台本概要
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タイトル | 捜索落語「月と師匠」 |
---|---|
作者名 | 読川詩朗 |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 1人用台本(不問1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
昔作った落語です
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
優楽 | 不問 | 57 | 声当亭優楽(こえあてい ゆうらく)ですよ |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:出囃子が鳴り高座に座る優楽
優楽:えーどうも声当亭優楽と申します。
0:深々と頭を下げる
優楽:いきなり本題に入る前に軽く世間話でもさせていただきたいと思います
0:羽織りを一枚脱ぐ優楽
優楽:昨今巷では様々な言葉が生まれ廃れを繰り返していますね?私も時代の流れを追いかけるのがやっとでございます
0:客席から乾いた笑い
優楽:そのなかでも変わらない物は沢山ありますよね、今回のお話のカギにもなりますがこの私が思うのは愛だと思います
優楽:愛というのはいつの時代も変わらず減ることはなく増え続けていく、そう思いませんか皆様
0:客席を見渡す優楽、数名の客がうなずく。
優楽:共感も得た様なので枕はこれくらいにして本日の噺は私が作り上げた現代落語と言うものを一席。それではお聞きください「月と師匠」
0:深々と頭を下げ、拍手をされる優楽
優楽:私の師匠はとてもいいお方でした。今も頭が上がらず天に昇っているから追いつこうとも追いつけないそんな師匠だったのですが一ついやな部分がございまして、それは師匠が非常に意地悪な性格だったという事です。師匠がとある酒の席で私にこう話してくれたんです
0:体を左に傾け扇子を取り出し熱燗を入れる仕草をする優楽
優楽:師匠!本日も素敵な噺を勉強させていただきました!いやぁ本当に師匠の噺は情景がこう、ぱぁっと頭に浮かび上がるもんで早く師匠に追いつきたいものです!
0:体を右に傾け扇子で頭を軽くたたく優楽
優楽:ド阿呆かお前は!ワシに追いつく事は無理じゃ!考えたらわかるやろ!そしてお前が語る噺には愛が感じられへんねん!
0:体を左に傾ける優楽
優楽:いたた!藪から棒に失礼ですね師匠!これでも毎日師匠から見て盗んだ技術と教えてもらったやり方の賜物ですよ?
0:体を右に傾ける優楽
優楽:ワシから技術を盗んだのであればお前は上っ面だけしか見てないことになるな!ええか優楽、噺言うのはな?愛と表現と伝え方で変わるんや
0:体を左に傾ける優楽
優楽:表現と伝え方はわかりますが師匠、愛いうのはそんな重要なものなんですか?
0:体を右に傾ける優楽
優楽:当たり前や!サッカー選手も野球選手もプロと呼ばれる人らはプロになるまで絶え間ない愛を注いでいるからそれが生業になるんや、この落語も一緒でな!
0:体を左に傾ける優楽
優楽:確かに!いわれてみればそうですね、しかし師匠の口から愛なんて言葉出ると思ってませんでした!奥さんから逃げられても落語出番にちゃんと出はる師匠なのに
0:体を右に傾け扇子で頭を軽くたたく優楽
優楽:ど阿呆!二度とその話はするな!愛ってのは人それぞれ注ぎ方が違うもんなんや、嫁に対する愛より噺に対する愛の方が強かった。それだけや
0:体を左に傾けお猪口でお酒を飲むていをする優楽
優楽:そんなもんなんですねぇ、はぁー、ズルル、っはぁ!ほなついでにもう一つ聞きたい事があるんですが先日師匠を訪ねてきた男性、あの方は誰だったんですか?
0:体を右に傾ける優楽
優楽:あーあいつか。あいつはワシの旧友や。ちと頼み事されてな、あいつもいわば偏見な愛を持つ男でな。近々民間業者が作ったロケットが月面に行く話があったのは覚えてるか?
0:体を左に傾ける優楽
優楽:あーありましたね、ってえぇ!じゃああのスーツの男性ってもしかして!
0:体を右に傾ける優楽
優楽:そういうことや、んでちょっと頼まれごとがあっての?それがな?今ある落語ではなくワシが造る新しい落語を載せて月へとばしたい言うんや
0:体を左に傾ける優楽
優楽:はぁー・・・そらまた偉いたいそうなお話で。ほんで師匠はその話を作り上げたんですか?
0:体を右に傾ける優楽
優楽:まぁな。でも落語言うのは語り継がれて後世に残していくもんや、せやから月に飛ばす新しい落語は後世に残らへんから傑作を造るより駄作を造ろうかなと思っとるんや
0:体を左に傾ける優楽
優楽:師匠!噺に対する愛があったんちゃうんですか!誰が聞いてなくても駄作なんて作ったら師匠の名が廃れますよ!
0:体を右に傾ける優楽
優楽:・・・はぁーこらたまげた!弟子のお前に説得される日が来るとはな!まぁ言うても後の祭りや。もう作ってしもうたさかいな!がっはっは!
0:体を左に傾ける優楽
優楽:えぇー!まぁ過ぎたことを言うのは良くないですし、ほなその噺がどんな内容なのか教えてもらってもいいでしょうか?
0:腕を組む優楽
優楽:教えるのは全然ええんやけど、まだ満席にも満たない弟子に教えるのはなぁ・・・あ、せや!ほなこうしようやないか!
0:体を前のめりにする優楽
優楽:お前がワシの教えを一生懸命に覚えて守って頑張ったとワシが感じたら枕の部分から少しずつ教えていってやるわ!がっはっは!
0:体をのけぞる優楽
優楽:えぇー!そらひどいですわ師匠!
0:扇子で頭を軽くたたく優楽
優楽:何がやねん!お前の頑張りでワシの誰も聞いたことない噺が聞けるんやぞ?
0:腕を組む優楽
優楽:えーそんな話で始まった私と師匠の噺をかけた攻防戦は長い間続きました。師匠の評価がえらい高い壁でして数年師匠の前で頑張ってやらせてもらいましたが10回に1回くらいしか評価を得なくて遅々として話が進まなかったんですよ。そんな攻防が続いたある日一本の電話が鳴ったんですわ
0:扇子を耳に当てる優楽
優楽:もしもし?中央病院?はい、えぇその名前は師匠の本名ですね、どうされたんですか?え!師匠が入院!?わかりましたすぐ向かいます!!
優楽:慌てて病院に私は向かいました。それはそれは新幹線よりも早く、ほんで病室についたとき窓をぼーっと眺めてる師匠がおったんですよ
0:切羽詰まった顔して前のめりになる優楽
優楽:師匠!はぁ、はぁ、大丈夫ですか!お体は!どこもケガされてないですか師匠!
0:乱れた着物を正してスッと座りなおし深呼吸する優楽
優楽:やかましわ!優楽!ワシはなんもあらへん!病院や!他のお客さんにも迷惑やろ!!
0:怒鳴り声にお客さんが少し気圧される
優楽:んんっ、優楽、先生から電話あったときちゃんと内容聞いたか?
0:ぽかんとする優楽
優楽:あ、えっと、確か師匠の頭がどうのこうので入院したんだと聞いて慌てて血相変えてこうやってきたんです
0:あきれ顔をする優楽
優楽:はぁー、お前は人の話を最後まで聞かないな昔から。その性格は治せよ?ちょっとな出先で頭を打ってしまってな?全然命に別状はないんや。安心せぇ
0:安堵の表情を浮かべる優楽
優楽:よかった、はぁーもう死んだんかと思って葬儀会社に連絡しようと思ってたんですよ
0:扇子で頭を軽くたたく優楽
優楽:勝手にワシを殺すな!ド阿呆!ちょっと入院するだけやさかいお前は変わらずちゃんと仕事はせぇよ?あと家から風呂敷に入ってる荷物をここへもってきてくれ
優楽:そう、あの時は人生で一番焦った日でしたよ本当に今でも思い出します、それで師匠の入院生活と私の見舞い生活が始まったわけで、そこでも毎日噺を一席話しては少しずつ教えてもらいました。そんな日が数日経つと病院の先生からこういわれたんです
0:着物をとんとんと整える優楽
優楽:優楽さん、あなたの師匠について少しお話があるんですがよろしいでしょうか?
0:唖然とした顔をする優楽
優楽:あ、はい何でしょうか?
0:深呼吸して話出す優楽
優楽:実は師匠さんから言うなと言われてますが、貴方の師匠ガンの末期です。もってあと数か月の余命なんです。お師匠さんは親族は居なくて奥さんも別れてから一度もお会いしてないこのことをお伝えできるのが貴方だけなんです。
0:開いた口がふさがらなくなる優楽
優楽:そ、そうですか。わかりました、ありがとうございます。この事は黙っておきますね。
0:ドアを開けるていをする優楽
優楽:師匠失礼します。今日も稽古の時間が来ました。それでは一席やらせていただきますね、あ、あれ?はは、いけねぇや涙が止まんねぇ
0:頭をなでるふりをする優楽
優楽:先生から聞いたんだな。お前は嘘をつくのが嫌いだもんな。ガキの頃から見てきたがその嘘がつけねぇ性格は治らねぇな。だが安心しなワシはきっと完治してお前がいっちょまえになるまでちゃんと見てやるからよ!ほれ!さっさと稽古の成果ワシに見せてみやがれ!
優楽:と師匠の闘病生活を間近で見せてもらった私でした。が願いかなわず最後の最後まで師匠は自作の落語を教えてくれませんでした。そして俺はぽっくり亡くなった師匠の葬式で考えました!あの民間事業の打ち上げ場に行けば話が聞けるんじゃァねぇか!と
0:時計を見るふりをする優楽
優楽:お、おい!今日は何月何日だ?
0:焦った話し方をする優楽
優楽:えっと今日は確か7月7日、七夕ですよ優楽さん!
0:青ざめた表情をする優楽
優楽:お、おい!今日って民間事業が打ち上げる日じゃあねぇか!こうしておられねぇ!俺ぁちょっくら出てくる!
0:腕を振り走ってるふりをする優楽
優楽:意地悪な性格ってのは知ってやしたが亡くなる日まで意地悪するこたぁねぇでしょう師匠!はぁはぁ!ここだ!ここの会社か!
0:ドンドンとドアをたたくふりをする優楽
優楽:すいやせん!すいやせん!師匠の一番弟子の声当亭優楽と申します!少し話がしたくて参りました!ここのお偉いさんと面会の場をお願いします!
0:首を左右に動かし怪しげな表情をする優楽
優楽:なんですかなんですか!ちょちょ!入り口で土下座はやめてください!取り合わせますから!
0:前に倒れるふりをする優楽
優楽:ありがとうございます!あ、ロケットって何時に発射するんですか!
0:腕時計をみるふりをする優楽
優楽:えっとあと30分くらいですね、見ていかれますか?
0:また走るふりをする優楽
優楽:こうしちゃいられねぇ!ロケットロケット!どこにあるんですか!
優楽:こうして色々と探し回っているうちに地響きがするわけですよ、ゴゴゴゴゴってね、そしたらロケットが空高く飛び上がっちまったわけですわ
0:上を見上げる優楽
優楽:遅かったか・・師匠の自作の落語聞きたかったな。
0:腕を組む優楽
優楽:聞けずじまいか、俺がここまで何かに一生懸命になったのって初めてだな。師匠もしかしてこれが師匠が言ってた愛ってやつなのかもですね・・・
0:間をおいてお客さんに聞きだす優楽
優楽:え?お客さん皆さん疑問に思ってますか?師匠が造った噺がどんなのか知りたいっていう疑問が。お客さん馬鹿いっちゃぁいけないですよ!
0:扇子をターンと叩く優楽
優楽:今となっちゃ師匠の噺を積んだロケットは月へ飛んじまったんですよ、つまり師匠の噺は未完のままなんです。この話もロケットもオチ(落ち)ないんですよ。おあとがよろしいようで。
0:深々と頭を下げ受け囃子がなり暗転する舞台
0:出囃子が鳴り高座に座る優楽
優楽:えーどうも声当亭優楽と申します。
0:深々と頭を下げる
優楽:いきなり本題に入る前に軽く世間話でもさせていただきたいと思います
0:羽織りを一枚脱ぐ優楽
優楽:昨今巷では様々な言葉が生まれ廃れを繰り返していますね?私も時代の流れを追いかけるのがやっとでございます
0:客席から乾いた笑い
優楽:そのなかでも変わらない物は沢山ありますよね、今回のお話のカギにもなりますがこの私が思うのは愛だと思います
優楽:愛というのはいつの時代も変わらず減ることはなく増え続けていく、そう思いませんか皆様
0:客席を見渡す優楽、数名の客がうなずく。
優楽:共感も得た様なので枕はこれくらいにして本日の噺は私が作り上げた現代落語と言うものを一席。それではお聞きください「月と師匠」
0:深々と頭を下げ、拍手をされる優楽
優楽:私の師匠はとてもいいお方でした。今も頭が上がらず天に昇っているから追いつこうとも追いつけないそんな師匠だったのですが一ついやな部分がございまして、それは師匠が非常に意地悪な性格だったという事です。師匠がとある酒の席で私にこう話してくれたんです
0:体を左に傾け扇子を取り出し熱燗を入れる仕草をする優楽
優楽:師匠!本日も素敵な噺を勉強させていただきました!いやぁ本当に師匠の噺は情景がこう、ぱぁっと頭に浮かび上がるもんで早く師匠に追いつきたいものです!
0:体を右に傾け扇子で頭を軽くたたく優楽
優楽:ド阿呆かお前は!ワシに追いつく事は無理じゃ!考えたらわかるやろ!そしてお前が語る噺には愛が感じられへんねん!
0:体を左に傾ける優楽
優楽:いたた!藪から棒に失礼ですね師匠!これでも毎日師匠から見て盗んだ技術と教えてもらったやり方の賜物ですよ?
0:体を右に傾ける優楽
優楽:ワシから技術を盗んだのであればお前は上っ面だけしか見てないことになるな!ええか優楽、噺言うのはな?愛と表現と伝え方で変わるんや
0:体を左に傾ける優楽
優楽:表現と伝え方はわかりますが師匠、愛いうのはそんな重要なものなんですか?
0:体を右に傾ける優楽
優楽:当たり前や!サッカー選手も野球選手もプロと呼ばれる人らはプロになるまで絶え間ない愛を注いでいるからそれが生業になるんや、この落語も一緒でな!
0:体を左に傾ける優楽
優楽:確かに!いわれてみればそうですね、しかし師匠の口から愛なんて言葉出ると思ってませんでした!奥さんから逃げられても落語出番にちゃんと出はる師匠なのに
0:体を右に傾け扇子で頭を軽くたたく優楽
優楽:ど阿呆!二度とその話はするな!愛ってのは人それぞれ注ぎ方が違うもんなんや、嫁に対する愛より噺に対する愛の方が強かった。それだけや
0:体を左に傾けお猪口でお酒を飲むていをする優楽
優楽:そんなもんなんですねぇ、はぁー、ズルル、っはぁ!ほなついでにもう一つ聞きたい事があるんですが先日師匠を訪ねてきた男性、あの方は誰だったんですか?
0:体を右に傾ける優楽
優楽:あーあいつか。あいつはワシの旧友や。ちと頼み事されてな、あいつもいわば偏見な愛を持つ男でな。近々民間業者が作ったロケットが月面に行く話があったのは覚えてるか?
0:体を左に傾ける優楽
優楽:あーありましたね、ってえぇ!じゃああのスーツの男性ってもしかして!
0:体を右に傾ける優楽
優楽:そういうことや、んでちょっと頼まれごとがあっての?それがな?今ある落語ではなくワシが造る新しい落語を載せて月へとばしたい言うんや
0:体を左に傾ける優楽
優楽:はぁー・・・そらまた偉いたいそうなお話で。ほんで師匠はその話を作り上げたんですか?
0:体を右に傾ける優楽
優楽:まぁな。でも落語言うのは語り継がれて後世に残していくもんや、せやから月に飛ばす新しい落語は後世に残らへんから傑作を造るより駄作を造ろうかなと思っとるんや
0:体を左に傾ける優楽
優楽:師匠!噺に対する愛があったんちゃうんですか!誰が聞いてなくても駄作なんて作ったら師匠の名が廃れますよ!
0:体を右に傾ける優楽
優楽:・・・はぁーこらたまげた!弟子のお前に説得される日が来るとはな!まぁ言うても後の祭りや。もう作ってしもうたさかいな!がっはっは!
0:体を左に傾ける優楽
優楽:えぇー!まぁ過ぎたことを言うのは良くないですし、ほなその噺がどんな内容なのか教えてもらってもいいでしょうか?
0:腕を組む優楽
優楽:教えるのは全然ええんやけど、まだ満席にも満たない弟子に教えるのはなぁ・・・あ、せや!ほなこうしようやないか!
0:体を前のめりにする優楽
優楽:お前がワシの教えを一生懸命に覚えて守って頑張ったとワシが感じたら枕の部分から少しずつ教えていってやるわ!がっはっは!
0:体をのけぞる優楽
優楽:えぇー!そらひどいですわ師匠!
0:扇子で頭を軽くたたく優楽
優楽:何がやねん!お前の頑張りでワシの誰も聞いたことない噺が聞けるんやぞ?
0:腕を組む優楽
優楽:えーそんな話で始まった私と師匠の噺をかけた攻防戦は長い間続きました。師匠の評価がえらい高い壁でして数年師匠の前で頑張ってやらせてもらいましたが10回に1回くらいしか評価を得なくて遅々として話が進まなかったんですよ。そんな攻防が続いたある日一本の電話が鳴ったんですわ
0:扇子を耳に当てる優楽
優楽:もしもし?中央病院?はい、えぇその名前は師匠の本名ですね、どうされたんですか?え!師匠が入院!?わかりましたすぐ向かいます!!
優楽:慌てて病院に私は向かいました。それはそれは新幹線よりも早く、ほんで病室についたとき窓をぼーっと眺めてる師匠がおったんですよ
0:切羽詰まった顔して前のめりになる優楽
優楽:師匠!はぁ、はぁ、大丈夫ですか!お体は!どこもケガされてないですか師匠!
0:乱れた着物を正してスッと座りなおし深呼吸する優楽
優楽:やかましわ!優楽!ワシはなんもあらへん!病院や!他のお客さんにも迷惑やろ!!
0:怒鳴り声にお客さんが少し気圧される
優楽:んんっ、優楽、先生から電話あったときちゃんと内容聞いたか?
0:ぽかんとする優楽
優楽:あ、えっと、確か師匠の頭がどうのこうので入院したんだと聞いて慌てて血相変えてこうやってきたんです
0:あきれ顔をする優楽
優楽:はぁー、お前は人の話を最後まで聞かないな昔から。その性格は治せよ?ちょっとな出先で頭を打ってしまってな?全然命に別状はないんや。安心せぇ
0:安堵の表情を浮かべる優楽
優楽:よかった、はぁーもう死んだんかと思って葬儀会社に連絡しようと思ってたんですよ
0:扇子で頭を軽くたたく優楽
優楽:勝手にワシを殺すな!ド阿呆!ちょっと入院するだけやさかいお前は変わらずちゃんと仕事はせぇよ?あと家から風呂敷に入ってる荷物をここへもってきてくれ
優楽:そう、あの時は人生で一番焦った日でしたよ本当に今でも思い出します、それで師匠の入院生活と私の見舞い生活が始まったわけで、そこでも毎日噺を一席話しては少しずつ教えてもらいました。そんな日が数日経つと病院の先生からこういわれたんです
0:着物をとんとんと整える優楽
優楽:優楽さん、あなたの師匠について少しお話があるんですがよろしいでしょうか?
0:唖然とした顔をする優楽
優楽:あ、はい何でしょうか?
0:深呼吸して話出す優楽
優楽:実は師匠さんから言うなと言われてますが、貴方の師匠ガンの末期です。もってあと数か月の余命なんです。お師匠さんは親族は居なくて奥さんも別れてから一度もお会いしてないこのことをお伝えできるのが貴方だけなんです。
0:開いた口がふさがらなくなる優楽
優楽:そ、そうですか。わかりました、ありがとうございます。この事は黙っておきますね。
0:ドアを開けるていをする優楽
優楽:師匠失礼します。今日も稽古の時間が来ました。それでは一席やらせていただきますね、あ、あれ?はは、いけねぇや涙が止まんねぇ
0:頭をなでるふりをする優楽
優楽:先生から聞いたんだな。お前は嘘をつくのが嫌いだもんな。ガキの頃から見てきたがその嘘がつけねぇ性格は治らねぇな。だが安心しなワシはきっと完治してお前がいっちょまえになるまでちゃんと見てやるからよ!ほれ!さっさと稽古の成果ワシに見せてみやがれ!
優楽:と師匠の闘病生活を間近で見せてもらった私でした。が願いかなわず最後の最後まで師匠は自作の落語を教えてくれませんでした。そして俺はぽっくり亡くなった師匠の葬式で考えました!あの民間事業の打ち上げ場に行けば話が聞けるんじゃァねぇか!と
0:時計を見るふりをする優楽
優楽:お、おい!今日は何月何日だ?
0:焦った話し方をする優楽
優楽:えっと今日は確か7月7日、七夕ですよ優楽さん!
0:青ざめた表情をする優楽
優楽:お、おい!今日って民間事業が打ち上げる日じゃあねぇか!こうしておられねぇ!俺ぁちょっくら出てくる!
0:腕を振り走ってるふりをする優楽
優楽:意地悪な性格ってのは知ってやしたが亡くなる日まで意地悪するこたぁねぇでしょう師匠!はぁはぁ!ここだ!ここの会社か!
0:ドンドンとドアをたたくふりをする優楽
優楽:すいやせん!すいやせん!師匠の一番弟子の声当亭優楽と申します!少し話がしたくて参りました!ここのお偉いさんと面会の場をお願いします!
0:首を左右に動かし怪しげな表情をする優楽
優楽:なんですかなんですか!ちょちょ!入り口で土下座はやめてください!取り合わせますから!
0:前に倒れるふりをする優楽
優楽:ありがとうございます!あ、ロケットって何時に発射するんですか!
0:腕時計をみるふりをする優楽
優楽:えっとあと30分くらいですね、見ていかれますか?
0:また走るふりをする優楽
優楽:こうしちゃいられねぇ!ロケットロケット!どこにあるんですか!
優楽:こうして色々と探し回っているうちに地響きがするわけですよ、ゴゴゴゴゴってね、そしたらロケットが空高く飛び上がっちまったわけですわ
0:上を見上げる優楽
優楽:遅かったか・・師匠の自作の落語聞きたかったな。
0:腕を組む優楽
優楽:聞けずじまいか、俺がここまで何かに一生懸命になったのって初めてだな。師匠もしかしてこれが師匠が言ってた愛ってやつなのかもですね・・・
0:間をおいてお客さんに聞きだす優楽
優楽:え?お客さん皆さん疑問に思ってますか?師匠が造った噺がどんなのか知りたいっていう疑問が。お客さん馬鹿いっちゃぁいけないですよ!
0:扇子をターンと叩く優楽
優楽:今となっちゃ師匠の噺を積んだロケットは月へ飛んじまったんですよ、つまり師匠の噺は未完のままなんです。この話もロケットもオチ(落ち)ないんですよ。おあとがよろしいようで。
0:深々と頭を下げ受け囃子がなり暗転する舞台