話 項:ここまでくれば、なんとかなるだろう 虞:・・・ 項:みな、我を裏切ってしまった 虞:・・・ 項:くそっ、なぜ我ではなく、劉邦のもとに行ってしまうのだ! 虞:将軍・・・ 項:我は・・・我は楚がため身を扮してやってきたのだ!なぜそれがわからぬ! 虞:将軍・・・ 項:済まぬ、虞よ・・・そなたには・・・苦労をかける 虞:いえ・・・私は・・・好きであなたのそばにおりますゆえ・・・ 項:しかし、楚にさえ帰還すれば・・・ 虞:わたくしは、いついかなる時もあなたから離れませぬ・・・ 項:・・・ 虞:それが、わたくしの・・・「妻」たる役目なれば・・・ 項:・・・我は少し、疑問に思うておった 虞:はい 項:我はそなたを見初めて妻にした・・・ 虞:そうでございましたね 項:・・・ではそなたは、なにゆえ我の想いに応えられた?我のどこに惹かれたのだ? 虞:・・・わたくしは・・・あなたの「強さ」に惚れました 項:強さ? 虞:はい・・・それは崖に咲く一輪の花のよう 項:花・・・か・・・そなたらしい例えよな 虞:はい 項:・・・ 虞:しかし、崖に力強く咲く花は誰からも見つけてもらえず・・・誰からも理解されず・・・ただひっそりと朽ちていくが定め 項:・・・ 虞:わたくしは、そのような力強さと儚さをあなたに見ました 項:・・・ 虞:そして、わたくしだけはあなたを最後まで理解できる・・・「発見者」になりたかったのです 項:発見者・・・ 虞:美しい花とは誰かに見られてこそ輝くのです・・・静かに朽ちていく花・・・それもまた儚いでしょう・・・しかし、それでは・・・ 項:・・・なるほど、そなたの想い、たしかに理解はした 項:・・・誰にも認められずひっそりと朽ちていく花・・・か 項:ふふふ、まるで今の状況を予言しているかのような言葉だな 虞:常人には理解の及ばぬ所業でも、わたくしだけは・・・理解してあげたい 虞:それが、将軍とともにある理由でございます 項:・・・ふふ、我はずっと死は怖くない物と思っておった 項:しかし、何故であろうか 項:そなたの本心を聞いた途端、心の奥から「死にたくない」「生きてそなたと添い遂げたい」と思うてしまったわ 虞:・・・それはわたくしも同じでございます 項:・・・すべてが遅すぎたのだな 項:ふ、しかしここで尻込みはできぬ!劉邦との戦、ちゃんと落とし前をつけねばな・・・! 虞:(N)そう言うと、項将軍は垓下に急行しました 虞:(N)しかし、待っていたのは残酷な結末だったのです 項:・・・垓下が包囲された・・・だと 虞:そのようでございます・・・ 項:・・・この歌 虞:楚歌、でございますか 項:・・・ははは 虞:・・・ 項:あっはっは! 虞:・・・将軍 項:これが笑わずにいられようか! 項:我は楚国がため!民のために!ここまでやってきた!それは楚の民なら理解していようと思うておった!いや、思っていたかったのだ! 項:しかし、見よ!このザマを!楚がためにと思うておったのは我一人! 項:あとはみんな!我が愛する民すらも!我を裏切り劉邦についてしまった!これが笑わずにいられようか! 虞:・・・ 項:虞よ、そなたも笑うがいい・・・この哀れな男をな! 虞:・・・決して 項:ははは・・・ 虞:決して笑いはしませぬ 項:・・・ 虞:先程も申したはずではありませぬか 虞:わたくしは、あなたの良き理解者でありたいと! 虞:最後まで、ついて行くと! 項:・・・済まぬ、見苦しいところを見せてしもうたな 虞:・・・将軍、わたくしはどんな形になろうと将軍を死ぬまで・・・いや、死んでからも愛しております 項:・・・我もだ、虞姫・・・我も、そなたを愛しておる 虞:・・・ 項:・・・逝くか 虞:・・・ 項:最後に一つ、聞いてはくれぬか 虞:はい、なんでしょう 項:覇王の、弱いところじゃ 虞:・・・ 項:力は山を抜き 気は世を葢(おお)う 項:時利あらずして 騅逝かず 項:騅の逝かざる 如何すべき 項:虞よ虞よ 汝を如何せん 項:・・・さらば 虞:・・・ 虞:漢兵、すでに地を略し 虞:四方は楚の歌聲(ごえ) 虞:大王の意気は盡(つ)き 虞:賤妾(せんしょう)、いずくんぞ生をやすんぜん 虞:・・・おさらばでございます 虞:(N)虞姫は足手まといにならぬと自害したという 虞:(N)そして彼女を弔う墓にはひなげしの花が 虞:(N)真っ赤に染まったその花は「虞美人草」と呼ばれた

虞:(N)時は今より2000年前、所謂「紀元前」と呼ばれる時代 虞:(N)祖国のために駆け抜けた一人の「漢(おとこ)」がおりました 虞:(N)武を振るえば瞬く間に敵を蹴散らし、土地を平らげ、敵味方からも「覇王」と恐れられたその男の名は「項籍」 虞:(N)いえ、こう言ったほうが馴染みが深いでしょう・・・ 虞:(N)「項羽」 虞:(N)しかしそんな「覇王」と呼ばれた漢は「劉邦」と言う名の男に追い詰められ、風前の灯 虞:(N)そんな彼のもとには美しき姫がおりました 虞:(N)このお話はそんな二人の悲恋のお話 項:ここまでくれば、なんとかなるだろう 虞:・・・ 項:みな、我を裏切ってしまった 虞:・・・ 項:くそっ、なぜ我ではなく、劉邦のもとに行ってしまうのだ! 虞:将軍・・・ 項:我は・・・我は楚がため身を扮してやってきたのだ!なぜそれがわからぬ! 虞:将軍・・・ 項:済まぬ、虞よ・・・そなたには・・・苦労をかける 虞:いえ・・・私は・・・好きであなたのそばにおりますゆえ・・・ 項:しかし、楚にさえ帰還すれば・・・ 虞:わたくしは、いついかなる時もあなたから離れませぬ・・・ 項:・・・ 虞:それが、わたくしの・・・「妻」たる役目なれば・・・ 項:・・・我は少し、疑問に思うておった 虞:はい 項:我はそなたを見初めて妻にした・・・ 虞:そうでございましたね 項:・・・ではそなたは、なにゆえ我の想いに応えられた?我のどこに惹かれたのだ? 虞:・・・わたくしは・・・あなたの「強さ」に惚れました 項:強さ? 虞:はい・・・それは崖に咲く一輪の花のよう 項:花・・・か・・・そなたらしい例えよな 虞:はい 項:・・・ 虞:しかし、崖に力強く咲く花は誰からも見つけてもらえず・・・誰からも理解されず・・・ただひっそりと朽ちていくが定め 項:・・・ 虞:わたくしは、そのような力強さと儚さをあなたに見ました 項:・・・ 虞:そして、わたくしだけはあなたを最後まで理解できる・・・「発見者」になりたかったのです 項:発見者・・・ 虞:美しい花とは誰かに見られてこそ輝くのです・・・静かに朽ちていく花・・・それもまた儚いでしょう・・・しかし、それでは・・・ 項:・・・なるほど、そなたの想い、たしかに理解はした 項:・・・誰にも認められずひっそりと朽ちていく花・・・か 項:ふふふ、まるで今の状況を予言しているかのような言葉だな 虞:常人には理解の及ばぬ所業でも、わたくしだけは・・・理解してあげたい 虞:それが、将軍とともにある理由でございます 項:・・・ふふ、我はずっと死は怖くない物と思っておった 項:しかし、何故であろうか 項:そなたの本心を聞いた途端、心の奥から「死にたくない」「生きてそなたと添い遂げたい」と思うてしまったわ 虞:・・・それはわたくしも同じでございます 項:・・・すべてが遅すぎたのだな 項:ふ、しかしここで尻込みはできぬ!劉邦との戦、ちゃんと落とし前をつけねばな・・・! 虞:(N)そう言うと、項将軍は垓下に急行しました 虞:(N)しかし、待っていたのは残酷な結末だったのです 項:・・・垓下が包囲された・・・だと 虞:そのようでございます・・・ 項:・・・この歌 虞:楚歌、でございますか 項:・・・ははは 虞:・・・ 項:あっはっは! 虞:・・・将軍 項:これが笑わずにいられようか! 項:我は楚国がため!民のために!ここまでやってきた!それは楚の民なら理解していようと思うておった!いや、思っていたかったのだ! 項:しかし、見よ!このザマを!楚がためにと思うておったのは我一人! 項:あとはみんな!我が愛する民すらも!我を裏切り劉邦についてしまった!これが笑わずにいられようか! 虞:・・・ 項:虞よ、そなたも笑うがいい・・・この哀れな男をな! 虞:・・・決して 項:ははは・・・ 虞:決して笑いはしませぬ 項:・・・ 虞:先程も申したはずではありませぬか 虞:わたくしは、あなたの良き理解者でありたいと! 虞:最後まで、ついて行くと! 項:・・・済まぬ、見苦しいところを見せてしもうたな 虞:・・・将軍、わたくしはどんな形になろうと将軍を死ぬまで・・・いや、死んでからも愛しております 項:・・・我もだ、虞姫・・・我も、そなたを愛しておる 虞:・・・ 項:・・・逝くか 虞:・・・ 項:最後に一つ、聞いてはくれぬか 虞:はい、なんでしょう 項:覇王の、弱いところじゃ 虞:・・・ 項:力は山を抜き 気は世を葢(おお)う 項:時利あらずして 騅逝かず 項:騅の逝かざる 如何すべき 項:虞よ虞よ 汝を如何せん 項:・・・さらば 虞:・・・ 虞:漢兵、すでに地を略し 虞:四方は楚の歌聲(ごえ) 虞:大王の意気は盡(つ)き 虞:賤妾(せんしょう)、いずくんぞ生をやすんぜん 虞:・・・おさらばでございます 虞:(N)虞姫は足手まといにならぬと自害したという 虞:(N)そして彼女を弔う墓にはひなげしの花が 虞:(N)真っ赤に染まったその花は「虞美人草」と呼ばれた